宿坊あやかし奇憚#19
『だって・・その木ってこの子達でしょ?』
未来は周りの木々を指差すと話を続けた
『もう想いは入ってないよ?って事は・・・
その少将さんはもう居ないって事でしょ?あの世に行ってるとか・・
この世に居ないのは確かなら逝った方が良いよ。
彼に会えるかもしれないし』
未来は言い終えるとニッコリと笑った
「・・・私の愁いはそんな簡単な事で晴れるモノだったのね」
小町は最初驚いていたがやがて納得顔になる
「死神・・私を連れてってくれる?」
「篁が迎えを寄越しますよ」
『沙羅?』
冷たい物言いに未来が首を傾げる
「それは私の仕事ではないんですよ。
ちゃんと連れて逝く係りがあるんです・・秩序を乱す事はできません
でも・・見送りはしますから」
柔らかい声音で沙羅は告げると携帯電話を取り出す
「私です。えぇ・・小町が逝くそうですから迎えを・・」
―― あの世って・・・携帯あるんだ?
・・・電話会社あるのかな?料金はどうなってるんだろう?
未来が興味深々携帯をかける死神を見ているとすぐに迎えが来た
雅な御所車は屋根が唐破風のような形状になっている
唐車と呼ばれる最高級の牛車だ
小町は使いに手を取られ桟に足をかけかけたが
未来に目線を移すと・・・思い詰める様に死神を見る
「2人ともありがとう。・・・死神・・頑張ってね?」
死神は秀麗な笑みで頷くと隣で未来が手を振る
小町の死出への旅立ちの行列は恭しく儚げに・・綺麗だった
「さて・・帰りますか?お友達が心配してるでしょう」
御所車が見えなくなるまで見送ると未来を抱き寄せる
沙羅が地をトンッと蹴ったかと思うと着地の瞬間・・ホテルの部屋に居た
―― 瞬間移動ってやつ?
「未来!?心配したんだよ~!!どこ行ってたのよ?!」
美弥がほっとした様な泣き顔で抱きついてくる
『ごめんね。ちょっと・・・あの世とこの世の間まで行ってきたよ』
未来は謝ると笑って言った




