12
ルディガーはしばらく立ち直れなかった。
心配したエルシャは何度も声をかけてくれたが、とても真実を話す気にはなれなかった。
いっそ白状して、叱られて罵られた方が楽になれることだろう。
だからこそルディガーはそうしなかった。
学校に戻ってからも、ルディガーはただ規律に身を任せるだけだった。
成績を落とすわけにはいかないからと、学業だけはきちんとこなした。
むしろ勉強しているときだけが安息の時間だった。
この痛みと苦しみは、自身の罪に対する罰だ。
本来ならアルマが自分に与えるべきものだったのに、彼女はそうしなかった。
最後まで全てを自分のせいにして、抱えたまま身を引いてしまった。
そんなことにも気づかずにのうのうと日々を過ごし、新しい婚約者に浮かれ。
ルディガーはとても自分を許せそうになかった。
そんな日々を送っていれば、先に身体が悲鳴を挙げた。
すっかり痩せたところを寮母に見咎められ、教師の判断で強制的に家に返された。
母は全てを察したように「養生しなさい」とだけ告げ、それ以上何も聞かなかった。
しかしそれも数日で見かねたのか、父に呼び出されてしまった。
いつかもこうだったなと自嘲しながら、ルディガーは書斎に向かう。
「お前、何を気に病んでいる?」
「何も」
「本当に何もないなら、なぜお前はここにいる」
「……」
そうは言っても、自分でもどうしたらいいのか分からない。
今更アルマにできることはないし、かといって、全てを忘れることなどできはしない。
だが確かに、周囲に心配や不安を撒き散らすことは本意ではない。
父はしばらくの間、言葉の出てこない息子を黙って見つめた。
「今更になって後悔しているのか」
「え?」
「母にアルマのことを聞いたそうだな。だが今になって後悔したところで、何も変わらんぞ」
「それは、そうなのですが」
「所詮お前は慢心に満ちた子供だったのだ。それも、彼女ほどの娘であっても手に余るほどに」
悔しい。
恥ずかしい。
申し訳ない。
昔から、大抵のことはできた。
むしろ周りはなぜこんなこともできないのだろうとすら思っていた。
だから彼はここに至るまで、こんなにも自分の無力を自覚したことが無かったのだ。
「婚約の解消から二年。間も無く三年になる」
「はい」
「そろそろ、彼女も会っても構わないと言うかもしれない」
「——え」
「打診してみよう。お前が、やっと気づいたと。その贖罪をしたいのだと」
「……そのようなこと、許されますか」
「お前がしたいから、やる。その傲慢さでもって、始末をつけてくるがいい」
ルディガーは拳に力を込め、頭を下げた。




