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ルディガーはその日、学校の図書室にいた。
ふと机の上に影が落ち、後ろから覗かれている気配がする。
「おや。首席殿が図鑑とは珍しい」
「図書室では静かにしろ」
「どういう風の吹き回しだ?」
話を聞いているのかいないのか。
そう言って、勝手にヨナスが向かいの椅子に座る。
いつも軽口ばかりのこの男とは、基礎学校の頃からの付き合いだ。
友人が多く、生真面目で首席とあって取っ付きづらいルディガーと周囲との橋渡しをしてくれている。
多分に助けられてきた自覚があるだけに、ルディガーもあまり邪険にはできずにいるのだった。
「宝石を調べているんだ」
「ふーん? 課題か?」
「そうだといえば、そうなんだが」
「うん?」
早く話せと言わんばかりに、好奇の色に満ちた瞳が続きを催促する。
ルディガーは短い葛藤の末、正直に白状することにした。
「婚約者が。自分の瞳の色の宝石を見つけてこいって、この間の休みに」
「ええっ!?」
「わっ馬鹿! 静かにしろ!」
大きな声を出したせいで、揃って司書に叱られてしまった。
今度こそ静かな声で、顔を寄せるようにして話す。
「君、熱でもあるのか?」
「ない」
「じゃあ、今度の婚約者殿はそんなに可愛いのか?」
「そんなんじゃない。ただ」
「ただ?」
ルディガーが瞳を伏せる。
彼はどちらかといえば常に胸を張るように姿勢よくしている。
自分から視線を外したり、まして迷うような素振りはほとんど見せない。
だから、こんな表情は初めて見た。
「婚約者とは、そういうことをして交流するものなんだと。そう教わったんだ。くだらないけど、でも必要なことなんだ」
ヨナスは、彼のこういうところが好きだった。
基礎学校のころから優秀で頭が良く、周りの子供たちに比べてかなり大人びていた。
はっきり言って、誰がどう見てもルディガーは昔から馬鹿が嫌いだった。
だから周囲とすれ違ったり衝突したりは日常茶飯事。
誰も仲介しなければ、早いうちに孤立していたことだろう。
だがこうして素直で可愛いところがあるので、ヨナスはルディガーを放っておけないのだ。
「君ね、そういうのをくだらないって言うなよ」
「あ、うん。そうか。そういうのも怒られるんだ」
「そりゃそうだよ。でもそうか。今度の婚約者は君に教えてくれるんだな」
「ん?」
「いや、良いんだ。彼女に似合う宝石が見つかると良いな」
うん、とルディガーは頷く。
いつになく楽しそうじゃないか。
ヨナスは親友の変化を心から歓迎した。




