人生日々修行
それから俺は足柄山を離れ修行を重ねた
修行と言っても高僧のそれとは違うかもしれないな・・
常に自分の中の人と鬼の鬩ぎ合いで答えなんて出なかった
でも・・・あれは何十回目かの滝行の後だった・・
急に涙が溢れて止まらなくなったんだ
最初は自分でも何故泣いているのか解らなかった・・
――流れる涙を抑えもせず坂田は辺りを窺う・・
何故・・俺は泣いている・・?
何故にこうも涙があふれるのか・・
悲しみに囚われた何かに憑かれたか?
・・・いや。それなら解るはずだ・・
ドウドウと水の音がする
滝壺に叩きつけられた瑠璃は滔々と溢れ紺碧をなすと天色へと色を変え
流れていき白藍となる・・
水草の常盤が目に眩しい
「月・日・星」
「ツキ・ヒ~ホシ・・ホイホイホイ」
天に手を伸ばすように生えた枝の上に黒紫色の鳥が1羽鳴いた
目元に水色が栄える綺麗な鳥だ・・
「月・日・星」
足元を見ると苔が水飛沫をうけキラキラと輝いている
――森羅万象
自然の息吹・・
水も水草も木々も苔も・・全てのものが生きて生かす為にある・・・
――唯我独尊
我が独りではなく・・・
ただ1つの個としての命の尊さ
ただそこに在るだけの自然・・・
個として存在するからこその輪
それに感動していた事にようやく坂田は気が付いた。
自分が人だろうと鬼だろうと・・・どっちでも良いじゃないか・・
俺は生きている・・ただ・・生きている
「俺は生きているんだ!!」
坂田は吠える様に叫んでいた
「俺は生きている!!生きている!!」
「俺は・・・俺だ!!!」
誰も返す者はいない・・・
ただ心地よい風が吹き抜けるだけだった
――そこの後で半蔵と出会ったのさ
修行は相変わらず続けていたし・・・ちょっと違うか・・
もうその頃は山に入るのが楽しくなっていたな
修行とは苦が付きまとうなら・・・
楽しく山に入れる俺がしていたのは修行ではないかもしれない・・
苦笑い混じりに坂田は言い、長い話に喉が渇いたのか・・酒を一気に煽った
「私さぁ・・・熊好きだよ」
「・・?!」
突然に言われて坂田と半蔵の2人は未来を見つめた
「私。熊すきだよ・・うん。」
未来は納得する様に1人ごちる
「お嬢・・・。熊ってあの黄色の蜂蜜好きな熊ではないですよ?」
「わかってるわよ」
「・・・夢の国のネズミのお気に入りの縫い包みでもありませんよ?」
「・・・わかってるって!!」
不貞腐れた様に未来はぷっと頬を膨らます
「この流れから行って、自然の熊に決まってるじゃない!!」
この流れと言うのには随分、時が経っているが・・未来は気にしない
「可愛いでしょ?くま・・」
「そりゃ・・可愛いが・・」
熊と子供の頃に相撲をとった坂田にとっては怖い存在ではないが・・
「怖くないのか?」
恐れない・・それはそれで生命の危機を招く・・
「怖いよ。」
当たり前でしょ?とでも言いたげに未来はサラリと言った
「だけどさ~それは畏怖って言うか・・・命の危機って言うか・・
本能として当たり前じゃない?
自分より大きい者って怖いし・・人間だってそうだよ?
第一印象ってあるけど・・何者か判らない者は怖い
熊だって人を見て驚いて襲っちゃうのかもしれないし・・
それを判っていれば殺すよりも・・対処の仕方があるし、怖くない。
熊さんもお嬢さ~ん♪お逃げな~さい♪って言ってくれるし」
真面目に語った自分が恥ずかしいのか未来は
歌っておどけるとニコリと笑った




