半蔵の憂鬱
半蔵は乱暴に部屋の戸を開けると目に飛び込んできたのは
ベッドの上で苦しむ未来の姿だった
「お嬢!!」
――返事が無い・・・
「お嬢!?・・・」
抱き起こし揺さぶっても苦しむ未来・・もがき突き出した手が空を掴む
半蔵はその手を握ると尚も呼びかけた
「未来!・・未来!」
――どうする・・
邪に憑かれた訳でも魔に魅入られた訳でもない・・
未来自身の恐怖との葛藤は未来が征するしかない
考えてる間にも未来はより苦しそうに身を捩る
――このままでは・・
死の恐怖に喰われ・・現実としても死を迎える
「未来・・!未来!!」
――生きてくれ・・
いつの世もどうしてお前は俺を置いて逝くのか・・
それが俺の咎ならば・・贖罪する事すら許されないのか・・
――生きてくれ・・
「未来。俺を置いて逝くな!!」
半蔵はしっかりと未来を抱きしめ叫んでいた
その慟哭の様な叫びが部屋へ響く
『は・・ん・・ぞう・・たす・・けて』
未来は搾り出す様に訴えると半蔵の胸に顔を埋め
『助けて・・殺される・・』
己の恐怖を表すかの様に力強く半蔵に縋り付く
「俺が・・護ってみせるから・・自分を殺すな!!殺すな!
生きるんだ!!未来」
『自分を・・・殺す・・?』
ハッと気が付いた様に未来が半蔵を見る
しっかりと見つめ返すと半蔵は無言で頷いた
「・・邪にも魔にもなっていない。
未来。その苦しみは自分が生み出したもの・・
自分で征するしかない・・・。」
『自分で・・・』
未来は突き放された様な悲しみを湛えた表情で半蔵を見ている
半蔵は安心させる様に微笑むと頬を伝う涙を指ですくい
「俺が護るから・・・生きてくれ」
優しく耳元で囁いた
未来は自ら捕らえた死を吐き出す様に大きく息を吐き
苦しそうに顔を歪めたかと思うと
半蔵に体を預けるようにフッと力を抜いた
「・・・未来?」
不安顔で未来を窺う半蔵
『ねぇ半蔵・・ずっと一緒に居てくれる?』
未来は顔を上げると照れた様に微笑む
「あぁ。ずっとだ」
『約束?』
子供の様に小指を立てニコリと笑う未来
「約束」
半蔵は指を絡ませ安堵の溜息をついた
――もう大丈夫だ・・
安心した半蔵が未来から離れようとすると未来は子供の様に首を横に振った
「もう少し・・居ようか?」
再び抱きしめ半蔵が聞くと未来はコクリと頷き小鳥の様に身を寄せる
――うっ・・・普段からこれ位ムードが出れば・・
しかし・・今この状況で手を出す訳にもいかなし・・・
だぁぁぁ!くっっそ~~!!
安心して身を寄せる未来に半蔵は半蔵で新たな憂鬱で夜を過ごす羽目となった




