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宿坊あやかし奇憚  作者: あやと
1/106

~未来と不思議な仲間達~

「ねぇねぇお姉さん!どこまで行くの?乗せて行くよ?」



『・・・。』



珍しく朝早く目覚め

散歩ついでのコンビ二帰りに

何故に声をかけられなければならないの?


未来(ミキ)は

家はすぐそこなんんだけど・・って言うのも難だし・・と黙って車を見つめた


男の目線が未来の体を上から下まで

舐める様に見つめる


イヤラシイ・・嫌悪感を覚えて男を睨むと突然


「し・・失礼しました!!」


何故か車は急発進し排気特有の嫌な臭いをのこして走り去った


はぁ・・良かった♪


それにしても何故急に?


改めて自分の格好を見てみる・・・



キャミソールにショートパンツ・・・手にはコンビニ袋・・・・


そして・・・・・。


裸足?!



あはははww




変な女だと思われただろうが結果オーライって事で・・


しかしあの男の顔ったら・・


未来はクスクス笑いながら小川をひょいと飛び越えると


忘れてたミュールを回収し塀に飛び乗った



当然、ここが玄関ではない。


勝手知ったる爺の家・・


玄関から道路に出てグルリと周り


小川にかかる橋を渡るより


裏口から出て塀を越え小川を飛び越えた方が早い。


まぁ散歩で近道もどうか?と思うが


幼い頃の抜け道をそのまま使っている次第だ



未来は塀に乗ったままミュールをコンビニ袋に突っ込むと


2階のベランダに手をかけた・・



その時



「お嬢あぶない!!」


誰かが足に縋ってきた



『ヤバッ;』


五月蝿いのに捕まった・・


『大丈夫よ!半蔵(ハンゾウ)

それより危ないから離してよ!!』



「いいえ。お嬢が降りるまで離しません」


『大丈夫だって』



「ダメです。その足で入って部屋を汚す気ですか?」



えっ・・・そっち??


ねぇ半蔵・・


女子が塀を登って窓から入ろうとしてるのよ?


なのに・・突っ込むとこそこ?


「あぶない」のは部屋って事ですか?



「さぁお嬢・・おとなしくしていて下さいよ?」


そう言うのが早いか半蔵は未来をヒョイと担ぎ上げた


『ちょっと!半蔵!私は荷物じゃないんだからね!』


足をバタバタさせて暴れる未来


「解ってますよ。荷物なら黙って担がれてる・・いえ。おとなしくしていて下さいって」


『誰がおとなしくさせてないのよ!!』


「はい。はい。」


やれやれ。といった風に半蔵は勝手口の戸を開けると未来を降ろし

風呂場へ行きかけ・・


「いいですか?動かないで下さいよ・・・

いいですね?」


勿論・・注意も怠らない


『はいはい。』


未来は半蔵の後姿をあっかんべーで見送った


両親が死んで爺の家に引き取られたのは4才の時だった・・


その時から(爺の言いつけで)半蔵は私に使えている


あれから16年


爺も去年あの世に行き


今日は3回忌


感傷に浸りながらの

散歩ぐらいさせろってーのあの唐変木!


「唐変木とはまた古風な・・」


いつ戻ってきたのか・・気配のまったくしない男だわ~ってか

私・・声に出してた?


「さぁ。足を・・」


『足くらい自分で洗えるわよ!!』


「いえ。洗えるとは思うんですが・・

なんせそのまま部屋に入ろうとした方ですからね・・・」


『わぁったわよ。洗ってもらえば良いんでしょっっ!』


未来は上がりに座ると半蔵へと足を蹴り出した


「お嬢・・行儀が悪すぎます」


何食わぬ顔で未来の蹴りをかわす半蔵



くっそぉぉぉぉぉ!!



「口も悪いし・・いったい誰に似たんだか」


『半蔵w』


あはは言い返せまい!


どんな顔してるんだか覗いてやろ~っと


未来は足をあらっている半蔵の顔を窺った


え・・?

耳まで真っ赤なんですけど?え??今の照れるトコ??


なんか・・半蔵ったら


可愛い・・・・


・・・って


落ち着け私!


半蔵よ?半蔵!


小憎たらしくて


口煩いし


料理は上手いけど・・って違う!


私を子ども扱いしかしない半蔵よ?


そうそう。そろそろ「おっさん」の仲間入りな半蔵よ!


未来は必死に先程の想いを掻き消した


『さぁ。良いですよ

足を拭いたら着替えてきて下さい。

食事の後は爺様の3回忌を行いますから』


半蔵は未来へとタオルを放ると桶を持って行ってしまった


・・・あれ?

