勇猛果敢な初陣1
「カンカン!! カンカン!!」
「女子供は早く村の外へ避難しろー!!」
家の外は騒がしかった。
疲労困憊で眠たい中目が覚める。
――村でなんかやってるのか?
窓から外の様子を見てみると、村の女性、子供、老人が一斉避難している。
――なんだ?この世界はこんな時間に鬼ごっこするのか?
そう思うと同時に、セレンは大急ぎで部屋に入ってきた。
――おっと、セレンも参加しちゃってる感じ??
必死の形相で、勢いよく駆け寄ってきて手を引かれる。
「早く逃げるわよ!」
――え、強制参加!?
そのまま駆け足で玄関まで行くが、ガウンの姿がない。
――あの性格なら鬼ごっこすら1番楽しんでそうだな。
ニヤつきながら家を出て、村を見た瞬間ヴェルトは目を見開き口を大きく開けて絶叫した。
目を見開き絶叫した。
村は、火の手が上がり橙色に染まっている。
「ええー!!! 鬼ごっこに気合い入れすぎだろ!」
――さすが、異世界だ。前世とはレベルが違う。
ガキの頃以来だし楽しもーっと!
「ヴェルトは何を言っているの? 危ないから母さんについてくるのよ!」
またセレンに手を引かれて村の外へ走り出すので、
必死さが気になり聞いてみた。
「どうしてこんなに逃げているの?」
「村に魔物が攻めてきたのよ」
――まじか。まじで深刻なやつじゃん。
「こんなこと初めての事だわ」
ヴェルトは少し浮かれていたことに、嫌気がさしてからガウンがいなかったことが気になった。
「父さんはどうしたの?」
「村を守るために戦いに行ったわ」
「父さん大丈夫なの?」
「魔物はFランクだし、父さんは村で1番強いから大丈夫よ」
――確かにあのテンションと強さなら心配は無用か。それより、Fランクの魔物!? 気になるー!
よし、セレンが安全なところで隙を見て戦いに行こう!
セレンと走り続け、村の外に出て少し行くと、遠目に避難場所があり人だかりが見える。その頃には引いていた手は離れていたので、ヴェルトは立ち止まった。
――ここら辺で大丈夫だろう。でもなんて言おう。何も言わずに行ったらきっとセレンはついてくる。
「母さん! 僕……」
「キャア! ヴェルト母さんの後ろに隠れて!」
そう言われて振り向くと、後ろから剣と盾を持った全身骨の骸骨が向かってくる。スケルトンだ。
―Fランクの魔物ってスケルトンなのか。
ヴェルトは戦いたい気持ちを抑えて、セレンの手を取った。
「母さん逃げよ!」
さっきよりも少し早く走り、避難場所があるところに着いてから母さんの手を離す。
「僕あいつと戦ってくる」
「そんなのだめよ。ヴェルトが危ないわ」
「僕は、大丈夫だよ。そのために毎日鍛錬しているんだから!」
「だめよ。鍛錬とは違うわ。負けたら死んでしまうのよ」
「兄さんに鍛えてもらってるから大丈夫! 今日は父さんにも鍛えてもらったんだ。絶対母さんのところに戻ってくるから行かせてよ。自分の実力を知りたいんだ」
セレンの顔が全体的にこわばる。
「どうしてそんなに鍛錬にこだわるのよ!」
涙を浮かべながら怒鳴られた。ヴェルトは自分と葛藤して考えていた。
――セレンには感謝してる。でも、夢だけは譲れない。
「僕、武神を目指してるんだ」
セレンは唖然としたが、毎日鍛錬していたことに納得がいった表情をした。
「まだ4歳よ?こんなところで戦わなくていいじゃない。母さんは心配よ」
――もうすぐスケルトンが追いついてくるだろう。
ここまで来られるとまずいな。
「ごめん母さん。絶対帰ってくるから!」
そう言ってスケルトンの方向へ走っていく後ろ姿にセレンは手を伸ばしてから膝をついて指を噛み祈る。
「ヴェルト…どうか無事で帰ってきて……」
ヴェルトはなるべく避難場所に近づいてこないように、メロスのように全力で走った。
――もう見えてきてもおかしくないはず。それにしても足でも疲れたのか?あ、筋肉ついてないか。
「ドカッ!」
「いってえー!」
デコを抑えて座ったまま蹲りそうになっている。
――暗い中全力で走りすぎた。避難者だったらどーしよ。
「すみません! 大丈夫ですか!」
顔を上げ目を凝らしてみると数メートル先にスケルトンが倒れていた。
――お前かーい!硬すぎだろ。今のうちだ。
倒してしまおうと立ち上がるがスケルトンも立ち上がった。
――くそー。倒れてる間にとどめ刺しちゃおうと思ったのに!
ヴェルトは隙のない構えをしてから目線だけ周りを見ると、スケルトンの持っていた盾がさっきぶつかった時壊れていたことに気がつく。
――ゲキ痛かったのはこれか。てか、盾壊しちゃう俺の全力疾走つよ!
スケルトンが縦に剣を振り下ろしてくる。それをかわし裏回し蹴りでスケルトンの足を蹴り転ばせて、少し距離を取り構える。
――動きが遅いな。やはりFランクはこの程度か。
左斜めから剣を振り下ろそうとする。素早く横に回り込み肋に正拳突きをする。
「ピキッ」と音がなった。
――手応えあり!
