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「ルディガー。こちらがアルマ嬢だ。ご挨拶しなさい」
父に背を押され、ルディガーは一歩前に出た。
目の前には同じく父親に連れられた少女がおり、目が合うと淑女の礼をとった。
「ルディガーです。この度の婚約を嬉しく思っております」
「アルマと申します。よき婚約者となるよう、努めてまいります」
華やかさに欠ける、と思った。
ただ黒い髪からは知性を感じるし、変な癖がないところも良い。
鼻も口も小ぶりで品がある。
目元が少し垂れていて弱々しさがあるが、女ならそれも良いだろう。
背も今は自分より少し高いが、こちらはまだまだ伸び盛り。
すぐに縦も横も追い越すだろう。
ひとまず婚約者の評価を終え、ルディガーは満足した。
年上であろうが、これなら良いだろう。
「あなたより年下ではありますが、年齢以上の努力はしているつもりです」
「はい。寄宿学校でも大変ご優秀と伺っております」
ルディガーは学業が得意だった。
基礎学校で最優秀生徒に選ばれ、入学試験も首席で寄宿学校へと進学した。
入学後も最も優秀な組に配属され、自分と能力の近い同級生たちと切磋琢磨できる環境に身を置いている。
「もはや領地経営だ税収だという時代ではありません。私はこのまま大学まで進み、経済を学ぶつもりです」
「高いお志をお持ちなのですね。及ばずながら、お力添えができれば」
思わぬことに、ルディガーはひょいと片眉を上げた。
「あなたに何ができるのです?」
「……左様ですね。出過ぎたことを申しました。せめてお邪魔にならぬよう、心得ますわ」
どうやら我が婚約者殿はよく弁えておいでのようだ。
さすがに三つの歳の差は伊達ではないらしい。
「そうして頂けると助かります。あなたに苦労はさせません」
アルマは小さく頷いた。
それまで横で様子を窺っていた彼女の父親は、快活に笑った。
「ははは。頼り甲斐のある婚約者殿を得て、娘は幸せ者です」
「まだ生意気な盛りで申し訳ありません」
「なんの。男の子はこうでなくては」
父親同士の会話は弾むが、当人同士はそれ以降特に目立った会話はなかった。
その間、アルマの口角はずっと上がり続けていた。




