宿坊あやかし奇憚 外伝 篁4
「これ。間違いと申すはこちらの言い分・・その者達には酷じゃろう」
爺が見かねて戒めると男はちょっと首を傾げ 真実ですとあっさりと言う
「雑式がそなたの配偶者欄に妹の名前を間違えて書いてしまった様での~
それを検めていたこの男が気が付き この通り詫びに来たのじゃが・・・
既に遅し 記憶を消す事も出来るが・・・」
さてどうするか・・爺が思案していると
『媛珠と過ごした全てを忘れる位なら・・このまま業を背負って生きよう』
事も無げに篁は言う
「やはりそう来るか・・・ならば共に来るか?
そなたを冥官に引き立てよう」
「墨で消せば済みますが?」
爺の提案を否定する様に男は言う
「何じゃ?この者では不服か?」
「私の仕事が減るなら誰でも構いません。
しかし現に住む者をどうやって・・」
「なぁに・・方法はある。
鳥野辺に寺があるじゃろ?あそこの井戸は黄泉に繋がる
どうじゃ? 御主・・やるか?」
爺は言うと確かめる様に篁の顔を見る
『十万億土を超えようと・・媛珠と共に在れるなら・・』
篁は確りと頷いた
「 泣く涙 雨と降らなむ渡り川 水勝りなば帰り来るがに」
(私が)泣いて(流す)涙が雨のように降れば
(三途の)川の水嵩が増し(妹は)あの世に渡れず、帰ってくるだろうに
篁が妹を亡くした時に詠んだ歌だと伝わる
妹は黄泉帰る事無く 篁自ら黄泉へと赴いた
「あら・・篁様が酔い潰れるなど珍しい」
うつ伏せ 寝息を立てている篁に
媛珠は昔と変わらぬ顔で愛おしそうに微笑む
「2升しか飲んでないんですけどね・・
今日出会った者を見て・・・昔の自分を思い出した様ですよ」
「まぁ。野狂と言われた篁様に似た方がいらっしゃったとは・・」
―― 小野氏の祖は考昭天皇の第1子・・あの男は考霊天皇の第3子・・
内に秘めた狂気こそ天皇端系の血統なのか・・
「死神様。今日は泊まって行って下さいな」
「いいえ。近いですし御暇致します」
「そうですか・・・またいらして下さいね?
篁様は死神様がいらっしゃると本当に機嫌が良くて」
「いえ。あまり2人のお邪魔をしてもいけませんし・・
あぁ。そう言えば・・
私と居る時は名前で呼んでやって下さい?拗ねてましたよ」
クスクスと笑いながら死神が言うと
「まぁ・・・拗ねて? 解りました」
媛珠はニッコリ笑いながら受けた
「何時までも仲の良い事で」
死神は秀麗に微笑み それでは御邪魔しました・・そう言うと屋敷を後にした
お疲れ様です。これで篁編終わりです
野狂と呼ばれた篁様は色々とネタが尽きない方ですが
半蔵と意外な所で天皇繋がりでした
と言う事は・・天皇系のネタが尽きないのか?(謎。