半蔵・・機嫌悪い?

さっきまで真っ赤だったのに・・?まぁ・・良いか。


それよりご飯~♪


『先に着替えですよ!!』


風呂場の方から半蔵の声が響く


「は~い!」


ご飯の為ならしかたがない


未来は急いで着替えると食堂へ向かった



「お嬢の分は、こちらにありますから。」


『あれ?半蔵は?』


「準備がありますから失礼します」






・・・行っちゃった


いつも2人で食べてるせいか落ち着かない


・・まぁしょうがない


未来はきちんと手を合わせると


『いただきます』


声に出して言った


1人でも「いっただきます」言うのは癖でもあるし


・・爺のせいだ


トーストを片手に

半蔵特製オムレツを頬張る



「未来・・

食べると言う事は命を戴くって事じゃ・・


他の命を糧に生きる。


罪深いかもしれないが・・


そうしなければ人は死ぬ。喰い散らかさず

命を頂戴致しますという気持ちで

戴きますと言うんじゃよ」


爺ってたまに良い事言うんだよね・・


爺は五月蝿いことは一切言わなかった・・


幼い頃から半蔵の方が五月蝿かったなww


ってか・・いつまで旗立てるんだろう?


未来はしかめっ面でオムレツについてる旗を横に寄せた


「お嬢。食べおわったら下げて来て下さい」


『半蔵その格好・・』


「正装です。

あぁ歯は磨いて下さいね」



『・・はい』


いや。格好を突っ込まれてあの答え?


??と思いながらも未来はオムレツを頬張る


ん~♪トマトソースサイコー♪


それにしても

なんだっけ・・・?

山伏がするような・・


白装束?じゃないか・・


トマトソースの余韻が残るうちに

コンガリ焼かれたトーストを食る



ん~♪これよこれ♪



まさか・・山登りとか言わないよね?



紅茶に口をつける



これも未来の好みに合わせて

半蔵が茶葉をブレンドした特製だ



ん~?でも私にあの格好させないし・・・


ってまさかこの後?着替えろと??


いやぁぁ!それだけは嫌!



・・・でも爺の為って言われたら・・


悩みながらもせっせと皿を空にした未来は


『ご馳走様でした』


これもしっかりと手を合わせた


「いただきます」が命を頂く事なら

「ご馳走様でした」は

食材と食事を作ってくれた人への労いと感謝の言葉だ。


「「いただきます」と「ご馳走様」が言えるなら

人は何所でも生きていける」というのも爺の格言?だ・・


爺の3回忌かぁ・・


半蔵のあの格好・・

何やるんだろ?



『半蔵~!ご飯終わって歯も磨いたよ~!』


「ではこちらに・・」


半蔵はあの格好のまま先に歩いていく


う~ん・・室内なのは良かったけど・・


「ここです」


『・・・壁だけど?』


どう見ても廊下の突き当たり・・つまり壁だ


「えぇ」


半蔵は涼しい顔で答えると床板の一部を外しレバーを引いた


ギィィィィィッ


音と共に壁が周り奥に部屋が見える


『隠し部屋?!』


「どうぞ」


『うちにこんな部屋あったんだ?!!』


「えぇ」


う~ん何か・・半蔵ったら無口。


『それでは・・始めます』


写真も何もないし・・ってか何この・・神殿?でかっ!


6畳程の部屋なのだが

神社ばりの神殿


半蔵はそこの前に座ると持鈴(じれい)を

チリンッチリ~ンッと鳴らし何かを唱え始めた






「・・・・若し痛む処有らば玆(こ)の十宝を令(し)て」


・・・祝詞?

でも不思議・・私これ知ってる・・・


『布留部(ふるへ)由良由良止(ゆらゆらと)布留部』


未来は半蔵が唱えるものと同じに言っていた


チリーン・・チリーン・・ゆっくりと持鈴を鳴らし


未来がこれで終わり?と思った時である


「よぉ!!未来♪元気そうじゃの?」


『お爺!!!!?』






―― 爺が帰ってきた





って・・・おぃ!アニメかってーの!宝珠七つ集めてないつーの!


爺還って来ちゃったよ・・

小さいながら御葬式も終わったし


御近所に何て行ったら良いの?


お爺帰って来ました~♪なんて言えないよ?


ヤバイ人になっちゃうじゃん!


がばい婆ちゃんは苦労人で偉い人だけど


我が家はヤバイじぃちゃんじゃん!


そんなのイヤダ!


こんなに気軽に帰ってこれるって


あの世ってどんだけ近いの?


