34 栗崎城の戦い 其の4
白井全洞によって仕掛けられた巧妙な罠に嵌まりまくって、右往左往する重兵衛達…
敵将無き烏合の衆の大軍に戸惑いながらも、何とか活路を見出だそうと奮闘します…
それでは本編をどうぞお楽しみ下さいませ...
袋畑・伊古立 連合軍 400は、正に疾風怒濤の勢いで、宿敵・多賀谷勢5000のど真ん中を攻め上がって行った…
「重兵衛、何か様子がおかしくないか?!」
「はい...いくら嚇しがキツかったとは言え…ちょっと簡単に来すぎているような…」
「うむ…」
敵本陣に辿り着いたが…
果たして、そこには大将らしき武将は居なかった…
と、源蔵がやって来た…
「殿、多賀谷勢が南進し始めました!」
「何っ?!しまったぁっ!!」
私は再び太刀を天に翳し、バチバチと火花が散る剣先を振り下ろした…
ブォォォォォォォッと音を立てて炎が物凄い勢いで吹き出した…
多賀谷勢は又しても怯んで、ポッカリと真ん中に道が開いた…
私達は又もや、疾風迅雷の勢いで引き返した…
そして、又しても簡単に最前線に戻れてしまった…
「重兵衛…何か…きな臭いな…?」
「はい...」
「奴等…何故…攻め込んで来ぬのじゃ…?」
源蔵が答えた…
「そりゃぁ道鎮様、奴らが本気で狙ってるのは吉沼だからですよ!」
「な…何じゃとぉっ?!んっ?!しかし…御主は…先程から…わしの側を…ちょろちょろと…」
「はぁっ!申し遅れました…某、永田家 家臣・赤崎源蔵重賢と申します!我が主の命により、終日道鎮様を御守り致すが某めの任務に御座ります…」
「じゅ…重兵衛っ…」
私はニヤリと笑った…
「しかし…源蔵、何故、其のように申すか?」
「道鎮様、簡単な事に御座る!下栗にも袋畑にも大将らしき武将が居りませなんだ…けど、吉沼には白井全洞が居りましたから!」
「それは真か源蔵っ?!」
「はぁっ!」
「重兵衛っ?!」
「こ…これは…もしや…源蔵の申す通りなら…これは……白井全洞によって仕組まれた巧妙な罠に御座る…」
そこへ早奴に跨がって政重様が現れた…
(勿論、安兵衛も一緒に!)
「道鎮に重兵衛!御屋形様が援軍を授けてくれたぞ!!」
「おぉっ、御屋形様が援軍を?!」
「うむ!小田勢から菅谷政貞様以下、九百名!しかも、その中には野中瀬鈍斉殿、沼尻又五郎殿、等々…猛将多数との事っ!!それ故、我等は袋畑と下栗をしっかりと守り抜く様にと、兄上からの御達しじゃ!」
「何と!菅谷様に野中瀬殿に沼尻殿も?!」
「左様…下栗には…武藏守が入って居るが、先程、古間木城から周防守殿が援軍を出してくれた故、もう心配は要らぬじゃろう!!拠って我等は袋畑・四ヵ村を何が何でも死守するのみじゃ!!」
「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」
「しかし、敵5000に対して…此方は900か…」
「政重様、此方は横並びで参りましょう?!」
「ふむ…」
「これ迄の様に縦並びでは、また、同じ事の繰り返し…奴等よりも横に広く構えて、ジリジリと攻め上がりましょう?!」
「そうじゃな?!皆の衆、此度は縦ではなく、横並びになるのじゃっ!!皆で横に広く並んでくれぇっ!!」
皆、素早く、最前列が最も長い二等辺三角形を形成していった…
石毛・伊古立・袋畑の侍達の何と素早き事かと私は感嘆していた…
「重兵衛、道鎮…俺達は、何と良き家臣達を得たことかのう?!」
「はぁっ!真にもって…」
と、政重様が言うと…其の後ろで、源蔵が徳利を煽りながら言った…
「某も、其の端くれに…入っては居りますかのぅ?」
「源蔵、御主は今、ちゃっかりと其のど真ん中に居るではないか?!」
そう道鎮殿が言うと、御味方一同、どっと笑った…
「良し、皆の衆!参るぞっ!!」
おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!………………………………
石毛・伊古立・袋畑 連合軍 900はジリジリと北進し始めた…
多賀谷勢には此方が3000にも4000にも見えるのか…?
逆にジリジリと後退し始めていた…
「主無き軍勢の何と儚きことよ…」
「重兵衛、如何致すか?このまま一気に攻め込まぬか?」
「道鎮殿、ここは焦らず、じっくりと参りましょう…一気に攻めるとまた、同じ事の繰り返しになりましょう?!」
「良し!分かった…」
「道鎮、焦るなよぉっ…奴等の術中に嵌まらぬように此方もじっくり参るぞっ!!」
「はぁっ!」
私達はジリジリ、ジリジリと北進を続けた…
すると、やがて敵勢のど真ん中に一人の武将らしき侍が姿を現した!
