32 第二次栗崎城の戦い 其の2
やはり、信玄公が亡くなった事を知った多賀谷勢が、待ってましたと言わんばかりに豊田領に攻め込んで参りそうです…
栗崎城風雲急かと思いきや…
何やらまた、多賀谷勢の動きが怪しいのです…
たっぷりと演習を積み重ねてきた豊田勢ですが…
果して、どのように多賀谷の軍勢を迎え撃つのか…?
それでは、本編をどうぞお楽しみに下さいませ…
翌朝、袋畑城にノブが来ていた…
『殿の命令で、今日から、こちらの千代王の世話をしろと…』
「実は昨日、殿に御願いしておいたんだよ…」
千代王はもう、ノブに懐いているようだった…
「あら、ノブさん!」
「あ、奥さん、おはようございます!殿の命令で今日から此方でお世話になります!!」
「あら、良かった!宜しく御願いします!!これで3人揃ったわね?!」
「はい!それにしても良い馬ですね、コイツ!!」
「だろう?!もう23歳位の筈なんだけど、全く衰えないんだよ!!」
ヒヒーンッ!ブルンッ!ブルンッ!ブルルルッ!!
「ほらね?!」
わっはっはっはっはっ…わっはっはっはっはっ……
千代王は、もう一度、前肢を高く上げて嘶いた…
ヒヒーンッ!ブルルルルルッ!!ブルンッ!ブルンッ!ブルルルルルッ!!
そして其のまた翌朝早くに下栗城から早馬が来た…
私は常楽寺様からの手紙を受け取った…
「多賀谷に囲まれて居る、至急備えを。」…
「ノブゥゥゥゥゥッ!!」
「はぁっ!」
「至急、政重様の処へ参り、下栗城が多賀谷に囲まれていると伝えてくれっ!」
「ははぁっ!」
「待ってノブッ!これは罠かも知れぬ故、下栗城は袋畑と唐崎と長萱で何とか致すので、政重様と道鎮殿と小治郎殿は、吉沼攻めに備えて下さいと伝えてくれっ!!」
「ははぁっ!!」
「心得て居る…」
「おぉっ、小治郎殿っ!吉沼を頼みます!!」
「任せろっ!重兵衛殿は常楽寺様を頼むぞ!!」
「うむ!!」
私は奥さんに手伝ってもらって、豊田家の家宝で、袋畑右京殿の形見とも言うべき黄金の甲冑を身に纏い、その上に火消し装束を身に付けた…
早くも家臣達は袋畑城内に集結していた…
「皆、揃ったようですね?!」
「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」………………
「下栗城が多賀谷の軍勢に囲まれておるっ!しかし、これは、きっと罠であろう!!我等を下栗城へおびき出しておいて、吉沼を奪い取る腹であろう?!我等は吉沼から知らせが入り次第、直ちに吉沼へ取って返す故、下栗城では誰一人死んではならぬぞっ!常楽寺様も分かっておいでじゃっ!手強い相手が居たらのらりくらりと躱すのじゃ!誰一人とて死んではならぬぞっ!良いかっ!!」
「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」………………
「それでは、全軍、先ずは下栗城へ参るっ!!」
おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!……………………
私は、袋畑・唐崎・長萱 連合軍400を率いて下栗城へと向かった…
程無くして我々は下栗城に到着した…
常楽寺様が孤軍奮闘しているのかと思っていたら…
向石下城主・館武藏守宣重殿が応援に入っていた!!
「常楽寺様、よくぞ御無事で!!」
「おぉっ、重兵衛殿っ!いやぁ、老体には、ちときついわい!しかし、武藏守殿が来てくれての…重兵衛殿迄来てくれたとあっては、もう天下無双じゃわい!!わっはっはっはっは…」
そこへ武藏守殿が来て言った…
「敵二千に対して此方は一千…防戦するのみなら充分な数ではあるな?!」
「はい…武藏守殿、御助勢、忝のう御座る!」
「なぁに、礼には及ばぬ!御主には何度も助けられて参ったからな?!これしきの事、造作もないこと…吉沼には、御本家と政重様と道鎮殿も控えて居る故、某は重兵衛殿と行動を共にする事に決めた!!」
「それは、心強い!武藏守殿っ!!」
「うんうん…御二人共、忝ない!じゃが…吉沼から報せが来たらば、手筈通りにな?!」
私と武藏守殿は頷いたが…
その時…私には、何となく腑に落ちない感じが残った…
戦況は一進一退と言うよりは…
むしろ、私達が合流してからは多賀谷勢の攻撃が緩くなっている様だった…
(これは…やはり…罠だな…いくら我々が常日頃から訓練を積んできた精鋭部隊とは言え…1000 VS 2000では…まともに戦えば…どちらが有利かは自明の理…)
「重兵衛殿、こりゃ罠だな…?!」
「武藏守殿もそう思いますか?」
「下栗城を攻めれば、必ず重兵衛殿が応援に参ると踏んで…重兵衛殿が居らぬ隙に吉沼を攻める腹であろう…?」
「しかし…某が居なくても、政重様と道鎮殿が控えて居ります…」
「奴らが恐れているのは、御主一人であろう…?これは…御主を此方に引き付けておく為の罠に相違御座らぬ!!それが証拠に…奴等、御主が合流してきてからと言うもの、のらりくらりと押しては退き…押しては退きの繰り返しじゃ!!」
「左様で御座るな…」
「吉沼から報せが来次第、長萱勢と唐崎勢を残して、御主と袋畑勢は直ぐに吉沼に向かうのじゃ!!なぁに、あんな奴等、わしら八百で充分じゃ!!」
「武藏守殿、絶対に死んではならぬぞ!御命第一に!!」
「分かっておる、重兵衛殿!御主に何度も救われたこの命…決して無駄にはせぬっ!!わしらも、追っ付け参る故…安心致せ!」
やがて吉沼からの早馬が来た…
「栗崎城に多賀谷の軍勢が押し寄せて居ります!その数およそ三千!!至急、重兵衛様の援軍を賜りたく、推参仕りましたぁっ!!」
「急ぐのじゃ、重兵衛殿っ!」
私は武藏守殿に頷いてから叫んだ…
「相分かったぁっ!袋畑勢が直ぐに参ると、外記様に伝えてくれぇっ!!」
「ははぁっ!忝のう御座るっ!!御免!」
吉沼からの早馬は疾風のように去っていった…
と、私が千代王に跨がった時には…
袋畑勢は全員、私の処へ集結していた…
私は何だか嬉しかった…
「袋畑の勇士達よ、我等はこれより吉沼へ向かう!栗崎城は、我等が防御の要!何としても多賀谷の手に渡してはならぬ!!参るぞっ!!」
おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!……………………
(つづく)
何と多賀谷の軍勢は下栗城を襲ってきましたが…
やはり罠のようでした…
栗崎城に取って返した重兵衛は、白井全洞に仕掛けられた意外な罠に気付き…
次回「つぐみ龍の伝説」は…
『33 第二次栗崎城の戦い 其の3』にどうぞ御期待下さい!