「どうじゃ未来 驚いたか?」


『・・・神様の所で修行でもしてたの?』


「いや。さすがにあの世では修行してないがの・・神様は元気じゃった」


『居るんだ神様・・

いや。それはどーでも良いんだけど帰ってきてどーすんのよ?!御近所に何て言えばいいのよ?』


「大丈夫じゃよ。1時間しか居れないからの」


『なら大丈夫♪って違う!!』


「まぁ落ち着け。未来も一杯やるか?」


そう言うと爺は御神酒を嬉しそうに手に取った


『触れるんだ?』


「そうじゃなw触れたわwwほれ半蔵も呑

むんじゃろ?」


「ではグラスを持って参ります」


う~ん・・半蔵何か変?


「あやつ照れよって」


『はぃ?何故に死に掛かった爺に照れるの?』


「わしゃもう死んどる!失礼じゃな」


や・・そこじゃないんだけど;


「さて・・未来。

こうして爺が帰ってきたのには訳がある・・話しておかなければならない事があっての~」


『死ぬ前に言っとけば良かったじゃん・・』


「いや・・・。

お前が20の歳になったら話さなければならない事じゃったんだが

その前に死ぬなんて思ってもみなかったわ!はっはっはっww」


『笑い事?お爺いつ死んでもおかしくない年齢(とし)だったじゃん?』


「まぁ享年99じゃったがの~あと1年イケルと思ったんじゃが・・」


『ふ~ん~。で?何?』


「呑む前に話すかの~」


爺は酒瓶を残念そうに撫でると未来をしったりと見た


「未来・・実は我が家は代々拝み屋をやっておってな

拝み屋は占いや祓いをやったりして日銭を稼ぐんじゃが


ご先祖の1人が鬼と結ばれ子をなした


我等に流れる鬼の血が力の源だとも言われている


そこで未来・・この宿を継いで欲しいんじゃ」



『・・・・継いでるじゃん』


未来は高校を卒業すると「宿を継ぐ」と称して毎日家に居る


「それでは継ぐという事にはならん」


『お爺・・・まさか修行でもしろって言うつもり?今更?』


山に篭もるとか滝に打たれろとか・・・?

いやぁぁ!絶対イヤ!


「修行に年齢は関係ないんじゃが・・そうではなく

この宿に来る客の相談に乗ってあげて欲しいんじゃ」


『さっき言ってた占いをやるの?それだって出来ないわよ?』


「それらは半蔵が居るから大丈夫じゃろうて・・お前には客の話し相手になって欲しいんじゃ」


『ディープな相談だったらどうするのよ?』


「お前なら大丈夫じゃろう・・・なんじゃ?自信がないのか?」


『ん~?わからないw

自信無いっていう程に爺の仕事を見てないし・・爺いつも客と茶飲んでただけだと思ってたし』


「そうじゃ。

茶飲んでたたけじゃ・・それで良いんじゃよ」


『それなら継ぐ♪』


「未来・・頼んだぞ」


『うん♪』


「これで爺からの話は終わりじゃ。

・・・半蔵!入ってきても良いぞ」


半蔵居たの?!Σ(・Д・ノ)ノ!


極まりの悪い顔をし半蔵が入ってくる


「さっさと呑まぬと時間が無いからなww」


さぁさぁと言わんばかりに爺はグラスを取ると手酌で注いだ


「お爺様・・自分が注ぎますから・・」


手酌で飲ませた自分を責める様に

顔を顰める半蔵


「まぁ良いじゃないか・・

ほれ半蔵・・呑め!」


はぁ・・すっかり恐縮しながら注いで貰う



そう言えばこの2人って・・変よね?

そりゃ爺は年上だけど敬う程の爺かと言うと疑問だし・・


そんな事を考えながらぼんやり2人を見ていると



「未来・・爺に塩辛持ってきてくれんかの?」


嬉しそうに酒を煽ると御摘みの催促だ


『は~い』


未来は正座の後遺症もなく

身軽に立ち上がると

台所へと向かった




未来が出て行くと待ちきれなかったという風に半蔵が口をひらいた


「あの事・・言わなかったのか?」


「何をじゃ?」


お爺は気にせずといった風に手酌で酒を注いでいる


「・・・それにしても

・・お嬢はよく何も聞かなかったな・・」


「鬼・・・か?」


「えぇ。」


「まぁワシの孫じゃからのw・・・あの話はお前がしてやれ」


「え・・?」


「・・ワシが話せば未来の生き様が決まってしまう・・アレが選ぶなら先行きも安泰しようぞ」


「・・・はい」







お疲れ様です。


主人公が宿を継ぐ経緯と前章とも言える物語の始まりを書いてみました

この後の物語は短編的に追加していきたいです


文字・改行の指摘がありましたらお願いします


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