26 五家・千本木の戦い (其の6)
『下妻の隼』こと大串松之丞殿が、殿の近くまで接近!
重兵衛と安兵衛は豊田安芸守治親様を守りきれるのか…?
豊田丸奮戦するも、中々減らない敵兵達…
そこへ何と…あの、武田家五名臣の一人、『鬼美濃』こと原美濃守虎胤殿が現れて、事態は急展開へ…
おっと、それでは、どうぞ本編をお楽しみ下さいませ…
下妻の隼こと大串松之丞殿は、もう、殿の傍迄来ていた…
『安兵衛っ!!』私は叫んだ…
安兵衛は振り返り、大串殿に気付いた…
「己れっ!何奴っ?!」
「くっくっくっくっくっ…某は多賀谷家家臣・大串松之丞である!人呼んで『隼の松』とは某のこと…くっくっくっくっくっ…」
「おぉっ!御主が下妻の隼か?!某は、袋畑城主永田重兵衛常充様が家臣・堀江安兵衛武庸!!我が主の命により大殿様には指一本触れさせはせぬっ!!」
「さぁ、それはどうかのう?堀江安兵衛武庸殿…くっくっくっくっくっ…」
そう言いながら大串殿は、左右に小刻みに動き始めた…
最初はリズミカルに…しかし、次第に速度を増してきた…
やがて目にも留まらぬ早さとなった…
と思ったら…
キーンッ!
安兵衛は、何とか太刀で躱したようだ…
「流石、豊田随一の剣豪じゃな?!堀江殿?」
「御主こそ、その身のこなし、流石に隼の如しじゃ!」
「くっくっくっくっくっ…世辞は其れ位にして、そろそろ本気で参ろうか?!」
「望むところよ!来いっ!!」
二人は激しく討ち合った…
と言うよりは、安兵衛が一方的に打ち込んでは、大串殿がヒラリヒラリと、まるで宙を舞うように躱しているだけであった…
打ち疲れた安兵衛に、待ってましたとばかりに大串殿が逆襲してきた…
上から下から、左から右から、物凄いスピードで打ち込んでくる…
今度は安兵衛が防戦一方である...
「んっ?!」
私は、あることに気付いた…
「安兵衛っ!思い切って御主の正面に打ち込むのですっ!!」
「く…くそぉっ…こうなったら後は野となれ山となれだっ!」
安兵衛は大串殿の攻撃を躱して、ピョーンと1歩下がってから、素早く正面に打ち込んだ…
「んがぁっ…」
大串殿はバランスを崩して左膝を着いた…
腕から血を流している…
安兵衛は、止めを刺そうと構えた…
「大串松之丞殿、御覚悟ぉっ!!」
「待てっ!安兵衛っ!!…待つのじゃ!」
治親様が止めた…
「し…しかし、大殿様、この者は大殿様の御命を…」
「もう良い、安兵衛、手傷を負ったものを成敗したとあっては東武士の恥じゃ…この者は、たった一人で本陣まで斬り込んで参った勇者…敵ながら天晴れな奴!しかも、この者は未だ誰一人斬っては居らぬ!!」
(流石、我が殿!)
「確か、名は、大串松之丞と申したな…誰か手当てをしてやってくれ!」
「な…何と!…御情け痛み入りまするが…どうか御容赦無用に願いまするっ!!…某は…もう…太刀を握れますまい…さぁ、止めを御刺し下されっ!」
大串松之丞は胡座をかいて座り、目を閉じた…
「真、潔の良い奴じゃ!だが、御主のその身のこなしの素早さ、天晴れ隼の如しなり!!傷が癒えたらまた戦場で合おうぞ!隼の松っ!!」
「何と慈悲深き御方なのじゃ…」
そう言って、大串松之丞殿は涙を流しながら手当てを受けた…
私は、また一段と殿が好きになった…
前線に戻ると、常楽寺殿が奮戦しているのが見えた…
「流石!」
馬上で悠然と構えて槍や刀を躱して躱して、しつこい相手には、平打ち、峰打ちで、蹴散らしている…
全く危なげが無い!
「おっ!あちらは小治郎殿!流石の身のこなし…全く危なげ無いな!!…んっ?!」
私は、何か、とてつもない殺気を感じた…
(逆井城の方角か?!)
