宿坊あやかし奇憚#9
「未来!そこは危ないって言ってるだろ!
まったく・・子供じゃないんだから・・いつになったら女らしくなるんだか・・」
高さ1m程の塀の上に座り本を読んでいる未来に半蔵は声かけた
『うん~』
本に夢中になっている未来は目だけでチラリと半蔵の方を見ると生返事を返す
外を流れる小川は未来のお気に入りで幼い頃からよく塀ごしに覗いていた
自分が大きくなると塀に座り、よく小川を見つめていたりする
―― ったく猫じゃあるまいし・・塀で寛ぐなんて・・
これで先日、初潮を迎えたとは思えんな・・昔なら嫁に行ってる歳なんだから・・
もっと女の子らしい振る舞いになっても良いだろうに・・
半蔵は物干し竿にシーツをかけながら注意を聞かない未来に心の中で
愚痴っている時
『キャッ』
バランスでも崩したのか・・未来の小さな悲鳴が聞こえた
「だから言っただろ!」
半蔵はシーツ越しに言うと未来が元いた場所を見る
「反対側に落ちたのか?!・・おい!未来。」
半蔵が塀からヒョイと反対側を覗いても・・・未来が居ない
「未来?!」
そこには未来が読んでいた本だけが落ちていた
塀を気に入ってるのは日当たりが良いのと小川が見える事・・
何よりそこは半蔵が何処に居るかすぐに解る場所だから・・
半蔵がここに来て10年目・・未来14歳の時
この日、未来は塀の上で本を読んでいた
日本の神話を集めた本で読み出したら面白くつい夢中になってしまった
半蔵が小言を言ってるなぁ・・と思ったら突然何かに摘まれ
気が付いたら空を飛んでいた
あっという間に町は下の方で家々が小さく見える
キョロキョロと辺りを見回すが何故こんな事になったのか・・?
未来にはさっぱり解らなかった
ただ解った事がヒトツある
どうやら自分は白い大きな鳥に銜えられて飛んでいるようだという事だ
『・・・。』
―― 今、どうして私を浚ったか?って聞いても答えて貰えないよねぇ?
大鳥が説明する為に口を開けたら銜えられた自分が落ちてしまう
――どうせなら背に乗せて欲しかったなぁ・・
あ~でもそうしたら半蔵に怒られるか・・今は浚われてるけど
大鳥に乗ったら自分で付いて行ったって事になっちゃう・・
でも・・知らない人に付いて行っては、いないんだけど
知らない大鳥に連れられて行くのはどうなんだろう?
未来の考えがやや斜めに走っていく時・・その思考は突然に止められた
「あぁ首尾よく行ったようだね?」
黒髪長髪の男が大鳥に言うと未来を下ろした大鳥は頷いている
―― この鳥さん話せなかったのかな~?じゃぁ聞いても無理だったか・・
「おぉ!これが王が見初めた姫君?!」
「とても麗しい」
「あぁ・・可憐で愛らしいこと」
―― どう言う事???
男ばかりの家で育ち褒め言葉に慣れてない未来は思いっきり引いていた
「まぁまぁ皆、落ち着け・・姫君が困っまておるではないか」
男はニコリと笑い未来の手を取ると侍女らしき女性達に
「婚礼の支度を」と言い未来を預けてしまう
未来は引っ張られる様に侍女達に連れて行かれた
「未来・・・何処に行った?」
半蔵はウロウロと庭を行ったり来たりしていた
気配を探ったが塀の所で切れている
――河童にでも浚われたか?
半蔵は烏を飛ばすと森の泉に住む長老河童に連絡をとる
狐達にも協力してもらおうか?と思案していた時、使い烏が帰ってきた
逸る気持ちを抑えつつ文を開けると
「未来様を浚った河童は居なかったが白い大鳥に銜えられ
飛んでいくのを見た者がいた」と書かれているではないか・・
―― 大鳥に浚われた?!何故・・大鳥が未来を?
思案した挙句「未来が大鳥に浚われた」と
修行だと称して出かけた爺にイズナを使いに出した
イズナは文を咥えるとパッと消える
数分してイズナが戻ってきた
「未来の趣味は浚われる事か?(笑)
大鳥と言えば先日、未来を嫁に欲しいと言ってきた王が居たな (・_・?
白鳥になって飛んでいった王じゃ。若造頑張れ(・Д・)ノ」
「カッコ笑い?・・なんだ・・この絵は・・?」
不思議な文ではあったが取り合えず犯人が解った半蔵はニヤリと笑い
西の印を結ぶと
「オン ビロバクシャ ノウギャ ヂハタエイ ソワカ」と唱えた
途端に半増の体が掻き消える




