27 五家・千本木の戦い (其の7)
あの、甲斐の鬼美濃・原美濃守虎胤様が、南常陸豊田郷に降臨!!
さて、此度の戦は一体、どの様な結末を迎える事になるのでしょうか…?
それでは、本編をどうぞ、お楽しみ下さいませ…
小山の上から観戦していた原清岩様の元には無数の草の者達が集結してきていた…
「皆、良う、参集してくれたな!これから一芝居打つので力を貸してくれ!!」
「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」…
そして、山が動いた…
法螺貝の音を猛々しく鳴り響かせながら、武田騎馬隊と原美濃守虎胤様が、武田の軍旗と原家の軍旗を翻して此方に向かって来た…
(物凄い勢いだ…この様な数を…いつの間に…?)
多賀谷勢は浮き足だった…
「な…何だぁっ?」
「あ…あの旗印は…武田の…騎馬隊…?」
「あ…あれは…まさか…甲斐の鬼美濃…原虎胤…?」
「武田二十四将の一人…原美濃守虎胤かっ?!」
「あの旗印は…武田家五名臣の一人…間違いない!鬼美濃こと原虎胤だっ!!」…
『我こそは、甲斐武田家家臣・原美濃守虎胤であるっ!我が宿敵・上杉謙信に味方するとは言語道断っ!!下妻多賀谷っ、断じて許さぬっ!覚悟せぇぇっ!!』
「うわっ、鬼美濃だっ!逃げろぉぉっ!!」
「鬼が来たぞぉぉぉっ!逃げろぉぉぉっ!!」
「大変だぁっ!甲斐の鬼が来たぞぉぉっ!!」
「逃げろ逃げろっ!殺されるぞぉぉぉっ!!」
「鬼が来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
多賀谷勢はパニック状態に陥り、総崩れとなった…
逃げ惑う兵達を置き去りにして、真っ先に、多賀谷政経と白井全洞は下妻の方へ逃げ帰って行った…
「しっかし、逃げ足の速い奴らじゃのう?!」
「親父殿、有り難う御座います!もう傷は大丈夫なんですか?!」
「うむ…小治郎、わしも、ちいと歳を取り過ぎたようじゃ…先の川中島で鉄砲玉を喰らって死ぬる筈じゃったんだが…また生き延びてしもうた…しかし、もう、そう長くは生きられぬじゃろう…そこで、一昨年、隠居させてもらってな…一度、故郷を訪ねておこうと思ったんじゃが…折角なんで御主の顔も見ておこうと思ってな…あの山の上から暫くこの戦の様子を見ておったのだが…御主の殿は…実に慈悲深く素晴らしい御方の様じゃのう?!」
「はい、我が殿は、清らかで優しい心をお持ちの素晴らしい御方です…」
そこへ、治親様と政重様が参りました…
「これは…豊田安芸守様に石毛政重様!とんだ御無礼を致しまして…どうか平に御容赦下されぇっ!!某、甲斐武田家家臣原美濃守虎胤と申します!」
と言いながら清岩様は下馬して片膝を着いた…
「な…美濃守様っ!その様な事っ…頭を上げて下されっ!!」
と、慌てて政重様が言うと…
何と、治親様も片膝を着いて頭を下げた…
「御初に御目にかかります…某は豊田安芸守治親と申します!そして、これなるは弟の石毛次郎政重に御座います…美濃守様、此度の御恩、この治親、生涯忘れることは御座らぬ!!」
