宿坊あやかし奇憚#21
『ここが清水の舞台かぁ・・・飛び降りたら痛いよね』
「飛び降りた人、居たらしいよ?」
『え~?』
未来は舞台の手擦りを掴むと身を乗り出す
しっかりと死神が押さえているから出来る技なのだが・・
「飛び降り禁止って政府から御触れが出たんだって」
『飛び降りてはいけませんって?』
「200件以上もあればね~」
『ふ~ん~。で?何処で牛若丸と弁慶が出会ったの?』
「境内って話だけど・・ここだと格好良いよね~」
『ここで刀1000本目を待つのは辛くない?』
「いや。お経合戦だったらしいよ~」
『お経?』
「うん。弁慶ったら意外な事にお経名人だったんだけど
立派な経本を持った牛若丸に因縁をつけて
一緒に読経して、みんな聞き惚れて、それで決着つかなくて抜刀。
絵的には舞台だと綺麗だと思うんだけどなぁ~」
美弥は言いながらシャッターを数枚切る
「さて・・戻ろうか?鉄下駄と錫杖の写真撮りたいし」
『うん。』
死神は未来を抱き下ろすと下を見て目を細めた
舞台から出た脇に目当ての物はある
未来が舞台から出るとフォンッ・・・という音と共に全体が歪んだ
「キャッ」
カメラを構えてた美弥が短い悲鳴を上げると爽耶が慌てて支える
未来は耳底につく音にちょっと顔を顰めただけで立っていた
―― やはり・・此処が彼の世へと切り替わっていく様を
未来は見ていたのですね・・
未来があまりにも下を見ているのが気になった死神が見たのは
この世が彼の世へと侵食されていく風景だった
「未来・・・ここ何処?」
違和感に美弥が思わず聞く
『ん~?清水寺だけど・・狭間かなぁ?』
「狭間?」
『うん・・』
未来は返事をしながらキョロキョロを辺りを見渡すと
「・・笛は如何なされた?」
後ろから声がかかった
『それずっと言ってたでしょ?五条から来たの?』
未来が言うと狩衣の男が陰からが出てくる
―― 話の流れだと牛若丸か弁慶だけど・・・どう見ても違うよね?
この涼やかな感じ・・
「我をお忘れか・・遮那王様・・・」
男は未来を見つめながら言う
―― ・・・遮那王って誰?
「牛若丸ですよ」
不思議顔で見ている未来に死神が耳打ちした
―― あぁ。そうなんだ・・遮那王で牛若丸で・・義経?
あれ?この気・・・鴨川だ・・・
『 賀茂の青龍・・』
「覚えて下さいましたか・・
では約束も覚えておいででしょうか?
京へ帰ったら・・
また笛を吹いてくれると仰いました」




