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今なら君にできること  作者: マスターオブあんかけうどん


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9

ルディガーはその日、学校の図書室にいた。

ふと机の上に影が落ち、後ろから覗かれている気配がする。


「おや。首席殿が図鑑とは珍しい」

「図書室では静かにしろ」

「どういう風の吹き回しだ?」


話を聞いているのかいないのか。

そう言って、勝手にヨナスが向かいの椅子に座る。


いつも軽口ばかりのこの男とは、基礎学校の頃からの付き合いだ。

友人が多く、生真面目で首席とあって取っ付きづらいルディガーと周囲との橋渡しをしてくれている。

多分に助けられてきた自覚があるだけに、ルディガーもあまり邪険にはできずにいるのだった。


「宝石を調べているんだ」

「ふーん? 課題か?」

「そうだといえば、そうなんだが」

「うん?」


早く話せと言わんばかりに、好奇の色に満ちた瞳が続きを催促する。

ルディガーは短い葛藤の末、正直に白状することにした。


「婚約者が。自分の瞳の色の宝石を見つけてこいって、この間の休みに」

「ええっ!?」

「わっ馬鹿! 静かにしろ!」


大きな声を出したせいで、揃って司書に叱られてしまった。

今度こそ静かな声で、顔を寄せるようにして話す。


「君、熱でもあるのか?」

「ない」

「じゃあ、今度の婚約者殿はそんなに可愛いのか?」

「そんなんじゃない。ただ」

「ただ?」


ルディガーが瞳を伏せる。

彼はどちらかといえば常に胸を張るように姿勢よくしている。

自分から視線を外したり、まして迷うような素振りはほとんど見せない。


だから、こんな表情は初めて見た。


「婚約者とは、そういうことをして交流するものなんだと。そう教わったんだ。くだらないけど、でも必要なことなんだ」


ヨナスは、彼のこういうところが好きだった。

基礎学校のころから優秀で頭が良く、周りの子供たちに比べてかなり大人びていた。

はっきり言って、誰がどう見てもルディガーは昔から馬鹿が嫌いだった。

だから周囲とすれ違ったり衝突したりは日常茶飯事。

誰も仲介しなければ、早いうちに孤立していたことだろう。


だがこうして素直で可愛いところがあるので、ヨナスはルディガーを放っておけないのだ。


「君ね、そういうのをくだらないって言うなよ」

「あ、うん。そうか。そういうのも怒られるんだ」

「そりゃそうだよ。でもそうか。今度の婚約者は君に教えてくれるんだな」

「ん?」

「いや、良いんだ。彼女に似合う宝石が見つかると良いな」


うん、とルディガーは頷く。

いつになく楽しそうじゃないか。

ヨナスは親友の変化を心から歓迎した。

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