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ある夏。
アルマと久しぶりに予定を合わせ、街のカフェへと今流行の珈琲とやらを飲みに来た。
「ルディガー様、もうすぐお誕生日ですね」
「そういえばそうですね」
「今年も何か贈り物をしたいのです。ご希望はおありですか?」
「そうだな……あぁ、では、皮の手袋をお願いできますか」
「皮の?」
「そうです。馬術の授業で使うのですが、今のものは小さくて」
「まぁ。すっかり背も大きくなられましたものね」
気づけばルディガーは十六歳になった。
アルマの身長をすっかり抜かし、同級生の中でも高い方になった。
「では少し、手の大きさを拝見しても?」
「どうぞ」
そういってテーブルの上に手を乗せると、アルマがそっと手を触れてきた。
細く、長い指が手のひらの大きさを確かめている。
ほっそりとしたそれは、自分の手の内にすっぽりと収まってしまうほど小さく白い。
ルディガーは何か座りが悪いような、居心地の悪さを覚えた。
「ありがとうございます。寮へお送りしてよろしいですか?」
「はい」
「先日、私の誕生日にも素敵な贈り物をいただいて。きっとお礼をしなくてはと思っていたのです」
そう言って微笑む婚約者に、ルディガーは安堵した。
アルマの誕生日を把握してはいるのだが、何しろ普段女性との関わりはなく、何を贈ればいいやら皆目見当もつかなかった。
そこで毎年、母に適当なものを選んで贈ってもらうよう頼んでいたのだ。
どうやらそれは間違いではなかったらしい。
今年はアルマも学校を卒業する年ということで、その祝いも兼ねてイヤリングとネックレスを合わせて贈ると言っていた気がする。
「気に入ったならなによりです」
「とても素敵でした。私の瞳の色と同じ、綺麗な石で」
「そうですか。トパーズなら式典にもつけられそうですね」
瞬間、間が生まれた。
違和感を覚えてアルマの方をみやると、どこか遠くを見るような瞳で宙を見ている。
「……ええ、そうですね。本当に……そう、本当に美しい石でしたわ」
それほど美しい石だったとは、母も随分奮発したようだ。
恐らく彼女の卒業時には祝賀会でエスコートをすることになる。
きっとその時に、どんなものを贈ったのかを見られるだろうと考えていた。
だが、そのすぐ後に婚約解消の話が上がった。
結局どんなものが贈られていたのか、ルディガーは知らないままになっている。




