宿坊あやかし奇憚#33
「お嬢?食べられますか?」
『う~ん・・・いら・・な・・い・・』
半蔵がここに来て15年目・・未来19歳の時
珍しく未来が風邪を引いた。
普段健康な分、患うと長引くのだが・・・今回はもう1週間も熱が下がらない
ここ2日間は何も食べていないに等しい状態だった
「やっぱり・・あの医者、藪なんですよ」
心配顔の半蔵が言い募る
『ん・・・』
熱による熱い吐息を吐きながら一応の返事をする未来
半蔵は未来の額に乗せたタオルを濡らし再び額に乗せる
―― もっと大きい病院に連れて行った方が良いか・・
そう思案していると額の冷たさが誘ったのか
未来の吐息が寝息へと変わる。変わらず辛そうではあるが・・
半蔵はお粥を乗せた盆を持つと部屋を出た。
『あれ・・?ここ・・何処だろ?』
気が付くと未来は不思議な所に居た・・
修学旅行で行った京都の寺院に似たような堂が連なり
雨戸が開いた部屋の一角には豪奢な御簾が立てられている
―― 誰も居ないのかな・・・
『 すみませ~ん!誰か居ませんか?』
未来は廊下に上がると御簾内に声をかける
『 誰か居ますか?』
「はい。何方かな?」
後ろから男の声がかかり振り向く未来
「あれ・・・君は・・」
「え?!未来!!どうしてこんな所に居るのよ?」
同時に言われて未来は混乱したが女性に気が付き
『 小町さん?』
問いかける
「何で疑問形なのよ?」
小町は整った眉を顰める
『いや。1回しか会った事ないし・・』
「こんな美人を疑問形とは失礼な・・」
「まぁまぁ。小町。・・・君が未来ちゃんだね?
その節は孫がお世話になったね」
男は小町を嗜めると未来に微笑み礼を述べる
『 孫って事は・・・もしかして・・・篁さん!?』
「えぇ。」
『え――?!沙羅に篁さんに会いたいって言っておいたんです!!
握手してもらって良いですか?』
「死神から話は窺ってます。」
興奮気味に手を出す未来に篁は笑顔で握手に応じると続ける
「それにしても、こちらから窺おうと思っていたんですが・・
また何故・・・まぁ。折角ですし、お茶でもいかがですか?」
『わ~ぃ♪頂きます!』
篁は小町に何やら耳打ちすると未来を自室へと連れて行った
「死神。未来が来てるわよ?」
小町は篁に言われた通り死神の所に使いに行くと口開一番に言う
「エイプリルフールには、あと半年ありますが・・」
死神は顔も上げずにパソコンに向かって何やら打っている
「信じなくても良いけど・・・。一応伝えたからね」
小町はそう言うとそのまま出て行ってしまった
沙羅は顔を上げると訝しげに小町が出て行った戸を見つめ
パソコンで未来の管理ページを開く
画面一杯に管理終了の文字が映し出されていた
「そんな筈は・・・」
赤い画面の前に沙羅の呟きが虚しく響いた




