宿坊あやかし奇憚#7
「だぁぁぁぁぁ!限がねぇ!!」
半蔵の刀捌きは華麗にも見えたが数の多さからか疲れてきた様子だ
「若いくせしてだらしないのぉ~」
爺は余裕で数珠を振ると器用に邪を除けている
―― 誰のせいだ・・・誰の!。
「やい!爺ぃ!いつまでやってりゃ良いんだ?!」
「あと1時間程で夜が明ける筈じゃが・・」
「私の手は未来で塞がっているので、こちらには来させないで下さいね
あぁ・・それからもう少し声を落として下さい。未来が目を覚ましてしまう」
―― 寝てんのかよ?!
「・・・・・やってられるか!!」
半蔵は怒声を上げると刀を胸の前で真っ直ぐに構え真言を唱えはじめた
「オン シュリ マリ ママリ マリシュシュリ ソワカ
オン シュリ マリ ママリ マリシュシュリ ソワカ・・」
低い声音が闇に響く
半蔵は唱え終ると何やら刀先で書く・・虚空に深紅の梵字が浮かんだ。
フワリと浮いたそれは徐々に燃え上がる火炎となり辺りに広がると
まるで意思のある獣の様に邪だけを追い詰め喰らう
―― 烈火で不浄を清浄と化す・・烏枢瑟摩明王の力を借りたか・・
見つめる爺の目が真剣なものとなった
死神は最初は驚いたものの後は何だか・・ニヤニヤしながら半蔵を見ている
「ふぅ・・・・」
半蔵の吐息と共に炎は修まり部屋は静かな清浄で満たされていた
外の気配も消えている
―― もう大丈夫だ・・
「帰るぞ未来!!」
半蔵は死神に抱かれ眠る未来を奪う様に取り戻すと、ツカツカと戸へ向かう
「ありがとなんした」
市松人形の細い声が後を追いかけたが
半蔵は少し立ち止まると振り返りもせず頷いただけだった
「ったく・・・来たいって駄々捏ねたのはお前だろ?」
半蔵は未来を抱き直すと1人呟いた
両手を半蔵の首に回しコクリと頷く未来
「起きてたのか?」
未来はもう一度頷くと
『は・・半蔵。あり・・が・・とう』
ぎこちなくではあるが、言葉を発した
「今の・・・未来が?!・・未来?もう一度言ってくれ」
驚いた半蔵は確かめる様にもう一度言う様に促した
『半蔵。ありがとう』
未来はハッキリ言うとニコリと笑う
「未来!!」
半蔵はぎゅ~っと未来を抱き締めた
「私に・・お礼を言ってくれてもいいですよ?」
突然の声に振り返れば死神が外に出てきて2人を見ている
「死神。お前・・何かしたのか?」
「えぇ。可憐な少女の声が聞きたかったもので」
死神はあっさりと頷いた




