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『転生したら女王蟻だったので最強コロニーを作ります』  作者: 逆位相


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第十二話 『私が死んだら終わるらしい』

 巨大兵が、ゆっくりと近付いてくる。


 ずし。


 ずし。


 そのたびに地下が震えた。


「……っ」


 真琴は後退れない。


 後ろには幼虫室。


 卵。


 働きアリたち。


 全部ある。


 つまり。


「ここ抜かれたら終わりじゃん……!」


 本能が叫んでいた。


 逃げろ、と。


 だが同時に、別の感覚も強くなる。


 女王。


 群れの中心。


 ここで自分が逃げれば、コロニー全体が崩れる。


「……私が死んだら終わるらしい」


 その言葉を口にした瞬間。


 妙に実感が湧いた。


 人間だった頃とは違う。


 今の自分は、“個人”ではない。


 コロニーそのものだ。


 巨大兵が顎を開く。


 黒鉄みたいな大顎。


 一撃でも受ければ終わる。


「む、無理でしょあんなの!」


 真琴の触角が震える。


 だが。


 周囲の働きアリたちは逃げなかった。


 女王を囲むように配置される。


 防壁。


 盾。


 その姿を見た瞬間。


 どくん、と。


 再び身体の奥が熱く脈打った。


「……え?」


 フェロモン。


 大量の女王フェロモンが溢れ出す。


 今までより濃い。


 強い。


 そして。


 群れ全体へ一気に広がっていく。


「これ……!」


 働きアリたちの動きが変わった。


 速い。


 迷いがない。


 さらに離れた場所で戦っていたエース兵隊アリも、ぴくりと反応する。


 触角が真琴を向く。


 その瞬間。


 真琴の頭へ、群れ全体の位置情報みたいなものが流れ込んできた。


「うわっ!?」


 通路構造。


 敵位置。


 味方配置。


 全部分かる。


 まるで巣全体が、自分の身体になったみたいだった。


「これが……女王の力?」


 理解した。


 フェロモンが群れを繋いでいる。


 恐怖。

 統率。

 命令。


 全部。


 そして今、自分の意思が群れ全体へ流れていた。


「……左脚」


 真琴は無意識にフェロモンを放つ。


 すると。


 働きアリたちが、一斉に巨大兵の左脚へ群がった。


「えっ」


 完全連携。


 まるで最初から作戦共有していたみたいだった。


 巨大兵が脚を振るう。


 数匹吹き飛ぶ。


 だが止まらない。


 次が噛み付く。


 さらに次。


「関節を固定して!」


 フェロモン指示。


 エース兵隊アリが即座に反応する。


 巨大な顎で、敵巨大兵の左脚へ噛み付いた。


 固定。


「今!」


 働きアリたちが一斉に土壁を掘削する。


 支柱崩壊。


 通路亀裂。


 そして。


 どごぉぉん!!


 巨大な落盤が起きた。


「っ!」


 土砂が巨大兵へ降り注ぐ。


 片脚が埋まる。


 動きが止まった。


「いける!」


 その瞬間。


 もう一匹の巨大兵が突っ込んできた。


「うわまた来た!?」


 だが。


 今度はエース兵隊アリが真正面から迎え撃つ。


 ガギィィン!!


 激突。


 以前より押されていない。


 真琴のフェロモン強化で、動きが明らかに変わっていた。


「すご……」


 さらに働きアリたちも連携して群がる。


 脚。

 関節。

 触角。


 弱点へ集中。


 完全な集団戦術。


 その時。


 埋まっていた巨大兵の片脚から、めきっ、と嫌な音がした。


「……折れた?」


 次の瞬間。


 巨大兵が初めて大きく後退した。


 恐怖フェロモン。


 混乱。


 敵側が怯んでいる。


「押せぇぇぇ!!」


 真琴のフェロモンが爆発的に広がる。


 群れが雪崩れ込んだ。


 そして。


 傷付いた巨大兵の一匹が、ついに撤退を始める。


 もう一匹も後退。


 敵兵隊アリたちが回収に入る。


「……逃げた?」


 静寂。


 崩れた通路。


 散らばる死骸。


 傷付いた働きアリたち。


 そして。


 立ち尽くすエース兵隊アリ。


「……勝った」


 真琴はその場へへたり込んだ。


 全身が熱い。


 フェロモンを出しすぎたせいか、頭もくらくらする。


 だが。


 コロニーは守れた。


 その時。


 遠くから、微かに敵女王のフェロモンが流れてきた。


 怒り。


 警戒。


 そして。


 敵意。


「……もう止まらないんだ」


 真琴は静かに触角を閉じる。


 守るだけでは駄目だ。


 また来る。


 もっと強い兵を連れて。


 つまり。


「敵女王を倒さない限り、終わらない」


 その結論が、恐ろしいほど自然に胸へ落ちてきた。

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