宿坊あやかし奇憚#23
「笛は・・・如何なされた?」
賀茂の青龍はそう言うと悲しげな顔をした
困り顔で死神を見る未来・・・
その時、死神の携帯が着信を知らせる為に震えた
「はい。えぇ・・・解りました」
電話を終えると少しの沈黙があり言い辛そうにきりだした
「未来。仕事が入ってしまいました」
『あぁそう。沙羅、頑張ってね~』
「ちょっと!それは無いでしょ!!」
あっさりと言う未来に死神が目を見張り
美弥が抗議の声を大にする
―― う~ん・・沙羅のこんな顔、初めて見たかも・・
ぼんやりと未来が考えていると
「仕事と未来どっちが大事なのよ!!」
美弥が言い募る
『仕事に決まってるよ~』
のんびりと答えたのは未来だった
「いや。そうではありませんが・・」
未来に自分より仕事と言われ焦る死神
仕事だと伝えようとした時、危惧したのは正にそこだった
『え~だって私は糧にはならないよ?
それに仕事と人を比べる事自体おかしいよ?糧と想いは別でしょ?』
「そうかもしれないけど・・今この状況で置いて行く?」
『それは、沙羅が私達は大丈夫だと思ってくれているからだよ』
未来は言い終わると同意を求める様に死神の顔を見る
―― ふっ・・幼い頃から只の少女では無いと思ってましたが・・
これ程とは・・
仕事とどっちが大切か?
死神にとっては聞き飽きる程、女に聞かれてきた愚問だった
未来の言うとおり比べるモノではない。
いつも躊躇なく仕事だと継げ別れてきた
しかし何故か今回ばかりは躊躇した・・・相手が未来だから・・だ。
それ程、好きなのか?死神は自問する
・・あぁ。さっきの未来の答えで尚更・・
死神はふっと笑うと電話を取り出し
「笛を・・持って来させますから」
と未来と青龍に言うと何所かにかけ
「私です。未来が笛を忘れたそうです。えぇ。すぐに届けて下さい」
用件だけ言うと切ってしまう。
『・・笛あるの?』
「えぇ。今に届くでしょう・・・では仕事に行きます」
『うん。頑張って!!』
死神は自分の言葉に安心顔の未来を抱き締めると頬にキスをした
『もう!今の無しッ!頑張らなくて良いからね!』
真っ赤な顔で頬を押さえる未来が怒鳴ると
「 笛代って事で・・」
ニッコリと笑い死神は消え美弥と爽耶が顔を見合わせた
宿坊にジリリリとけたたましく黒電話の呼び出し音が響いた
黒い重厚な電話機は最早、骨董と言っても良い程の物だが
爺は勿論、未来も気にはしていないらしい
半蔵は面倒そうに電話に出た
「もしもし・・」
「私です」
「あぁ?!何処の私だ?」
「未来が笛を忘れたそうです」
「はぁ?忘れ物?!」
「えぇ。すぐに届けて下さい」
「はぁ?!今、京都だろ!おい!死神!!」
チッと舌打ちすると受話器を置いた
―― 何であいつが未来と居るんだ?!
半蔵は別の不安で急ぐと未来の部屋から笛を一管持ち
「場所くらい言えよ!!」
1人ごちると京都の地図を広げ
白い半紙を人型に切ると未来と書き地図に置く
人型は京の地図をスススっと移動すると清水寺で佇む様に止る
半蔵はニヤリと笑うと短い詠唱を唱え消えた




