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ルディガーは父に呼び出され、週末に生家に戻ることになった。
婚約の解消以来、いよいよ義務的な報告だけになっていたので少々の気まずさがあった。
だが着いて早々、そんな憂鬱な気持ちを吹き飛ばすほどのことが告げられた。
「お前の新しい婚約が決まった」
「もうですか? まだ一年も経っていませんよ」
「お前ももう十七なのだから、早く決めておくに越したことはない」
「それはそうかもしれませんが」
「安心しろ。相手はお前もよく知る相手だから案ずることはない」
「え?」
「エルシャだよ」
「はぁ!?」
よりにもよって、エルシャ。
あのふてぶてしく、気が強く、口から生まれたようによく喋る姦しい幼馴染。
「エ、エルシャというのは、『あの』エルシャですか?」
「お前もよく知る『あの』エルシャだが?」
ルディガーは頭を抱えた。
お互い貴族なのだからありえないことではない。
だが、よりによってアレとは。
「ち、父上。アルマの回復を待つことは叶わないのですか」
「お前にそんな殊勝な心があるとは知らなかったな。残念だが、彼女は遠方で静養に入っているそうだ」
「そんなにひどいのですか」
「お前にはもう関係のないことだ。彼女のことは忘れなさい」
どうやらアルマは重症らしい。
最後に会ったときには、特に身体が悪そうな様子は無かったはずなのに。
やはり心の病というものは目に見えないものらしい。
「次の週末にエルシャとご両親がこちらへいらっしゃるから、お前も帰ってきなさい」
「そんなに頻繁に外出許可は出ません」
「学校へは私が連絡を入れる。ついでに鉄道の切符も手配してやろう」
「そ、そこまでのことでしょうか? 相手はエルシャなのでしょう?」
父の視線が鋭くなる。
責められるいわれはないはずなのに、ルディガーは一瞬息を止めた。
「どうも自覚が足らぬようだが、婚約というのは家と家との契約だ。どんな事情があるにせよ、お前は一度その契約を損なっている」
「私の問題ではありません」
「本当に? お前は何も悪くはなかったのか?」
「どういう意味ですか?」
ルディガーには全く身に覚えがない。
婚約者として、十分義務は果たしていたはずだ。
多少筆無精だったところは認めるが、アルマとてそう多くの手紙をよこしていたわけではない。
そもそもお互い学生の身分で、学業より優先されることなど無かったはずだ。
父はルディガーの様子を見て深くため息をつき、手で追い払う仕草を見せた。
どうやら話は終わりらしい。
大人しく退室すると、ちょうど父に用事があるらしい母と鉢合わせた。
冷たい視線を向けられた挙句、あごでどかされる。
父どころか母にまでこの扱い。
さしものルディガーも傷ついた。
一体、自分の身の回りで何が起きているというのか。
彼には何も分からなかった。