「安芸守様、その様な堅苦しい挨拶はやめにして…兵達も疲れておるじゃろう?!…さぁっ!」
そう言って清岩様が立ち上がると、治親様も立ち上がった…
「危ない処を忝ない虎胤殿!」
と言って治親様が手を差し出すと、清岩様はその手を両手でガッチリと握り返した…
「今はもう、隠居の身で清岩と申しておる、原清岩じゃ!清岩と呼んでくれ治親殿!!」
「清岩殿!」
と治親様が言うと、御二人は互いの目と目を見合って、再びガッチリと両手を握り合った…
二人の間には、何か通じ合うものがあったようだ…
「しかし、この様な危なっかしい土地で、あの者共を相手に連戦連勝とは…御主、只者では無いのう?!」
「清岩殿、某、家臣に恵まれておりまする!尤も信玄公程では御座らぬがな…?」
「御主、申したのうっ?!がっはっはっはっはっはっは…」
二人は初めて会った筈なのに、まるで竹馬の友であるかの様に見えた…
「清岩殿、もし差し支えなければ、今宵は一晩、当屋敷にお立ち寄り下され!」
「真か?!治親殿!それでは遠慮無く御言葉に甘えることに致そう!小治郎、良いなっ?がっはっはっはっはっ…」
「それでは、ちくと御待ち下され、清岩殿!……豊田・石毛・古間木・吉沼・四ヵ村・北域の勇者達よっ!此度も皆、良う働いてくれたっ!!この治親、心より礼を申す!!皆、真に有り難うっ!!政重、勝鬨を上げよ…」
「はぁっ!…えいっえいっ、おぉぉぉっ!!」
「えいっえいっ、おぉぉぉっ!!」「えいっえいっ、おぉぉぉっ!!」「えいっえいっ、おぉぉぉっ!!」…
私は一人、ホッとしていた…
(やれやれ…何とか此度の戦でも、治親様、政重様、外記様、与五郎殿、道鎮殿、武藏守殿の御命は守られたなぁ…)
と…その時、政重様と道鎮殿が私の処へやって来た…
「重兵衛、此度も大儀であったな?!」
「はぁっ!…いや…此度は清岩様に助けられました…」
「うむ、真に凄い御方よのう?!」
「清岩様の旗印を見ただけで、多賀谷の奴ら慌てて逃げ出して行き居ったわ!」
「小治郎殿に感謝です!清岩様は、本当は小治郎殿に会いに参られたのですから…」
「そうであったな…小治郎は清岩様の弟子であったな?」
「左様で御座った…甲斐で草の修行をしておったと言うとりました…清岩様の処であったのか…真、小治郎に感謝じゃ!!」
「しかし…清岩様は…今では…某の事より…殿の方に御執心の様子…」
「おぉっ、小治郎…焼いとるのか?!」
「馬鹿を申せ、道鎮っ!!」
わっはっはっはっは…わっはっはっはっは…わっはっはっはっは…
豊田勢は意気揚々と凱旋し、金村別雷神宮にて戦勝報告を行い、家宝である神旗『蟠竜旗』を再び奉納してから、全軍で豊田城に帰還し、戦勝祝いの宴に突入していったのだった…
皆、嬉しそうに酒を酌み交わし、盛り上がっている!
皆、楽しそうな顔をしている…
笑顔、笑顔、笑顔…である…
私も皆の嬉しそうな顔を肴に酒を飲んでいた…
そこへ、道鎮殿が吉右衛門殿を連れてやって来た...
