宿坊あやかし奇憚#30
「死神。久しぶりじゃないか?」
「えぇ。100年ぶり位ですかね?」
「で?今日は何?」
「大体の見当はついてると思うんですけどね・・」
「彼女を自慢しに来たとか?」
「そんなに砕けた仲ではないと思いますが?」
「だよな?」
「あぁ・・未来。こちらは狗神です」
死神はキョロキョロと言葉のラリーを追っている未来に紹介した
『こんにちは♪未来です』
未来はペコリと頭を下げる
『狗神って・・・神様なの?』
頭を上げ死神に聞くと
「いいえ」という死神の声と「そうだ」という狗神の声が被った
―― どっちだろう?・・・自称神様?
あれ・・付け耳じゃないよね?お耳がピクピクしてるし・・
わ~!!尻尾、モフモフだ~♪大きい犬みたい!
撫でさせてって言ったら怒るかな?
犬型の耳と尻尾が付いている少年を見つめ未来が考えていると
狗神が面白い物でも見るようにじっと見てきた
「ん?こいつ人間か?」
「えぇ。」
「へぇ~。面白いな・・・それに良い香りだ。」
鼻を近づけ様とする狗神から死神が未来を隠す様に抱く
「やっぱ。見せつけに来たのかよ?」
その行動にムッとしながら聞く狗神に
「貴方に見せ付けるくらいなら、2人で愛でも語らった方がマシです」
サラリと返す死神
「ホントお前、何しに来たんだよ?」
「呪の成就を遅らせて頂こうと思いましてね」
『え?!呪い?』
狗神を作るには白い犬を土に埋め、顔だけを出し3日放置する
4日目に餌を犬が食べようとしても届かない場所に餌を置き興奮させる
それを3日続け、最後の7日目に精神が崩壊した犬の首を刎ねる
そうする事により使役される狗神となるのが一般的だが・・・
この狗神は贄としての同族の命で召喚される
勿論、他の狗神同様に主人の力が衰えれば何時でもその寝首を欠くが・・
「主の呪いは成就させる。そのあとは主を殺れば終わるんだ」
「それは知っています」
主人の願いが成就し、その念が薄れると狗神は同族を殺された復讐をする
『運転手さんと、その人・・殺されちゃうの?』
不安げに未来が聞くと
「そうそう」
狗神は嬉しげに笑うと尻尾を振り話を続ける
「主は別れた女の新しい男を殺す為に俺を使役したんだ
散々着け回して追い詰めた挙句にだ。・・・酷いだろ?」
十分、死に値するだろう?と狗神は言うが、未来は納得行かない顔をしている
「それは良いんですけどね・・未来が降りてからにして下さい」
「早く片付けたいんだよ」
面倒そうに狗神が言うその時
『酷いよ・・・』
ポツリと未来が呟いた
「そうだよな?酷い話だろ?」
嬉しげに同意を求める狗神だったが、死神はスッと未来を離した
『酷いのはお前だつーの!!!』
ガツッという音と共に狗神が後ろへ吹っ飛ぶ
―― 見事なアッパーカットですね・・・
『成就させて酷い主人を殺す?!この人、何の罪も無いのに殺すの?!!
酷いのは主人を殺したいが為に、この人を殺すあんたでしょ!!』
狗神は頬を押さえ目を見張たまま動けないでいた




