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「……それは私に教えていいの?」
モズへの報告から一晩明け、いつものようにリアと過ごしている。昨日あったことを話したら、リアが訝しむように言ってきた。
「たぶん」と答える。ジトッとした目で見られた。
「別に言うなとは言われていないし……」
私がそう続けると、リアは腕を組んで首を傾げる。
「大体、何のために私の部屋に入る必要があるのよ」
それは分からないが、リアを不安にさせないように教えられない体にしておく。
「……言えない」
リアがこちらを睨み、子供に注意するように告げる。
「それに私が裏切って、あなたのことアエトスに言うかもしれないわよ」
「それは困る」と私は返す。リアが口にしている時点でその気はないのだろう。ただ、彼女にメリットがないのは事実だ。部屋に入ってしまえば、脱出経路は限られる。リアが叫んで、誰かが来たら終わりだ。
「この組織は直に崩壊する。そのときに君が逃げる手助けをする」
しばらく考えた末、口にする。私が提示できるメリットはこれぐらいだろう。
「それなら協力するわ」
リアは満足そうな笑みを浮かべた。
◇◇◇
部屋に入る前にもっとリアのことを知りたい。次の日にそう言うと、リアが不思議そうな顔をした。
「部屋に入って私に悲鳴を上げられなければ良いのよね? 入ったって言うだけで良いんじゃないかしら?」
「私は嘘が下手なんだ。あくまで自然にそうなったように段階的に進めたい」
リアが少し笑う。
「真面目なのか小賢しいのかよく分からないわね」
今なら聞けそうだ。そう思い、私は以前から気になっていたことについて慎重に口にする。
「リアが貴族から奴隷になったときの話が聞きたい」
リアの顔が少し曇る。それから小さくため息をついた。
「私が貴族だったことまで調べたのね」
モズから新興貴族だったことは聞いている。リアの父が優秀だったらしい。
「お父様が殺されたの。それがきっかけよ」
リアが続ける。
リアの父がいなくなった後、母が領地や商いを全て運営することになったそうだ。
だが、上手くいかなかった。ただでさえ収入は減り、生活水準は下げられない状態だった。そこへ母はストレスで散財を行い、男に貢ぐようになった。
父の死から1年近く経った頃、母はリアを捨て出て行ったようだ。
——莫大な借金だけを残して
リアは売れる物は全て売り払ったが足りなかった。最終的には自分を差し出すことになった。
「奴隷ってオークションにかけられるのよね?」
「うん」
奴隷の購入は一般的にオークションだ。そこでは衣類を身につけず、多数の人間の目にさらされる。私は経験していないので、知識でしかないが。
「私はオークションに行く前にアエトスから直接購入されたわ」
あの男が何を考えているか分からない、リアがそう口にする。アエトスは奴隷の売買も行っている。リアだけ売られていないのは不自然だ。
「そのあとは、ずっとここに閉じ込められてる」
リアが鉄格子の嵌まった窓を見る。アエトスの行動に疑問が残るが、リアが知っていることはもうないだろう。
「ありがとう、話してくれて」
リアがこちらを見て、ふっと微笑んだ。
「仲良くなれたかしら?」
肯定を返そうとして、なぜか言葉に詰まった。私は曖昧に濁したまま、別の話題に切り替えた。