「重兵衛っ!飲っておるか?!」
「はい!…吉右衛門殿、大活躍でしたね?!」
「いやぁ…某などは重兵衛様の足下にも及びませぬ…」
「いやいや、道鎮殿に鍛えられて、中々の太刀筋でしたぞっ!」
「左様、吉右衛門は相当腕を上げたよのう?!」
「道鎮様のお陰に御座います!…あ、政重様…」
私達三人は片膝を着いた…
「よいよい、その様な事…吉右衛門、良い働きをしておったのう?!たっぷり飲んで食って疲れを癒せよ!!」
「はぁっ!有り難う御座います!!」
「うむ…ちくと、道鎮と重兵衛を借りるぞ…」
私達三人は二の丸の方へ歩いていった…
「此度は二人共、良う働いてくれた!礼を申す!!其にしても二人共、良う、あそこまで兵を育て、良うまとめてくれた!特に袋畑と伊古立の兵達の働きには目を見張るものが有った…」
「皆、良う働いてくれました!しかし、最後は清岩様に全部持っていかれました!!」
「そうじゃな?!此度は武田家と御縁を持てた事は上々…対上杉、対北条に於いても心強い!…しかし、重兵衛、例の歴史の魔物の件じゃが…」
「はい、此度も何とか、皆様の御命が無事で何よりでした…」
「道鎮、気を悪くするなよ…重兵衛の申すところの歴史上の流れでは、原親子と道鎮、そして武藏守の四名は、もう死んでおる事になっておったが…幸い、重兵衛のお陰で、四人とも生きておる!原親子と道鎮の身代わりに討ち死にしたのが、掃部と右京と宍戸殿だとして…武藏守の身代わりは一体…?」
「はぁっ!恐らくは、本日、葬った下妻の青木殿か、桐ヶ瀬殿かと…」
「そうかっ!それなら数が合うな…敵味方関係無く同格の者を歴史の魔物は狙って来るのじゃな?!」
「はい!恐らく…」
「良かった…武藏守もこれで一安心じゃな…」
「この後、結城晴朝様の仲裁が入り、十年間は安泰の日々が続きましょう!…ただ…その後…政重様と殿が…危のう御座る!!」
「うむ、歴史上では、十二年後、わしは脳卒中で…兄上は…」
「はい…ですから、この十年で益々、各城の防備を強化し、家臣団の連携も更に密にして、兵一人一人の強化も怠り無くやって参りまする!」
「うむ!重兵衛、道鎮と協力して、兄上の為、豊田・石毛・四ヵ村・北域の為、尽力してくれっ!!何かあれば、何でもわしに言ってくれ…」
「ははぁっ!心得ましたぁっ!」
「ははぁっ!!…しかし、政重様は引き続き、禁酒・禁肴ですな?!」
「ど…道鎮…今宵くらいは良かろうて?!」
「はいっ!!」
わっはっはっはっは…わっはっはっはっは…わっはっはっはっは…
宴に戻ると、清岩様と治親様が、盛大に盛り上がっている兵達を眺めながら、楽しそうに酒を酌み交わしているのが見えた…
其を見て、私達三人も何だか嬉しくなってしまい、兵達と一緒になって大いに盛り上がっていった…
斯くして、豊田城内での戦勝祝いの宴は益々の盛り上がりを見せて、夜が更けていったのだった…
一方、戦に敗れた形の下妻城内では…
「全洞、圧勝の筈が…完敗じゃのう?!」
「ははぁっ…途中迄は、作戦通りに運んで居りましたが…よもや…あそこで…甲斐の武田が豊田勢の加勢に参るとは…」
「武田は川中島で、謙信様と対峙して居る筈じゃ…何故…この下総に鬼美濃が参ったのじゃ?!」
「それが某にも…さっぱり...」
「何れにしても…もう…下手に豊田には…手を出せなくなったぞ…全洞?!」
「ははぁっ…。」
白井全洞は、どうにも腑に落ちない様子で下妻城を後にした…
「しかし…一体…何故…原美濃守虎胤殿が…この様な場所に…?」
「先の川中島で銃弾を喰らって隠居したと聞いておったが…」
「謙信公が…しばしば…此方に参られたので…武田も此方迄…手を伸ばそうとしているのか…?」
「その為に…豊田と結ぼうと云うことか…?」
「何れにしても…厄介な事になったものよ…」
等とブツブツ云いながら、白井全洞は力無く馬に揺られて、トボトボと高道祖の屋敷に向かって帰って行った…。
(次回につづく)
如何でしたでしょうか?
いやぁ、原美濃守虎胤様…
豪快でしたね?!
治親様と意気投合して楽しそうでした!
さて、今回の私の妄想キャスティングは…
原美濃守虎胤…時任三郎さん!!
時任三郎さんの男らしいイメージが、豪快な虎胤様にピッタリです!
もし、エンドロールに…
小田氏治…柳沢慎吾
原 虎胤…時任三郎
武田信玄…中井貴一
なんて流れてきたら…
ちょっとニンマリしちゃいそうです…
この後も有り得ない事のオンパレードになりそうですが…
どうか最後までお付き合い下さいます様に…
それでは次回『つぐみ龍の伝説』…
「28 助っ人登場!」に、どうぞ御期待下さい!




