お一人様ご案内
宿を継いだ未来が初めてのお客様をお迎えしました
どうなる事か・・温かく見守って下さい
『もう!!信じられない!!爺ったら何も言わずに帰るなんて!!』
「お嬢・・もうその位にしておいた方が・・」
ツマミを持ってきたら爺は消えていた・・
折角持ってきたんだから食って呑んでやる!!
と・・先程から未来は特製塩辛と酒を豪快に減らしていた。
「客の相談を受けろとお爺様が言っておられたのでは?」
『わぁってるわよ』
と言いつつ酒を煽る未来
「今日はお客も着ますし・・」
『へ?もう?・・・そう言えばさ
爺が言ってた鬼って何?』
「・・・・へ?」
―― 目が点の半蔵って・・
始めてみたかもしれないなぁ~
『いや。へ?じゃなくて・・・鬼って何?』
「お嬢・・・。解らずに聞いていたのか?」
『だって・・鬼って沢山居るじゃない?山師?蹈鞴をやってる人達?
盗賊?それとも桃太郎とかに出てくる鬼?』
そう未来の言うとおり山師や蹈鞴衆を鬼と言う場合もある
酒天童子なんかは盗賊をモチーフにした御伽噺と解釈されている
「桃太郎だな」
―― お嬢は・・鬼をどこまで理解しているのか?
『え~!!私に角無いよ?これから生えるの??
それはイヤなんだけど・・
あぁ!でも髪をアップにしたら・・』
「お嬢・・角は生えてこない」
半蔵の話を聞いてるのか聞いていないのか・・
未来はぐっと酒を煽ると
『あー!!ちょっと待って!!桃太郎の鬼って言ったら・・・
金銀財宝を桃太郎に略奪されてるじゃない!
くっそー!!うちが貧乏なのは桃太郎のせいだったの?!』
「っつ・・」
つられて呑んでいた半蔵が噴出しそうになり慌てて口を拭う
『だってそうじゃない?鬼が何したのよ?
鬼ヶ島に住んでただけじゃない!金銀財宝だって
鬼がせっせと集めたのかもしれないし
・・桃太郎は盗賊!!』
「あははは!お嬢の中で桃太郎は盗賊か・・」
半蔵は愉快そうに笑うと未来の頭をワシャワシャと撫でた
『半蔵!それやめてって言ってるでしょ!』
半蔵は手を離すどころか余計にワシャワシャすると
「夕方にお客が着ます
からそれまでに酔いを醒まし
支度をしてください」
と言うと酒瓶とグラスを持って行ってしまった
『はいはい』
う~んお風呂でも入るか・・
――夕方――
「こんにちはー」
『はいはーい!いらっしゃいませ!!』
・・・・・・キャァァ――!!
はりきって奥からドタバタと走ってきた未来を
食堂の前で半蔵が捕まえ尻を叩いた
『危ないじゃない!!何すんのよ!』
「お嬢。張り切りすぎです・・」
『なによー!!
それと乙女の尻を叩くのとどう関係があるって言うのよ!!』
「・・・あのぉ・・すみません・・」
恐縮するように客の女は2人を窺っていた
『あ!はい!!いらっしゃいませ♪』
未来は半蔵に抱きかかえられたまま愛想よく客を迎えた
「あの・・お取り込み中でしょうか?」
『い・・いいえ!!違います!違います!取り込んでません!!』
未来は半蔵を突き飛ばすと居住まいを正し
『いらしゃいませ。輝清坊にようこそ』
正座でお客様を迎えた
―― お嬢・・・それは廊下で言う事では無いデスヨ・・
思わず心で突っ込む半蔵だった
「少し・・早く着きすぎたかしら?」
お客はクスクスと笑いながら未来に聞いた
『いいえ。大丈夫です
お見苦しい所をお見せしました』
深々と頭を下げる未来
「いいえ。可愛いな・・と思いまして・・お気になさらないで」
『はい・・ありがとうございます。
ご夕食は食堂で6時からになっております
お風呂は廊下の突き当たりを右ですのでごゆっくり』
未来は三つ指ついて挨拶すると部屋を辞した
までは良かったが・・
ダダダダダダダッ
廊下を駆け
半蔵の居る厨房へと駆け込むと興奮しながら話し出した
『ねぇねぇ!今日のお客さんすっっっごい美人さんだね?!女優さんみたい!!』
「そうですか?」
『そうよー♪爺が見たら早死にしたのを悔しがると思うわよ?』
「それは無いかと・・」
『どうしてよー?』
「お婆様は綺麗な方だったので・・」
『ふ~ん~
・・それよりさーあのお客さん訳ありそうよね?』
「・・・何か言ってましたか?」
『ううん。何も・・でもさ一人でこんな所に泊まるのもそうだけど・・
綺麗だけど朧げって言うか・・』
「お嬢・・それを言うなら儚げです・・・
さぁお膳をセットして下さいよ」
『は~い』
―― 儚げ?消えちゃいそうなのは確かなんだけど・・何て言うのかなぁ?
不確かな感じなんだよね・・ってやっぱ朧げじゃん・・?
う~ん・・爺ほど年寄りなら茶でも飲みながら相談になるだろうけど・・
話の切欠ってどこから出るの?
・・酒だ♪こうなりゃ酒の力で何とか・・
『食後のお酒はいかがですか?地酒から自家製果実酒まで取り揃えてますが・・』
未来はお膳を下げると沢山の酒を乗せたワゴンを押してきた
「あまり飲めないんですが・・お料理も美味しかったし・・・
果実酒いただけますか?」
『はい♪ただ今・・・』
「あの・・女将さん。付き合ってもらって良いかしら?」
『喜んで♪』
華奢なロンググラスにサイダーを注ぎ野苺酒を入れかき混ぜると
フワリと茜色が広がる。それを女性の前に置くと
さっそく未来は向かいに座った
手にはしっかり自分用のジンライムを握っている
『とりあえず乾杯っ』
く~っと煽り一気に飲み干す未来
―――1時間後
『それでですね~ここを継ぐ事になったんですよ~』
すっかり酔ってきた未来が生まれてきて現在に至る
右翼曲折20年史を語り終わった所だ
爺なら1時間では済まなかっただろう・・
「そうなんですか・・それで・・
じゃぁ今度は私の話も聞いていただけますか?」
『勿論ですよ~』
「どっから話したらいいか・・そうね・・
あれはちょうどこれくらいの時期でした・・」
女はテーブルの上にあるグラスを両手で包み込む様にもつと語り始めた
お疲れ様です。
PC用「~なろう」で編集するととっても楽!
って事に今日気が付いた作者です
(今まで携帯用画面をPCで見ながらしてたw)
字・改行間違いがありましたら
ご指摘下さい




