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宿坊あやかし奇憚  作者: あやと
10/106

浦島太郎さま御宿泊です

『むかし~むかし~浦島は~♪助けた亀に拉致られて~♪』


「お嬢・・・連れられて~だ。」


――お嬢・・・未来は今日の宿泊の予約者の名前を見てから、歌いながら準備中だ


その後をイズナが嬉しそうにパタパタと着いて歩く


『どっちでも良いじゃない?』


「良くない・・です」


「未来様~今日来る浦島さんって本物ですか?」


『さ~?着てみないと判らないけど・・って爺の友達らしいから


本人だったら何歳(いくつ)よ?って事になるわね~』


「あの・・あの・・本物だったらサイン貰っていいですか?」


イズナが嬉しそうにピョンピョン跳ねる


面食らったのは未来だ


『・・・へ?浦島太郎って有名人?』


「はい。人でありながら竜宮に行き乙姫様に会うも袖にして


尚且つ不死になったとか・・凄い方じゃないですか!!」


『何が??』


「え・・何が?って・・・・・」


不思議でたまらないって顔で質問する未来に


イズナが当惑した顔を半蔵に向ける


「・・・。」


その視線をうけつつ無視な半蔵は黙々と地鶏に串打ちしている


肩ではイズナがチラッと雌イズナを見て消えた


『半蔵!何が凄いのよ?』


「お嬢は浦島太郎の物語をどう思っているんですか?」


流石に未来に質問されてはしょうがない・・と


しぶしぶ話す半蔵だが目は串から離さない


『どうって・・・開けるなって言われたのに玉手箱を開けた大馬鹿者?』


未来の身も蓋もない意見に半蔵は苦虫を潰した表情になると


「お客様の前でそれは言わないで下さいね」


と釘を刺す


『じゃぁどう凄いのよ~?』


「凄いと言えば・・人の身でありながら竜宮城に行けたって事ですかね・・」


『海の中に行ったのが?』


「はい・・・いいえ・・」


『どっちよ?』


「はい。でもあり、いいえ。でもあるんですが・・・


浦島太郎・・住江(すみえ)の浦嶋子(うらしまこ)だと言われていますが


万葉集・風土記にも取り上げられる日本最古の物語だとされています


日本書紀などは別巻を用意した程なんですが現存はしていません」


串打ちした鶏に塩を振りながら半蔵は説明を始める


『半蔵・・・その話しって難しい?』


「難しくはないと思うんですが・・・」


自分から聞きたがった割りに、面倒な話しには興味を失う未来に


苦笑いしつつも半蔵は話を続けた


「まず竜宮城と言うのが海上の島であるとか、海底にあると言われてますが


この世と彼の世の中間にあるんです


蓬莱山やニナカライとも呼ばれ・・・行きたいと願っても容易には行けません


垂仁天皇の御世に田路間守(たじまもり)が不老不死になる実・・


非時香菓(ときじくのかのこのみ)を捕りに行った時は10年かかったとも言われてますが・・・


橘(たちばな)の実である事と彼が天日矛(あめのひぼこ)の末裔であった事から


行ったのは新羅だったのではないか?とも言われています」


『要するに・・浦島太郎以外は行って帰って来てないって事?』


「はい。ですからイズナが凄いと言ったのでしょう」


『人じゃないのに・・行けないの?』


「蓬莱山は蓬莱に選ばれた者にしか見えません」


『あの世って存在なら死んだら行けるんじゃない?』


「いいえ。仙人・天女の住む島ですから俗界のあの世とは違います」


『ふ~ん・・だから凄いかぁ・・』


「何か?」


『う~ん・・・仙人や天女が凄いから蓬莱山が凄い場所なんでしょ?


行った浦島が凄いのとは違う気が・・・』


未来は口を窄めてう~ん?と考えている


イズナは首をかしげると


「未来様って変わってますね・・・」


と呟いた







お疲れ様です。

短いですが投稿します

次がお客様をお迎えです

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