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3日ぶりに外套を脱いだ。埃と乾いた木の匂いが、まだ肩に残っている。
「お疲れ〜、ねぇどうだった?」
調査内容の報告のため部屋で待機していると、廊下へ通じる窓から気の抜けた声が聞こえた。
「ご依頼の弱みについて、概要は掴めたので報告します」
私は、ここ3日で得た内容をモズに伝える。
マフィアの建物は、1階が酒場、2階が帳場、3階がボスの執務室と私室という構造だった。
弱みになりそうなのは、恐らく3階の私室にいる人物だ。
酒場で聞いた話だと、愛人でも住まわせているのかと思ったら、少し違った。
収穫を得た次の日に、屋根裏に入り込んだ。天井の隙間に目を寄せると、まず金髪が見えた。
肩も腕もまだ薄い。簡素な白い服をまとった女が、寝台に座って足をぶらぶらさせていた。
顔が半分、こちらを向いた。赤い目だった。
その頬に、焼き印があった。私と模様は違うが、奴隷であることは変わりない。
だが、その奴隷の扱いはどこか異様だった。部屋に外側から鍵を掛けられ、窓には鉄格子だ。
そのまま張っていると、部屋の扉が開いた。トレーに飯を載せ、入ってきたのはボス自身だった。
女の前にそれを置き、何も言わずに出ていく。外から錠を下ろす音がした。
その日、部屋に入ってきたのは、ボス一人だけだった。あの酒場でも、3階には入るなと念を押されていた。
普通、奴隷は自分で飯を取りに行く。運ばれてくるなんてことはあり得ない。
「へぇ〜、軟禁されている奴隷か。反抗心でも強いのかな?」
閉じ込める必要などないはずだ。
どこに逃げようとも、頬の焼き印が自由を許さないのだから。
また、彼女の焼き印の模様は、容姿が良い者につけられるものだ。
この模様が付いた奴隷は、侍女や従者になることもあるが、性奉仕をさせられることが多い。
逃げた先で死ぬよりも恐ろしい目にあう可能性だってある。
それは本人が一番分かっているだろうが……
「まだ存在を見つけただけで、反抗心が強いかまでは分かりません」
「そうだね」
モズは短く答え、顔の前に両手を合わせる。
「じゃあ、引き続き潜入よろしく! 五日おきに報告してね」
まだ調べることがあるのだろうか。弱みも拠点も掴んだはずだ。
私の考えを読み取ったようにモズが答える。
「行動を起こす前に、その女がアエトスにとってどれぐらい価値があるのか知りたいんだよね」
アエトスというのは、マフィアのボスだ。
20代前半でこの規模を仕切っているなら、相当なやり手だろう。
モズが潰したいと思うほどに——
私は脱いだばかりの外套に目をやり、慣れない潜入を憂鬱に思いながら、モズの命令に頷いた。




