宿坊あやかし奇憚#16
『ん~美味し――♪』
ランチは饂飩と稲荷寿司のセットだ
透き通るお出汁にちょっと甘く煮た細切りの揚げと葱が合う
小さめの稲荷寿司は三角形のが3つ
未来はすっかり御機嫌になりながら稲荷寿司を口に放りこんだ
「未来は美味しそうに食べますね」
死神は愛おしい者を見る様に目を細めると
「そうなの。この子の美味しい顔見てると
こっちまで幸せな気分になっちゃうんですよ」
美弥は冷かす様に笑った
『だって美味しいもん。
それにしてもさ~京都のお稲荷さんって三角形なんだね?』
今気が付いた様にホントだ~と言う美弥に
「そりゃそうだ。狐の耳の形だから稲荷寿司。三角って決まってるだろ」
爽耶は当たり前に答えると嬉しそうに寿司を頬張っていた
―― 狐ってやっぱり稲荷寿司好き?
そう言えば・・死神が食べた物って何処に入るんだろう・・・?
初めて会った時から骸骨では無かったけど・・・
じっと死神を見る未来
「未来。これも食べますか?」
未来の視線に気が付いた死神が天麩羅を指し言うと
うん。と頷きながらも未来は衒い無く疑問を口にした
『沙羅って・・・食べれるんだ?』
「えぇ。食物は食べられますよ」
―― う~ん・・不思議・・
「ねぇ・・・半蔵さんには内緒にしておくね?」
そんなやり取りを聞き美弥が何故か小声で言う
『いや。別に・・・』
何で?という顔の未来を他所に
「はい。お願いしますね」
死神が答えた
「はい。まかせて下さい」
しっかりと任された風の美弥が頷く
『・・・何で?』
未来の疑問は華麗にスルーされ爽耶が笑う羽目となってしまった
「さて・・次は何処行こうか?」
結局デザートに蕨餅も食べすっかり満腹な女子2人は
買い物にしようか?観光にしようか?相談している
「やっぱり京都に来たら清水寺じゃない?」
『舞台から飛び降りるの?』
「何でよ? う~ん・・晴明神社も良いな~」
『式神でも捕まえるの?』
「何でよ?・・・兎に角、店から出ようか?」
―― 沙羅さん目立ってるし・・まぁ入った時からなんだけど
店に入った途端、女性達が浮き足立ちチラチラと
こちらを窺っていたのは知っていたが
女性客が増えたせいか最早注目の的になってしまっている
まだお茶は残っていたが美弥は店を出ようと言ったのだ
―― それに妙に2人の間が近いのよね・・
沙羅さん未来の腰に手を回してるし。
未来は気にして無いみただけど・・・年頃の女子なら気になるよね?
この子の感覚っていったい・・
「支払いしちゃうから先に出てて」
美弥はさっさと2人を店から出そうとそう言うと
爽耶もいいよ~と付け足しレジへと行く
『わかった~。 ごちそうさまでした』
未来は美弥への返事と店への感謝言うと会釈をしながら
店の戸をあけ1歩踏み出たが・・・2歩目が継げない
グラリと体が揺れそのまま落ちていく感覚に囚われていた
―― あれ?私、もう具合悪くない・・よね? お腹も一杯だし・・・
「未来?!」
死神の声が後ろからした気がした




