10
次の春。
ルディガーはエルシャの誕生日にアクアマリンのネックレスを贈った。
どんなものが良いのか分からず母に相談したところ、あまり華美でなく、お茶会に着けていける程度が年相応だと言われた。
そうは言ってもよく分からないので、最終的に母が挙げた候補の中から、一番エルシャに似合うと思ったものを選んだ。
間も無く品物が届いたのだろう。
珍しくエルシャからの手紙がきた。
贈り物が届いてどんなに驚いたか。
とても嬉しかったこと。
すぐに着けて同室の友人に自慢したこと、そして羨ましがられたこと。
箱にかけてあったリボンは髪飾りにしていること。
少し癖のある字は常より更に踊っていて、彼女の興奮が伝わってくる。
くすり、と笑みがこぼれた。
ベッドの上で顔を赤くしながら跳ねるところが目に浮かぶようだ。
そして迎えた夏の休みに、エルシャはネックレスを着けて現れた。
華奢な鎖は彼女の細い首筋によく似合っている。
エルシャはルディガーの姿を認めると、照れたように少し下を見たあと、意を決したように胸を張った。
なるほど、とうとうルディガーは婚約者の意図を察することができるようになったらしい。
「似合うよ。とても」
「あのね。あなたには私の瞳がこう見えるんだって思ったら、なんていうか、想像よりずっと嬉しかったの。本当にありがとう」
ルディガーの心は達成感でいっぱいになった。
同時に、少し胸が痛んだ。
かつての自分は婚約者のために宝石を調べたことなどなかった。
ましてネックレスを選んだことなど、一度も。
思えば今エルシャは十七歳。
ルディガーと婚約した頃のアルマはこれくらいの年頃だった。
今になって思えば、これくらい婚約者からの贈り物を楽しみにしていてもおかしくはなかった。
あるいは、心のうちでは夢を見ていたのかもしれない。
いつかはこの年下の婚約者も成長し、くすぐったい会話をする日が来るのだと。
そう期待していたのだとしたら。
そんな彼女に、自分は何をしてあげられただろう。
以前エルシャに言われた言葉が今になって突き刺さる。
そうだ。その通りだった。
ルディガーはアルマに、何もしてやらなかったのだ。




