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『転生したら女王蟻だったので最強コロニーを作ります』  作者: 逆位相


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第八話 『兵糧攻めとか陰湿すぎません?』

「……あれ?」


 最初に異変へ気付いたのは、三日後だった。


 採餌へ向かった働きアリたちの帰還数が少ない。


「遅いなぁ……」


 真琴は巣の入口付近で触角を揺らす。


 すると帰還した働きアリの一匹が、弱々しく接触してきた。


 情報が流れ込む。


 敵。


 待ち伏せ。


 襲撃。


「……やっぱり」


 真琴は顔をしかめた。


 敵コロニーが、採餌班を狙っている。


 つまり。


「兵糧攻め……!」


 しかもかなり徹底していた。


 外へ出た働きアリが戻らない。


 帰ってきても負傷している。


 餌の回収量も激減。


 巣の空気が徐々に重くなっていく。


「いや陰湿すぎるでしょアリ社会!」


 でも合理的だ。


 真正面から突っ込むより、安全かつ確実。


 食料が尽きれば、コロニーは勝手に弱る。


「ぐぬぬ……」


 真琴は悔しそうに触角を揺らした。


 敵女王、かなり頭がいい。


 というか普通に戦争慣れしている。


 こちらみたいな新興コロニーとは経験値が違う。


 巣の奥では、幼虫たちが小さく蠢いていた。


 栄養不足。


 働きアリたちが懸命に世話をしているが、明らかに余裕がない。


「まずいなぁ……」


 真琴は食料庫を見る。


 蜘蛛の残骸も、もうかなり減っている。


 兵隊アリの維持には大量栄養が必要だ。


 このままでは先にこちらが干上がる。


 その時。


 エース兵隊アリが戻ってきた。


 大顎には、小さな敵働きアリの死骸が挟まっている。


「……狩ってきたの?」


 誇らしげに触角が揺れる。


「いや強いな君」


 だが一匹ずつ狩っていても追いつかない。


 必要なのは、もっと根本的な解決。


「補給線……」


 真琴は考える。


 敵は大規模コロニー。


 なら当然、大量の物資輸送をしている。


 そこを叩ければ。


「……ん?」


 その瞬間。


 一匹の働きアリが、慌てた様子で戻ってきた。


 触角接触。


 情報共有。


 真琴の思考が止まる。


「……幼虫?」


 輸送部隊。


 敵コロニーが、別巣へ幼虫を運搬しているらしい。


「なんでそんなことを?」


 だがすぐ理解した。


 分巣。


 コロニー拡張。


 あるいは予備巣。


 巨大コロニーでは普通にありえる。


 そして。


 護衛は少数。


「……あ」


 真琴の触角がぴくりと震えた。


 幼虫。


 大量栄養。


 未来戦力。


 そして。


 奪える。


「……いや待って」


 真琴はぶんぶんと頭を振った。


「今、何考えた私?」


 敵幼虫を奪う。


 それって。


 人間で言えばかなり最低では?


「いやでもアリ社会だと普通だし……」


 普通とは。


 倫理観が危うい。


 だが。


 巣の幼虫たちを見る。


 空腹。


 栄養不足。


 このままでは死ぬ。


「……」


 真琴は長く沈黙した。


 そして。


「生き残る」


 小さく呟く。


 その瞬間。


 女王としてのフェロモンが、巣全体へ広がった。


 空気が変わる。


 働きアリたちが一斉に反応した。


 出撃準備。


「……輸送部隊を襲う」


 言葉にした瞬間、自分でも少し怖かった。


 完全に侵略側の思考。


 だが。


 もう綺麗事では生き残れない。


「作戦開始」


 真琴は巣の地図を頭へ浮かべる。


 敵輸送ルート。


 狭い通路。


 待ち伏せ地点。


 そして。


 兵隊アリ。


 エース兵隊アリが、静かに巨大な顎を鳴らした。


 まるで。


 それを待っていたかのように。


 数時間後。


 真琴たちは、地下通路の物陰へ潜んでいた。


 静かだ。


 湿った空気だけが流れている。


 働きアリたちも完全に息を潜めていた。


「ほんとスパイ作戦みたい……」


 すると。


 遠くから脚音が聞こえ始める。


 敵輸送部隊。


 真琴の触角が震えた。


 近い。


 近付いてくる。


 そして。


 通路の奥から現れたのは――。


「……多っ」


 大量の幼虫を運ぶ敵働きアリたち。


 その周囲を護衛兵隊アリが囲んでいる。


 だが。


 真琴が本当に息を呑んだのは、その後ろだった。


「え……?」


 さらに後方。


 通路の奥。


 そこにいたのは。


 これまで見たどの兵隊アリより巨大な個体。


 異様に発達した外骨格。


 鋭い大顎。


 そして。


 圧倒的威圧感。


「……嘘でしょ」


 真琴の触角が硬直する。


 あれは。


 明らかに普通の兵隊アリじゃなかった。

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