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それからの日々に大きな変化は無かった。
本当にエルシャは手紙を送って来なかったし、休みに顔を合わせることもあれば、全く会わないときもあった。
もし婚約者の同伴が必要な茶会や集まりがあれば、事前に電報を寄越した。
ルディガーは電報の存在自体は知っていたが、それを使ってまで誰かに連絡をしようとしたことは無かった。
エルシャからすれば、どうせ返事をよこさない婚約者のためにいちいち筆をとるのも面倒ということだろう。
そもそも手紙より電報が、電報より電話が速い。
無駄のない、大変効率的な連絡方法のはずだ。
それでも無機質な電報を読むにつけ、ルディガーの頭にはアルマの丁寧な筆致が浮かんでいた。
そうして次の冬が来た。
長い休みに入ったので生家に戻ると、やはりエルシャはいた。
「帰るなら帰るって連絡しなさいよ」
「どうせ休みに入れば帰るし、お前だって来てるだろうと思ったから」
「そうじゃなかったらどうするの?」
「そうじゃなかったな、と思うだろうな」
エルシャは心底軽蔑したような目線を向け、当て擦るように額に手を置いた。
「あのね。例えばあなたが乗った列車が事故にあったとするでしょう」
「は?」
「いいから黙って聞いて。で、あなたは事前に帰るかどうかを誰にも連絡していないし、ましてどの列車に乗るかも誰にも伝えていないわけでしょ」
「まぁ、そうだな」
「じゃあ、あなたがその事故で死んでいても誰も気づかないでしょうね」
大袈裟な、と思った。
だが確かに、そういう問題を孕む行動であるという理解はできた。
「一理あるな」
「一理どころじゃないわ。私がいつも連絡してと言ってるのは、そういうことなのよ」
「分かった、ごめん。次からそうする」
そういう理由なのであれば、毎回口うるさく言うのも自分を心配してのことだと理解できた。
静かになったことを不思議に思い目線を向けると、エルシャは口を開けて驚いたようにルディガーを見ていた。
「なんだよその顔」
「ル、ルディガーが謝ったわ」
「確かに心配をかける行動だったと思ったから」
エルシャは瞬きを一つすると、にっこりと笑った。
そして少しだけ背伸びをしてルディガーの頭を撫でた。
「あなたって素直なところがあるのね」
「やめろよ」
「そうなのね。あなたには理由が必要なんだわ」
「なんだよ、それ」
合点がいったという様子で、エルシャはどこかへ行ってしまった。
「なんなんだよ」
髪をぐしゃぐしゃにされたルディガーは、ぶつぶつとこぼしながらトランクを自室へ運んだ。