横から剣を振り抜いてきたのでしゃがんでかわす。
――あぶね!剣が邪魔だな。
そのまま距離を詰めて剣を握る手に手刀を打ち込むと、スケルトンの手首が折れた。
「ワットドゥーユーミーン?」
――結構脆くね?カルシウム不足か?でも今がチャンスだ!
素早く頭を両手で掴み膝蹴りを入れ顎が上がったので、地面を蹴って飛び上がり顔面に正拳突きを繰り出した。
「エイッ!」
――よし!気持ちよく決まったぜー!
スケルトンは勢いのまま地面に頭を打ちつけられて、頭蓋骨が割れた。
そうするとスケルトンの全身が蒸発するように消えていった。
目を見開き表情が明るくなった。
「ふぅー。」
――強さは大したことないし、倒し方もわかった。
これなら全然戦えるぞ!
暗い道を全力で走りだすと数分で村についた。
村から逃げた時より激しく燃え煙が漂っている。
――焦げ臭い。結構大惨事だな。
息を整えながら道着の帯を固く結び直し急いで村を駆けていくと、村の男たちが鍬やスコップ(シャベル)などの農具を持ち満身創痍でスケルトンと五分の戦いを繰り広げていた。1人の男がスケルトンに押し負けて転んでしまう。いくん
――危ない!早く助けなきゃ!
勢いよくスケルトンに突っ込み飛び前蹴りを喰らわせスケルトンが倒れた込んだ。
転んでいた男の方を振り向く。
「大丈夫ですか!」
男は突然戦場に小さい子供がきて自分を助け心配している。そしてなにより子供がスケルトンをただの蹴りで倒れ込ませたことに、口がポカーンと空いたまま止まっている。脳の情報処理が追いついていない。時間差で男は驚いたように反応した。
「ガウンの息子じゃないか! なんで逃げていないんだ!」
「僕、助けに来たんだ」
「子供一人で何ができる!? 今からでも逃げるんだ!」
「村の外で1体倒せたから大丈夫だよ! それより父さんはどこ?」
「ガウンはこいつらを引き連れてきた魔族と戦っている」
「魔族と魔物ってなにか違うの?」
「魔物と違い、魔族は頭が切れるうえ強さのレベルが違うんだ。」
――まじか! ぜひ戦いたい!!
「ここは俺たちに任せて避難所に向かうんだ!」
そう言った時にはヴェルトの姿は消えていた。
「どこで戦ってるんだろ?」
ヴェルトはガウンの居場所を探していた。
――どこだ。いくらガウンでも多少は心配だな。ついでに魔族とも手合わせしたいし。
周りを見渡しながら村の中を走っている。
「キャー!!」
悲鳴が聞こえた。
――逃げ遅れた人がいるのか!
すぐに悲鳴の方向へ向かって走り出す。
――どこから聞こえたんだ?
「きゃあ! やめて! 来ないで!」
――こっちか!
すると、女の子がうずくまって泣いていて目の前にはスケルトンが襲おうとしている。
――間に合ったか。でもさっきの奴らと少し違うぞ?
スケルトンウォーリアーである。Dランクの魔物で盾はなく剣を持っている。
ヴェルトはスケルトンウォーリアーと女の子の間に立ちはだかり、避難場所がある方向を指差した。
「あっちにみんないるはずだからここは僕に任せてはやく逃げて!」
女の子は震えて泣いているが頷き必死に逃げていく。スケルトンウォーリアーは追おうとしたので牽制の攻撃を入れた。
「僕が相手だぞ!」
警戒し構えるとスケルトンウォーリアーが足元を狙って剣を振る。
――剣速がさっきのスケルトンより速い。
それを飛び上がってかわし剣を狙うため距離を詰めようとするが下から上に剣を振り上げてくる。
身体を捻ってかわすが道着をかすめた。
――あわ!油断したらやられるなこれ。Dランクって結構手強そうだ。動きに慣れなきゃ。
体制を立て直し攻防を繰り返すが装備のせいか攻めきれない。
――こいつ剣術もあるしプレートアーマーはいくら鍛えてても流石に拳が痛い。
途中に距離を取り地面の土を掴む。
――一旦土とか投げてみよっと。
土を投げるとスケルトンウォーリアーは上段(目線の高さ)を斬りヴェルトに向かい走る。
――目は見えるんだ。
胸部に鋭い突きを放ってきたので、受け流し回転しながらカウンター回し蹴りを胴体に入れた。
スケルトンウォーリアーはよろめき体制が崩れた。
――この体制なら剣を触れても横にしか触れない。
すぐに近づき剣を振らせ誘い出してかわした。剣を持つ手に思い切り後ろ蹴りを打ち込む。
腕が折れて剣が飛んでいきスケルトンウォーリアーから離れた。
――よし、勝ちは見えた。
細かい突きの乱打を入れると全身に少しずつヒビが入る。スケルトンウォーリアーは抜け出す隙がない。
乱打に耐えきれなくなり倒れた。
「これでトドメだ! エイッ!」
渾身の一撃を頭蓋骨に打ち込み頭が砕け消えていった。
――意外と強くて時間かかっちゃったな。早くガウンを見つけなきゃ。
呼吸が荒いが構わず走り始めた時笑い声が聞こえてきた。
「ガハハ!」
ヴェルトは心配が少し和らぎ声の方へ向かった。
声を辿っていくといつも鍛錬している村の外れにつくと凄まじい戦いをしている巨漢の男2人が見えた。
だが、ヴェルトは目を見開き憮然とした表情をして立ち尽くした。
「嘘だろ?そんな。待ってくれ…」