(何か、ど偉いものが潜んで居る様な…)
(小高い小山の上から、望遠鏡の様なもので、こちらを見ている一団が居る…)
(マズい!!只者では無さそうだ…)
私は戦列から離れ、小山に向かって真一文字に千代王を走らせた…
小山の近くまで来ると、その一団の一人一人を、ハッキリと見ることが出来た…
何処かで見たような方が一人、中央に座している…
「某は下総豊田家家臣永田重兵衛常充と申します!只今、隣国の下妻多賀谷勢5000の侵略を食い止めんが為、当方3500にて交戦中に御座います!!どうか暫しのお目こぼしを御願い申し上げまするぅっ!」
「相分かったぁっ!永田重兵衛常充殿ぉっ、心配御無用っ!御主の事は、肘谷の小治郎から良ぉく聞いて居るぞぉっ!!某の名は原清岩、小治郎はわしの弟子じゃ!」
(原…清岩…んっ?…まさかっ?!)
私は千代王から飛び降りて、片膝を着いた…
「知らなかったとは申せ、どうか平に御容赦下されっ!もしや、あなた様は、武田五名臣の御一人、『鬼美濃』と天下にその名を轟かせた原美濃守虎胤様では御座いませんかっ?!」
「如何にも…しかし、今は、先の川中島で鉄砲玉を喰らってなぁ、すっかり隠居の身よっ!今は原清岩と名乗っておるっ!!」
「これは失礼致しました、清岩様っ!」
「良い良い…某もこっちの方の出でな…久方ぶりに故郷詣でがてらに小治郎の顔でも見て参ろうかと思ったら、あの様な有り様じゃったのでな…暫し高見の見物をさせて貰っておった処よっ!はっはっはっはっはっ…」
「左様で御座りましたか、清岩様っ!それでは、どうぞこのまま御観戦下さりませっ!!某、戦場に戻ります故、これにて御免仕りまするっ!」
「うむ、重兵衛殿!御武運を祈るっ!!」
「ははぁっ!有り難う御座います!!清岩様っ!御免っ!!」
私と千代王は前線に戻り、小治郎殿の処へ行った…
キーン…ガシャ…ガシャ…キーン…キーン…ガシャ…
「小治郎殿っ…お気付きか?!…清岩様が…来ておるぞっ!!」
ガシャ…キーン…キーン…ガシャ…ガシャ…キーン…
私は小山の方を指差した…
小治郎殿は逆井城の方角を向いた…
キラリと何かが光った…
「あ…あれは…親父殿っ…何故っ…この様な処へっ?」
ガシャ…キーン…キーン…ガシャ…ガシャ…キーン…
「御主に会いに来たそうじゃが…この戦じゃっ…なので…あそこで…目を細めて…御主の働きを…御覧になって…居られるっ…」
キーン…キーン…ガシャ…ガシャ…キーン…ガシャ…
「左様で…あったか…重兵衛殿っ…こ奴ら…さっさと…片付けてしまおうぞっ…」
カキーン…ガシャ…キーン…キーン…ガシャ…キーン…
「はい…しかし…中々減りませぬな…」
カキーン…キーン…ガシャ…キーン…キーン…ガシャ…
「次から次へと…湧いて来よるっ!…そろそろ…どうにか…ならぬかっ…重兵衛殿っ?…」
キーン…キーン…ガシャ…ガシャ…キーン…キーン…
「はぁっ…しかし…某っ…何故か…強敵相手じゃないと…あの力が…出せぬのです…」
「ま…真かっ?!…」
カキーン…キーン…ガシャ…キーン…キーン…ガシャ…
「はぁっ…」
キーン…ガシャ…キーン…キーン…ガシャ…ガシャ…
(次回に、つづく…)
いやぁ、有り得ないことが起こりました!
武田家五名臣・武田二十四将の御一人、原美濃守虎胤様が南常陸豊田郷に降臨!!
此度の戦を観察していた虎胤様は、我が殿のことを痛く気に入った御様子…
次回「つぐみ龍の伝説」…
『第27話 五家・千本木の戦い (其の7)』にどうぞ御期待下さい!
尚、この物語は完全にフィクションであり、登場人物と実在した人物とは、全く関係ありませんことを予め御承知おき下さいませ!




