宿坊あやかし奇憚#20
「・・・もう・・ダメかもしれない。」
半蔵は誰も居ない宿坊で1人そう呟いていた
テーブルには食料や酒が乱雑に置かれ
ひかれたままのカーテンからは朝日が漏れている
「やっと朝か・・・」
半蔵は赤い目をこするとカレンダーを眺めた
未来が帰ってくるまであと3日・・・
幾度と無く悪夢で目が覚め
酒を呑み酔い潰れては悪夢で飛び起きる
ここ4日間そんな毎晩を過ごしていた
「・・畜生。
これじゃ俺が未来が居ないとダメみたいじゃないか・・」
半蔵は両手で顔を覆った
「未来~!ほらここだよ」
爽耶と先に歩いていた美弥が橋の手前で振り向き言った
―― 笛は・・如何なされた?
『ん~?なにぃ?』
ここ何処?という顔で見ている未来の隣には当然の様に沙羅が添っている
「牛若丸と弁慶の五条大橋だよ~ここが鴨川」
『へぇ~。今さ~何か言わなかった?』
「ここが五条大橋って言ったのよ。格好良いよね~牛若丸」
『それは聞こえてたけど・・・会った事あるの?』
「無いわよ!
だけどさ~999本刀を狩っていた弁慶が牛若丸とここで会い
一生を共にしちゃう訳じゃない?
そしゃ格好良いに決まってるでしょ?」
うっとりと言う美弥の隣で爽耶がムッとしていると
『まるっきり願望じゃん・・・』
ぽそっと呟く未来に沙羅が隣で苦笑いする
―― 笛は・・如何なされた?
・・・笛?何の?
「さて・・牛若丸様の写真もたっぷり撮ったし御飯しよう」
『 賛成♪』
美弥のたっぷりとは1時間。
銅像相手に何をそんなに撮るモノが?と疑問に思ってた未来は
即座に賛成した
今日のランチは川沿いのお洒落なカフェだ
鴨川を見られる窓際の席に案内され喜ぶ女子2人は
席につくと早速メニューを見入る
「景色より食い気が先じゃないか・・」
ボソっと言った爽耶が美弥の肘鉄を喰らう羽目となった
ベーコントマトレタスサンド
ツナとカッテージチーズとアボカドのサンド
ルスボイスティー
オクラと豆のカレー
トルティーヤチップス・ワカモレディップ
料理が運ばれてくると未来がニッコリし
早速ベーコントマトレタスサンドをパクつき
1個をあっという間に食べ、ルスボイスティーを口にすると
『沙羅のも美味しそう・・』
隣の沙羅の料理を気にしてくる
―― 沙羅さんってどう見ても未来が好き・・よねぇ?
未来にディップをたっぷり乗せたトルティーヤを食べさせている沙羅を見て
美弥は思うのだが・・
どう考えても未来にその気が無い・・と言うより
その気が解らない・・だろうなぁ・・と思うと頭を抱えたくもある
あ~んと小鳥の雛の様に口をあける未来を見て美弥は溜め息をついた
―― まぁ・・半蔵さんも居るしね・・
結局デザートに黒砂糖と胡桃のケーキも食べると
すっかり満腹な未来は眠たげな顔をしている
「未来?寝たらダメだよ!!これからまだ回るんだからね」
『う~ん・・』
―― 笛は・・如何なされた?
・・・笛って?
「清水寺に行くのよ!!
実は牛若丸と弁慶が出合ったのが清水寺って話もあるのよね~」
どうやら今日は牛若DAYらしい・・未来は眠い目を擦り歩いた
五条大橋から、東に歩き高架の歩道をそのまま歩き
東山五条を渡るとその先が五条坂。
そのまま五条坂を上れば清水寺まで行くことができる
五条坂の土産物屋で八つ橋の試食に惹かれる未来に
「20分くらいしか歩いてないよ?」
流石に美弥が突っ込むと
『だって・・美味しいよ?・・これもお土産にしよう♪』
未来は生八橋を2箱手に取るとレジへ行ってしまう
「あいつの土産って・・・食べ物しか無いんじゃないか?」
爽耶が呆れ顔で言うと美弥が頷いた




