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『転生したら女王蟻だったので最強コロニーを作ります』  作者: 逆位相


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第七話 『うちの兵隊アリが強い!』

 その日、巣の空気が少し違っていた。


 働きアリたちが、妙にそわそわしている。


 幼虫室の周囲を忙しなく動き回り、せっせと栄養を運び込んでいた。


「……いよいよ?」


 真琴は巣の奥を覗き込む。


 そこには、他の幼虫より遥かに大きな繭があった。


 黒っぽい外殻。


 発達した顎の輪郭。


 どう見ても普通の働きアリではない。


 そして。


 ぴしっ。


 小さな亀裂が入った。


「おっ」


 働きアリたちが一斉に集まる。


 真琴も思わず前のめりになった。


 ぱき、ぱきぱきっ。


 繭が割れる。


 その中から現れたのは――。


「……でか」


 第一印象、それだった。


 働きアリより二回りほど大きい。


 分厚い外骨格。


 鋭く発達した巨大な顎。


 脚も太い。


 見るからに戦闘用である。


「これが兵隊アリ……」


 新しく生まれた兵隊アリは、ゆっくりと身体を起こした。


 そして。


 真っ先に真琴の方へ向いた。


「え」


 ずし、ずし、と近付いてくる。


 近くで見るとさらに威圧感がある。


 怖い。


 ちょっと怖い。


「いや待って、初対面なんだからもう少しこう……」


 兵隊アリは真琴の前まで来ると、静かに触角を下げた。


 忠誠。


 そんな感覚が直接伝わってくる。


「……おお」


 ちょっと感動した。


 自分のコロニー初の兵隊アリ。


 しかも明確に、自分を女王として認識している。


 その時。


 周囲の働きアリたちが、一斉に触角を揺らした。


 歓迎。


 誕生祝い。


「えっ、アリってこんな空気あるの?」


 もっと機械的な生物だと思っていた。


 だが実際には、群れ全体に一体感がある。


「……なんかちょっとかわいいな」


 真琴は兵隊アリを見上げる。


 すると兵隊アリが、妙に誇らしげに胸を張った。


「絶対分かってるよね?」


 気のせいじゃない気がする。


 その時だった。


 巣の入口方向から、警戒フェロモンが走る。


「っ!」


 真琴の触角が震える。


 敵。


 また来た。


「タイミング悪すぎない!?」


 だが今回は違う。


 自分たちにも戦力がある。


 真琴は急いで入口側へ向かった。


 通路の先。


 そこには、敵兵隊アリが三匹侵入してきていた。


 前回より少数。


 おそらく偵察隊。


 だが強い。


 働きアリだけでは止めきれない。


「……やるしかないか」


 真琴は後ろを振り返る。


 初の兵隊アリ。


 まだ生まれたばかり。


 それでも。


「お願い」


 フェロモンを送る。


 迎撃。


 防衛。


 敵排除。


 すると兵隊アリは、一切迷わず前へ出た。


 ずしり、と。


 重い脚音が通路へ響く。


「おお……頼もしい」


 敵兵隊アリたちも動きを止めた。


 明らかに警戒している。


 そして次の瞬間。


 激突。


 ガギィッ!! と硬い音が響いた。


「うわっ!?」


 顎と顎が噛み合う。


 敵兵隊アリが押し込もうとする。


 だが。


 こちらの兵隊アリは、一歩も下がらなかった。


「強っ」


 むしろ押し返している。


 筋力が違う。


 蜘蛛の栄養を大量投入した影響か、明らかに高性能だった。


 さらに。


 がきんっ!


 こちらの兵隊アリが、敵の脚へ噛み付いた。


 敵兵隊アリの身体が傾く。


「そこ!」


 真琴のフェロモンに反応し、働きアリたちが一斉に群がった。


 脚。

 関節。

 触角。


 柔らかい部分へ集中攻撃。


 完全な連携だった。


 敵兵隊アリが崩れる。


「いける!」


 その瞬間。


 自軍兵隊アリが、敵の頭部へ巨大な顎を叩き込んだ。


 めきっ。


 鈍い音。


 敵兵隊アリが動かなくなる。


「うわぁ……」


 強い。


 めちゃくちゃ強い。


 しかも。


 そのまま二匹目へ突撃していく。


「頼もしすぎるんだけど!?」


 完全に主力だった。


 働きアリたちも士気が上がっている。


 群れ全体の空気が違う。


 そして数分後。


 敵偵察隊は完全に壊滅した。


「……勝った」


 真琴はその場へ座り込む。


 疲れた。


 精神的に。


 だが。


 働きアリたちはすでに敵兵隊アリの解体を始めていた。


「切り替え早いなぁ……」


 すると初兵隊アリが、真琴の前へやってくる。


 そして。


 敵兵隊アリの大顎を、どさりと置いた。


「……戦利品?」


 兵隊アリは誇らしげに触角を揺らした。


「えっ、かわいい」


 見た目は完全に凶悪なのに。


 真琴は思わず笑ってしまう。


「よし……君、今日からエースね」


 名前を付けそうになって、ギリギリ踏み止まった。


 危ない。


 情が湧く。


 でも。


 その時だった。


 遠くから、強烈なフェロモンが流れ込んできた。


「……っ」


 敵女王。


 しかも前より明確な敵意。


 そして。


 怒り。


「え、もしかして本気でキレてる?」


 真琴の触角が震える。


 敵コロニーが、自分たちを“脅威”として認識し始めていた。

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