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「母上」
「どうしたの?」
「一つお聞きしたいことが」
サンルームで本を読んでいた母は、栞を挟み、話を聞く体制に入った。
「どうしたの? そんなに改まって」
「今更何をと思われるかもしれません。ですが、今だから知りたいのです」
息子のいつになく真剣な顔を見て、母の顔から貴族夫人としての顔へと変わる。
「いいでしょう。言ってごらんなさい」
「アルマに贈った、イヤリングとネックレスのことです」
母は怪訝な視線をルディガーに向け、先を促す。
「母上に選んでいただいたので、俺は結局何が贈られたのか、いまだに知りません。一体、どんなものだったのかお聞きしたいのです」
室内には沈黙が広がり、時計の針の音だけが鳴る。
母は苦虫を噛んだような顔をし、その額には深い溝が刻まれている。
「本当に、今更ね」
「申し訳ありません」
「……アルマは学校を卒業し、いよいよ貴族夫人となる頃でした。ですから若い娘が着けるようなものではなく、今後どこに着けて行っても恥ずかしくないものを選びました」
「やはり、トパーズですか?」
「いいえ」
胸の奥が冷えていく。
続きを聞くのが恐ろしい。
それでも、真実から目を逸らしたままではいられなかった。
「あの子にふさわしく、高貴で格式の高い、イエローダイヤモンドでした」
あの時、自分は当然トパーズが贈られたのだと疑ってもいなかった。
そしてそれを前提に話をしていた。
ならば間違いなくアルマは悟ったはずだ。
己に相応しいと贈られたそれは婚約者が選んだものではなかったことを。
俺は、なんてことを。
ルディガーは今、痛いほど理解した。
秒針の音が、耳の奥に鳴り響いている。




