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『転生したら女王蟻だったので最強コロニーを作ります』  作者: 逆位相


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第六話 『アリの戦争、陰湿すぎる!』

「はぁっ……はぁっ……!」


 真琴は全力で地下通路を駆けていた。


 背後から迫る無数の脚音。


 敵兵隊アリたちが、恐ろしい速度で追ってくる。


「偵察って普通、もっと静かに終わるものでしょ!?」


 完全に大失敗だった。


 だが。


 働きアリたちは迷いなく真琴の周囲を固めている。


 護衛。


 撤退支援。


 その動きを見ていると、少しだけ胸が熱くなる。


「いや感動してる場合じゃない!」


 真琴は通路の分岐へ飛び込んだ。


 その瞬間。


 後方で土煙が上がる。


 働きアリたちが、通路の一部を崩落させたのだ。


「えっ」


 どごぉっ、と鈍い音が響く。


 崩れた土砂が追撃部隊を塞ぐ。


 敵兵隊アリたちが混乱している気配が伝わってきた。


「君たちそんなことできるの!?」


 すると近くの働きアリが、少し得意げに触角を揺らした。


「……有能すぎない?」


 だが時間稼ぎにしかならない。


 敵コロニーは圧倒的格上だ。


 まともに戦えば負ける。


 真琴は自分の巣へ戻ると、すぐに状況整理を始めた。


「まず戦力差が終わってる」


 働きアリ、数匹。


 敵兵隊アリ、大量。


 比較にもならない。


「真正面から戦ったら普通に全滅だよねこれ……」


 巣の中では、働きアリたちが蜘蛛の肉を運搬している。


 戦後処理。


 資源化。


 切り替えが早い。


 いや、早すぎる。


「ほんと合理的な生物だなぁ……」


 真琴は触角を揺らしながら考える。


 アリ同士の戦争。


 それは人間みたいな名誉ある戦いではない。


 もっと陰湿で。


 もっと徹底的だ。


「……補給線」


 ぽつりと呟く。


 敵コロニーは大きい。


 つまり大量の食料が必要だ。


 なら。


「運搬中を狙えばいい?」


 待ち伏せ。


 奇襲。


 資源略奪。


 敵を正面から削るのではなく、“機能”を破壊する。


 その発想が自然と浮かぶ。


「……うわぁ」


 自分で引いた。


 だが合理的ではある。


 さらに。


「幼虫室を潰せば増援を止められる……」


 怖い。


 思考が完全にコロニー戦争。


 研究者時代なら観察対象だったはずなのに。


「これが女王蟻の本能……?」


 真琴は自分の触角を見つめる。


 人間だった頃の倫理観が、少しずつ薄れていく感覚があった。


 代わりに強くなるのは。


 群れを生かすという思考。


「……でも」


 真琴は巣の奥を見る。


 卵。


 幼虫。


 働きアリたち。


 守りたい。


 その感情だけは、本物だった。


 その時。


 巣の奥でざわめきが起きた。


「?」


 働きアリたちが一か所へ集まっている。


 真琴も近付いてみる。


 すると。


「……え?」


 幼虫の一匹が、妙に大きかった。


 他の個体より一回り以上大きい。


 しかも外殻の色が濃い。


 働きアリたちが丁寧に栄養を与えている。


「これって……」


 知っている。


 アリ社会では、与える栄養で階級が変化する種が存在する。


 つまり。


「兵隊アリ化してる?」


 真琴の触角が震える。


 蜘蛛の栄養。


 大量タンパク質。


 それによって、幼虫の成長先が変わったのだ。


「……進化、してる」


 その瞬間。


 どくん、と。


 真琴の身体の奥が脈打った。


 高揚感。


 興奮。


 群れが強くなる。


 その感覚が、たまらなく嬉しい。


「いや待って、これ絶対危ない方向にハマってる……!」


 だが止まらない。


 もっと働きアリを増やしたい。


 もっと兵隊が欲しい。


 もっと巣を広げたい。


 もっと。


 もっと。


 その時。


 生まれかけの兵隊幼虫が、ゆっくりと動いた。


 黒く硬質化し始めた顎。


 発達する外骨格。


 明らかに働きアリとは違う。


「……うわ」


 真琴は思わず息を呑む。


 強い。


 まだ幼虫なのに分かる。


 これは戦うための個体だ。


 そして真琴は、無意識に微笑んでいた。


「……これなら、戦えるかも」


 その言葉を口にした瞬間。


 遠くの通路から、再び敵フェロモンが流れ込んできた。


 別コロニー。


 今度は前回より多い。


 どうやら敵も、本格的にこちらを潰す気らしい。


 だが。


 真琴はもう、最初の頃ほど怯えてはいなかった。


 なぜなら。


 自分の群れもまた、進化を始めていたからだ。

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