宿坊あやかし奇憚#6
「若造・・やはり来たか?」
人形たっての希望・・と言うより未来の希望で近所の婆さんの家に忍び込み
遺体がある部屋へと入ると・・・・・爺が居た。
「爺ぃ!!帰ってなかったのか?!てか・・
てめぇ解ってたならコイツをさっさと棺桶に突っ込めば良かったろ!?」
爺の言葉を聞くなり不機嫌な半蔵だが声を咎められる事も無い
――やっぱり家の者は誰もいなかったのか・・
家人の気配が無かったからまさか・・とは思ったが・・
人が死んだ時は夜通し線香と蝋燭を絶やさないのが慣例だ
死人に何某かが入らない様に・・
「・・なんじゃ?未来まで連れて来たのか?」
半蔵の言う事なぞ気にもしない爺は、こんな所に孫娘を連れて来た事を責めている
「1人で居るのを嫌がったんだよ!」
――1人で居るのを嫌がったのはどっちかのぉ?
「まるで2児の父じゃな」
未来と人形を抱く半蔵を見てふぉふぉふぉと何時もの笑声の爺に
半蔵は一層、眉根を寄せた
「これを突っ込んだら帰るからな!!」
「そうは行かんじゃろて・・」
乱暴に人形を差し出す半蔵に爺はあっさりと告げた
「あ゛?」
「・・・判らんか?若造。」
「判ってるが・・俺は帰るって言ってるんだ!!」
爺が言っているのはこの気配の事だろう・・
――亡骸が欲しくて集まる何某か・・
「爺ぃ!お前とそこに居る死神は何しに居るんだ?!」
「ワシか?ワシは遺族に頼まれて蝋燭番じゃ。
・・・今夜はホテルに泊まるそうじゃからの~」
「私ですか?私はこの御婦人の死体番ですよ。
死体に入りそうな邪を祓うのが役目・・その他までは構ってられません。」
キッパリと言う爺と死神の言葉に半蔵は眩暈を起こしそうになった
「兎に角・・未来。人形をここに入れろ」
未来は言われるまま人形を棺桶に入れたが名残惜しそうに手を握っている
――可憐な少女だ・・愁いを帯びた瞳がまた・・なんとも・・・
「お爺様の孫娘さんですか?」
死神は未来を見つめたまま聞いた
「あぁそうじゃ。器量良しじゃろ?」
「えぇ。・・・ワカゾウさんとやら解りました。この可憐な少女なら御護り致しましょう」
死神は頭巾を取り二コリと微笑むと未来を抱き上げた
――骸骨じゃねぇのかよ?!・・・しかも美形・・
「俺は若造じゃねぇ!半蔵だ!」
「あぁ・・これは失礼。半蔵さん。未来は私が護りますから存分に戦って下さい」
未来の涙を袖で拭きながらあっさりと言う死神
「何で俺が戦うんだ!?って・・それより・・・おい。お前ロリコンか?」
「ロリータコンプレックスって事ですか?そう言われると違いますが・・
将来が楽しみな少女を好みのレディに育てるのも楽しですしねぇ」
――好みに育てるって・・
半蔵は死神の言葉に背筋が寒くなる気がした
「ワシはどっちでも構わんぞ~」
爺が愉快そうに茶々を入れ半蔵が睨んだ時・・
ふっと蝋燭の火が消え辺りは暗闇に包まれた
「未来!?」
半蔵は即座に未来の居た方へ顔を向ける
「心配無用ですよ。」
死神の声に見れば白髪が月の様に仄かに輝いている
それを不思議そうに触る未来
――怖がってはいない様だな
・・・ってアイツ俺に懐いてるんじゃなかったのか?!
「若造。来るぞ!!」
黒い強大な邪が真っ直ぐに部屋へと突っ込んでくる
「だぁぁぁクッソ~!!もう!!解ったよ!」
半蔵は刀を構える格好をすると上に過振り一気に振り下ろす
一見、自棄を起こした力技にも見えたが・・・手にはしっかり刀が握られていた
紅い切っ先が邪を焼き祓う
「ほぉ・・・刀を出せるのですか・・彼もやりますねぇ」
その言葉に未来が頷くと死神はクスリと笑い大きな鎌を横に薙ぎ払う
ギャァァ!!
銀の軌跡を辿り邪が2つに裂けた
「・・・ケッ。」
――やるじゃねーか・・