「某は多賀谷家 家臣・岡野半平実房と申す!我が主の命により、袋畑城を頂戴仕るっ!!」
「岡野半平実房…まさか…銀右衛門の従兄弟では有るまいな?!」
「左様に御座ります殿、半平と銀右衛門は幼き頃から兄弟のように仲良うしとりましたが…まさか…この様な事に…」
「安兵衛殿、これも戦乱の世の定めに御座る!」
と源蔵が言うと私は叫んだ…
「銀右衛門!銀右衛門は居らぬか?!」
「はぁっ、殿!」
「銀右衛門、御主は城の守りを頼む!」
「殿、半平は、確かに某の従兄弟では御座りまするが…あ奴が多賀谷に組した時から、あ奴と某は赤の他人…いえ、最早、憎き敵将の一人…どうかこのまま私も皆さんと戦わせて下さい!」
「それはならぬ!従兄弟同士が殺し合って何とする?!」
「殿!某は半平を殺したいのでは御座りませぬ!!某は多賀谷を滅ぼしたいだけです!我が愛する故郷を脅かす者共を根絶やしにしたいだけに御座ります!!…例え…その中に…半平が居たとしても…某は…迷わず斬って捨てる迄の事!!」
「ぎ…銀右衛門…」
「殿、銀右衛門も、こう迄申して居りまする!どうか列に加えてやって下さい!!」
「安兵衛…相分かった…銀右衛門、決して死に急ぐでないぞ!!良いなっ?!」
「はぁっ!殿っ、有難う存じます!!」
私は頷いてから叫んだ…
「某は、袋畑城主・永田重兵衛常充である!これより先はそちらの領地…そちらがそれ以上に当家の領地に近付かなければ…誰一人、傷付けたりは致さぬっ!しかし、それ以上、当家の領地に近付く者在れば、容赦無く、御命頂戴仕る!!」
敵勢がざわついている…
「恐ろしい…」「雷神だべ…」「皆焼かれちまうぞ…」……
岡野殿が一步前に出て叫んだ...
「相分かったぁっ!!永田重兵衛常充殿ぉっ!!某が相手致ぁす!尋常に勝負されたぁし!!」
私は頷いて…太刀を抜き…天に翳した...
稲妻が天空を駆け抜け…雷鳴が大地に轟いた…
やがて剣先から火花が散り始めた…
岡野殿が、太刀を抜いて此方に向かって来た…
私は岡野殿の少し前に向けて、思い切り太刀を振り下ろした…
ドォォォォォォォォン…と音を立てて岡野殿の手前の土がめくれ上がった…
岡野殿は尻餅を付いている…
私は間髪を入れずに、もう一度太刀を天に翳してから、左右に二度、思い切り振り下ろした…
ドォォォォォォォォン…ドッカァァァァァァン…
岡野殿の左右の土がめくれ上がった…
土まみれになって岡野殿は倒れた…
そこへ下栗からの早馬がやって来た…
「申し上げます!下栗城に多賀谷重経の軍勢、染谷三河守の軍勢他多数来襲っ!願わくば、今一度、重兵衛様に御助勢賜りたく、御願いに推参仕りましたぁっ!!」
「重兵衛っ!!」と政重様…
私は頷いて叫んだ...
「相分かったぁっ!!袋畑勢は直ぐに参ると常楽寺様に伝えて下されぇっ!!」
「承知仕りましたぁっ!!御免っ!」
疾風の様に早馬は去っていった…
私は再び太刀を天に翳して叫んだ...
「命の惜しい者は、この場から立ち去り為されぇっ!!」
私の身体中から物凄い勢いで火花か散った…
「あわわわっ…」「雷神が怒ってっとぉっ!」「逃げろ逃げろぉっ!!」「殺されっとぉっ!」「早く逃げっぺよ!」…
所詮は烏合の衆である…
敵勢は総崩れとなり、5000居た筈の大軍は跡形も無く消え去っていた…
「良うやった重兵衛っ!さぁ、後は、わしらに任せて、早う下栗城へ参るのじゃ!!」
「はぁっ!袋畑の勇者達よっ!我々は再度下栗城の救援に参るっ!良いかっ?!」
おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!……………………
(次回につづく)
御屋形様(小田氏治)により、強力な援軍を授かった豊田勢…
一気に形成逆転となるか?
と思いきや…
従兄弟同士を戦わせると言う、白井全洞の何とも卑劣な作戦に戸惑いを隠せない重兵衛…
遂には多賀谷家嫡男・多賀谷重経も登場してきそうです…
それでは次回「つぐみ龍の伝説」…
『35 栗崎城の戦い 其の5』にどうぞ御期待下さい!




