未来の水入りです
『さて聞かせてもらいましょうか?』
未来が仕切る事にしたらしい
精一杯、偉そうに腕組するとそう切り出した
半蔵は何かあれば出る構えだ
――勿論・・口でも拳でも・・
「そう仰々しくされても困るんですが・・」
偽浦島は頭を描きながら落ち着かない様子ではあるが語り始めた
「お爺様に焼香を・・と思ったのは本当です
私は実は亀なんですが・・お爺様に生前お世話になりまして・・・」
『お爺に?』
「はい・・溺れてる所を助けていただきました」
『え~?!爺が浦島太郎?!』
「お嬢。黙って聞いてください」
話がややこしくなるのを半蔵が止めに入った
「いえ。浦島さんの後の話しです。あれは・・寒い冬の事でした・・・」
――もう生きていてもしかたがない
亀はそう思うと崖から海へ身を投げた・・・筈だった
「ギャ―――!!」
決心してポ~ンと飛び降りたのは良いが
ゴツゴツとした岩肌でしこたま体を打ち転がっていく
「いてっ!いてっ!たっつ!!助けて!!」
溜まらず助けを求める亀はゴロゴロと転がると
・・・ボチャン☆
海へ落ちた
「ギャー!!冷たい!!痛い!!誰か!!誰か~!!」
海水が傷に染みるのかザブザブと暴れまくる亀
「助けて―!!」
――どんなに叫んでも誰もやって来ない・・
やはり罰があたったか・・・
亀は薄れ行く意識の中で
そう言えば死にたかったから丁度良いよなぁと考え力を抜いた
その時・・
「ほ~亀が溺れるとは珍しい・・」
何処からか暢気な人の声が聞こえてきた
「どれ・・助けるかの?」
「お爺様・・・・・」
何やら自分を助ける相談をしているらしい
いや。助けないでくれ!もう良いんだ。もぅ・・
亀の意識はここで途切れた
次に目を覚ました時はどこかの小屋だった・・
海の音が聞こえる・・・漁師小屋?亀が考えを巡らしていると
「やぁ。気が付いたかの?」
声をかけられた方を見れば老人が一人、囲炉裏の前にいる
亀は手足をバタバタさせ老人に近づこうとした
全身に激痛が走る・・
「あれ。動かんで良い
・・お前さんあちこち傷だらけだわ、甲羅に皹は入っておるわ
大変な怪我をしとるんじゃ・・休んでおれ」
亀はペコリと頭を下げると目を瞑った
「・・・それから半月ばかり
私が海に帰れる様になるまで、お爺様には面倒を見て頂きました」
『ふ~ん・・お爺ったら帰って来ないと思ったら、そんな事してたのかぁ
修行だとか言って出かけたのに・・・・で?竜宮城へは?』
「はい。お連れすると言ったのですが断られました」
『勿体無い!!どうして?』
「お爺様が言うには・・つまらんから。・・だそうですが・・・」
鯛や平目の舞い踊りではツマラナイですかねぇ?と亀は首を傾げる
『う~ん?』
見た事のない未来に解る筈も無く・・こちらも首を傾げたが
『まぁ良いわ。お爺への気持ちは有り難く頂きます・・
折角お焼香に来てくれたのに仏壇も無くてすみません』
そういうと丁寧に頭を下げた
「いえいえ。こちらこそ偽名ですみませんでした」
その姿に恐縮した様子の亀も頭を下げる
『しかし・・お爺の写真は食堂に飾ってありますから
御夕飯の時にでも手を合わせてやって下さい』
珍しく上品な物言いで未来が言うと亀は更に深く頭を下げた
お疲れ様です
未来には何か思う所があったようです
さて次回はどうなるんでしょう?




