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宿坊あやかし奇憚  作者: あやと
13/106

未来の水入りです

『さて聞かせてもらいましょうか?』


未来が仕切る事にしたらしい


精一杯、偉そうに腕組するとそう切り出した


半蔵は何かあれば出る構えだ


――勿論・・口でも拳でも・・


「そう仰々しくされても困るんですが・・」


偽浦島は頭を描きながら落ち着かない様子ではあるが語り始めた


「お爺様に焼香を・・と思ったのは本当です


私は実は亀なんですが・・お爺様に生前お世話になりまして・・・」


『お爺に?』


「はい・・溺れてる所を助けていただきました」


『え~?!爺が浦島太郎?!』


「お嬢。黙って聞いてください」


話がややこしくなるのを半蔵が止めに入った


「いえ。浦島さんの後の話しです。あれは・・寒い冬の事でした・・・」






――もう生きていてもしかたがない


亀はそう思うと崖から海へ身を投げた・・・筈だった


「ギャ―――!!」


決心してポ~ンと飛び降りたのは良いが


ゴツゴツとした岩肌でしこたま体を打ち転がっていく


「いてっ!いてっ!たっつ!!助けて!!」


溜まらず助けを求める亀はゴロゴロと転がると


・・・ボチャン☆


海へ落ちた


「ギャー!!冷たい!!痛い!!誰か!!誰か~!!」


海水が傷に染みるのかザブザブと暴れまくる亀


「助けて―!!」








――どんなに叫んでも誰もやって来ない・・


やはり罰があたったか・・・


亀は薄れ行く意識の中で


そう言えば死にたかったから丁度良いよなぁと考え力を抜いた




その時・・







「ほ~亀が溺れるとは珍しい・・」


何処からか暢気な人の声が聞こえてきた


「どれ・・助けるかの?」


「お爺様・・・・・」


何やら自分を助ける相談をしているらしい


いや。助けないでくれ!もう良いんだ。もぅ・・


亀の意識はここで途切れた









次に目を覚ました時はどこかの小屋だった・・


海の音が聞こえる・・・漁師小屋?亀が考えを巡らしていると


「やぁ。気が付いたかの?」


声をかけられた方を見れば老人が一人、囲炉裏の前にいる


亀は手足をバタバタさせ老人に近づこうとした


全身に激痛が走る・・


「あれ。動かんで良い


・・お前さんあちこち傷だらけだわ、甲羅に皹(ひび)は入っておるわ


大変な怪我をしとるんじゃ・・休んでおれ」


亀はペコリと頭を下げると目を瞑った






「・・・それから半月ばかり


私が海に帰れる様になるまで、お爺様には面倒を見て頂きました」


『ふ~ん・・お爺ったら帰って来ないと思ったら、そんな事してたのかぁ


修行だとか言って出かけたのに・・・・で?竜宮城へは?』


「はい。お連れすると言ったのですが断られました」


『勿体無い!!どうして?』


「お爺様が言うには・・つまらんから。・・だそうですが・・・」


鯛や平目の舞い踊りではツマラナイですかねぇ?と亀は首を傾げる


『う~ん?』


見た事のない未来に解る筈も無く・・こちらも首を傾げたが


『まぁ良いわ。お爺への気持ちは有り難く頂きます・・


折角お焼香に来てくれたのに仏壇も無くてすみません』


そういうと丁寧に頭を下げた


「いえいえ。こちらこそ偽名ですみませんでした」


その姿に恐縮した様子の亀も頭を下げる


『しかし・・お爺の写真は食堂に飾ってありますから


御夕飯の時にでも手を合わせてやって下さい』


珍しく上品な物言いで未来が言うと亀は更に深く頭を下げた




お疲れ様です


未来には何か思う所があったようです

さて次回はどうなるんでしょう?


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