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宿坊あやかし奇憚  作者: あやと
18/106

いらっしゃいませ・・・てか・・何しに?

「よお!!半蔵~!!来たぞ~」


「キャァァァァ!!」


玄関からの男性の声かけと共に


掃除中のイズナの悲鳴が聞こえてきた



『どうしたの?!』


まず駆け付けたのは未来だ


「み・・未来さま!!あれ!アレ・・!」


男を指差すと半泣きのイズナは変化も解け未来の肩によじ登る


『え~?』


イズナが指をさす方を見れば


ボクサーパンツに靴下、手には旅行鞄をぶら下げた男が立っている


『この~ぉ!!変態ッッ!!』


未来はそこにあった箒(ほうき)を手に取るとバシバシと男を叩いた


たまらないのはパンイチ男である


草箒とはいえ容赦なしに裸体を乱打され


「いて!!いてて!!」


こちらはこちらで半泣きになっている


「いて!!いてー!!こら半蔵!!このジャジャ馬を止めろ!!」


『だれがジャジャウマよ!!変態がッ!!』


いつの間にか来た半蔵は面倒臭そうに未来が振り上げた手を掴み止めると


「お嬢。これはお客様です」


これ扱いで男を紹介した



『お客様・・って坂田様?』


「はい。」


『・・・宿泊拒否って出来ないの?』


「いやいや。お嬢さん!!予約は確かに受けただろ」


擦り傷だらけの坂田は焦りながら未来に詰め寄る


『いや~!!近寄らないで!!』


手を掴まれているため今度はキックの応酬だ


半蔵は慌てて引き離すと未来を小脇に抱え一旦奥へと行った


「お嬢。一応・・あいつも客なんですが・・」


『御代いらないから帰ってもらって』


「ダメです。お爺と約束なさったでしょ。」


『だって変態・・』


キッパリと言う半蔵にシュンとしながらも未来は抗議の声を上げる


「まぁ・・何か事情でもあるんでしょう」


『変態に?』


「そうではなく・・あの格好の事情ですよ」


『あぁ・・』


昔からだが・・お嬢はどうも話の焦点がずれる気がするんだが・・


半蔵が改めて不思議に思っていると


「お2人さん、話は終わったかい?」


坂田がこちらを窺っている


『はい。ではどうぞお上がり下さい』


未来の言葉を聞くと笑顔になった坂田は


「あ~良かった♪お嬢ちゃん宜しくな」


と言うとズカズカと未来に近づいてくる


すかさず半蔵の後ろに隠れる未来


自動的にお客様の対応は笑いを噛み殺している半蔵の役目となった








「大きくなったな?」


部屋に2人きりになると坂田がいきなり切り出す



「俺か?身長は変わらないと思うが・・」


手を翳し坂田と身長を比べる半蔵


「何で今更・・お前と背比べしなきゃならん?


あのお嬢ちゃんさ・・未来っていったか?」


「あぁ。」



半蔵は短く言うと茶を淹れはじめる



「じゃじゃ馬だが・・・美人だ。俺好み」


坂田はお茶を受け取ると半蔵の心を探る様に言い募る


「そうだったか?」


半蔵はそのまま自分の茶を淹れると話を続けた


「そうさ。・・そしてお前の好みだろ?」


「お前・・・何しに来たんだ?」


ニヤニヤ顔の坂田を睨む半蔵


「そう怖い顔するなよ~親友が久々に遊びに来たんだから」



「お前次第だな・・・


ところでお前・・何でそんな格好なんだ?」


今更ながら半蔵が聞くと罰の悪そうな顔で話し始めた


「ここの川からちょっと行ったに木があるだろ?」


「あぁ・・あるな」


「あの木に子猫が居て降りれなくなったのか鳴いていたんだ


木に攀(よ)じ登り助けたまでは良かったが・・・」


「川に落ちたのか?」


「あぁ・・でも猫は無事だったぜ」


晴れ晴れとした顔で言い放つ坂田に


「お前・・鈍ったんじゃないか?」


半蔵は意地悪そうに笑う


「風呂にでも入れよ。あと・・裸でウロウロするな」


「年頃の娘がいるからか?」


からかう様に笑顔で返す坂田に憮然とすると半蔵は


「飯はその後だ」


と言い放ちピシリと襖を閉めた








――戻ると待ち構えてたとばかりに未来が半蔵を捕まえた


『ちょっと半蔵!あの変態とどういう関係よ?』


「お嬢。変態はやめて下さい


・・・猫を助けて川に落ちたらしいですよ」


『それであの格好・・』


「だから変態よばわりは止めてやって下さい」


『ふ~ん~解ったわ。・・・で?半蔵とはどういう関係なの?』


「昔・・修行を一緒にした仲です」


『う~ん~?』


「なにか?」


『修行をした仲って言ったって・・・修行って一人でするもんでしょ?』


「あぁ・・修行終わりに里に出て精進落しをするんです。


そこでよく一緒になりましてね・・」


『精進落し?』


「山で修行をして、そのまま清浄の気を纏い俗世に帰ると穢れになるんです


だから山から下りて・・・ここの様な宿坊で精進ではない料理を食べ呑むのです」


『その時に知り合ったの?』


「えぇ・・」


そう答えると話は終わったとばかりに半蔵は夕食の用意を始める


『んで?』


未来はまだ聞きたい事があるらしく半蔵の背中に聞く


「んで?って・・・」


半蔵は手を止める気は無いらしい


『あの刀・・・今日のお客様が御所望だと言ってたじゃない?』


「はい」


『どうしてよ?』


「それは・・お嬢が聞いてみて下さい」


『・・・・。』



――里芋・人参・蒟蒻・猪・・・今夜は鍋らしい。


そうなりゃ冷酒だな~今日のお酒は何にしよう?


未来は酒を選びに室へと行った



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