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宿坊あやかし奇憚  作者: あやと
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宿坊あやかし奇憚#24

「お嬢。忘れ物ってどう言う事ですか?」


「は・・半蔵さん?!」


死神が消えたと思ったら半蔵が現れた


驚く美弥と爽耶だったが


『あ~笛って私のか♪』


未来は気にする風でもなく受け取ると袋から龍笛(りゅうてき)を取り出し


何を吹けば良いか賀茂の青龍と話している


その隙に美弥がこの出来事を半蔵に説明した


勿論、死神が未来にしたアレやコレは内緒だ。


「そうですか・・」


半蔵は半眼になりながらも言葉使いは丁寧だ







そうしていると未来と賀茂の青龍は舞台へと移動し


未来はペコリと頭を下げると曲を奏で始める


半蔵と美弥と爽耶は端で聞く事にした




―― 蘭陵王・・・


北斉(ほくせい)の蘭陵武王(らんりゅうおう)高長恭(こうちょうきょう)の逸話にちなんだ曲目だ


秀麗な名将であった蘭陵王が美貌を龍面に隠し戦に挑み大勝したため


その勇士を歌に歌ったのが曲の由来とされている。


美形だが勇猛果敢と言われた遮那王を思わせる曲だ




未来の奏でる音は金と銀を織り成し


広がる輝きは胡蝶の様にヒラヒラと舞うと賀茂の青龍を包み込む





「すごい・・」


美弥が思わず呟いた


賀茂の青龍は気持ちよさげに目を細め聞き入っている



―― 暫く吹いてない様だったが・・・腕は落ちていないか・・



半蔵も聞き慣れているとは言え、この狭間の空気をも絡めた


未来の演奏に聞き入った















『お粗末様でした』


未来は演奏を終えペコリとお辞儀をするとニッコリ笑う


賀茂の龍は嬉しそうに拍手をした



『これでまた・・待てそう?』


「・・・。」


『・・遮那王様は私じゃないって解ってたでしょ?』


「・・・はい。」


賀茂の龍は伏せ目がちに頷く



―― ・・やっぱり?




曲の相談をした時に未来は気が付いていた


遮那王であれば曲の相談などしなくても、すぐに吹いただろう・・




「遮那王様は京に帰ったらと仰ったのに・・待っても待っても来ない


人は生まれ変るのに・・もう何百年もお待ちしておりますのに・・


そこへ貴女方が通りかかり、つい・・・すみません。有り難う御座いました」


賀茂の龍は深々と頭を下げる




「待ってたって・・」


美弥が言いかけたのを半蔵が止めた




―― 清悦物語や義経記が本当の事で関連があるなら・・


義経は生まれ変らない・・


ただ・・それを龍に言った所でどうなる?


四神が崩れても京が京である限り賀茂の龍はここから離れられない。


永遠に待つ事と・・永久に失った事を知るのと・・どちらが辛いだろう・・





『じゃぁ私達を元に戻してくれる?』


未来が賀茂の青龍に言うと龍は舞台からスイッと身を躍らせる


水が引く様に、この世へと切り替わった




『賀茂の青龍ー!またね!!』


未来は舞台から身を乗り出すと大きく手を振る


今度は半蔵が抱き止める番だった




『半蔵。笛持ってきてくれてありがとうね』


笑顔で言う未来を下ろすと半蔵は未来を抱いたまま


「ダメだ・・眠い・・」


そう呟き未来の肩に頭を擡(もた)げる



『え?・・ちょっと半蔵!?大丈夫?・・・寝たら死ぬよ?』



「雪山じゃないんだから・・」


美弥がポソッと突っ込んだ




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