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宿坊あやかし奇憚  作者: あやと
61/106

宿坊あやかし奇憚#35

コンコンッ


「お取り込み中・・・失礼致します」


篁(たかむら)はノックをすると返事も待たずにドアを開けた



「篁。取り込み中と言っただろ?!」


慌てた青年・・・閻魔の膝の上には女が乗っている



「先程、言いましたが・・火急の用が出来ましたので」



気にする風もなく答える篁



「それならさっき俺も言ったよな?今日休みだって・・・


よーするに何をしていようが良いって事だ」



食い下がる閻魔



「えぇ。女性を膝の上に乗せてても構いませんが」



「俺は構うつーの!どんなプレイだ!?」



「黄泉の法律によれば、火急を要する事案が出来た場合


 対処の為、大王の休日は返上と書いてありますが・・・


 返上しますか?」



そう言うと篁は意地の悪い笑みを浮かべている



「わぁったよ!!・・・で?何だ?」



「これは、どういう事でしょう?」


篁はタブレット端末で未来のページを見せる



「あぁ!それは・・・・・いや。知らない」


言いかけシマッタという顔をした閻魔を篁は見逃さなかった




「 閻魔大王様が知らないとなるとシステムエラーですかね?


この者への対策を考えなければなりません、九王を召集して下さい。」



静かな声で言うと閻魔の顔が引きつる



「休日返上ですね」



止めを刺す様に篁は言った





―― ったく!敵わねぇ・・


それもそうか・・篁は先代の閻魔から使えてるからなぁ・・




現閻魔は2代目だ


最初に死んだ人間が閻魔に成ったと言われているが


それも永遠ではない。


公平な裁量が出来る者が現れたら引継ぎ引退できる


そうして選ばれ青年は閻魔に成った


篁は閻魔の教育係だ。故に篁に逆らえないのだが・・





見た目はまだ少年とも青年とも取れる面差しに


気の強そうな瞳と整えた眉にサラサラと漆黒の髪がかかる


閻魔は溜め息と共に立ち上がり篁を部屋の外へと引っ張り


後ろ手に戸を閉めると


「解った!話すから・・頼むッ!


休日返上だけは勘弁してくれ!・・やっと連れ込んだんだ!」


必死の形相の閻魔は篁に請う




「話、次第ですかね・・何があったんですか?」


あくまで冷静に篁は言った



「 上からの圧だよ・・この・・未来?


コイツの管理を終了しろって連絡が来たんだ」



「何処からですか?」


「それは・・・」





















あれから何時間たっただろうか・・半蔵は未来を離せないで居た


本来なら救急車を呼び病院で診てもらい


この場合、死亡宣告となるだろう。


だが半蔵はそうしなかった・・・ただ未来を抱き呆然と見つめている


全ての思考が停止した様だった



「あぁ。そのままでは体が腐ってしまう」


「何じゃ。まだ何もしとらんんか?」



聞きなれない男の声と共に爺の声がした気がしたが・・


半蔵はピクリとも動かない



「若造。聞こえてないのかのぉ~?」


「しょうのない。


 御爺様・・この者と未来ちゃんを引き離しても構いませんか?」



「わしゃ構わんが・・」



―― さぁて・・どうなるかの




篁が半蔵の手を取ると漸く気が付いたように目線を合わせた


「未来を・・どうするつもりだ?」


擦れた小声で聞く半蔵




「何も危害を加えるつもりはありません。


 未来ちゃんの体の時を止めるだけです。


 そうして置かないと腐り、魂が戻れなくなってしまいます。


 こちらに渡して頂けませんか?」


篁は理由は兎も角、なるべく丁寧に説明すると未来の体に手を伸ばす



「未来に触るな!!」


半蔵は声を荒げ未来を離すまいと掻き抱くと憎悪を込めた瞳で篁を睨んだ






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