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25 五家・千本木の戦い (其の5)

5年ぶりに再会した敵将と対峙する重兵衛…


しかし、どうも相手の様子がおかしいことに気付き、動揺することに…


重兵衛は、首尾良く敵将を倒して、豊田丸を守り切る事が出来るのか?!


それでは本編をどうぞお楽しみ下さいませ…

暫(しばら)くすると私は、渡辺長門殿を見つけた!!


『下栗・袋畑の戦い』以来、5年ぶりである…


「おぉっ!永田重兵衛殿か?!」


「如何にもっ!!」


「久し振りじゃな?!」


「5年ぶりに御座る、渡辺長門殿…」


「御主とは、この様な形で再会しとうは御座らぬかったが…」


「何を申されるか?!」


「此度も三千五百の兵で、良う、五千の我が軍を蹴散らしておるな?!…強大な丸を、いくら大きな円で囲んだとて、円の層が薄くなって、丸を飲み込むこと等、出来よう筈も無いよのう?」


「その通り、流石、下妻一の賢者と呼ばれる御方!」


「御主の方こそ、良くも咄嗟に、この様な大胆不敵な策を思い付いたものよ!」


「最早、互いに認め合っても、どうなるものでも有りますまい…渡辺殿…」


「左様、互いに斬り合うて、どちらかが、ここで、戦国乱世の露と消えるであろう…これも乱世の定め…御主と斬り合うて負けたとて、わしには悔いはない…参るぞ!」


「容赦無用に御座る!」


渡辺殿は背中に背負っていた棒を取り出した…


馬上で、それを下に向けると、ビューンと長く延びた…


槍である…何か仕掛けがありそうな…?


私は待った…下手に動くと不味い気がして…


渡辺殿が馬と共に少しづつ此方へ向かって来た…


不適な笑みを浮かべている…何かある…


私と千代王は、右へ回り込んだ…


「どうした?永田殿?!御主らしくもない…」


相変わらず不適な笑みを浮かべながら、ゆっくりと此方へ向かって来る…


私はたじろいだ…額に汗が滲んだ…


(んっ?これは…いつか感じたことのある感覚だ…)


(そうだ!これは数年前、下栗城で常楽寺殿と剣術の稽古をしている時に感じた感覚と同じだ!!とすれば…)


「どうした?永田殿?!いつもの様に勇ましく討って来ぬのか?!」


「御主の方こそ槍の長門とその名を轟かせた御方…何故討って参らぬ?…」


「ふっふっふ…ならば此方から参ろうか?!」


渡辺殿が打ち込んで来た!


鋭い突きである…


が…やはり…私は簡単に躱すことが出来た…


その顔には未だ不適な笑みが浮かんでいる...


(渡辺殿は、私を討とうとはしていない…?)


(常楽寺殿と同じ戦法ならば…此方を討とうとは思っていない筈…)


(ただ、此方が討っていっても、ひたすらに躱されるだけ…)


「渡辺殿、御主、某を討つ気は御座らぬのか?!」


「左様、流石じゃな?!永田重兵衛殿…ただ、御主が討って参れば、ひたすら躱すのみ…」


「何故じゃ?!槍の長門と異名を取る程の腕前の御主が?!」


「槍の長門か…それはもう随分前の話じゃ…今、御主と討ち合っても、某に勝ち目は無いであろう…ならば、ひたすらに躱すのみ…しかし…」


「しかし…如何された…?」


「しかし…それ以上に…何故、隣国同士で、こうして。いつまでも殺し合わねばならぬのか…?…何故…隣国同士で仲良う共存共栄する道を模索出来ぬのか…?…御主のような御仁とならば、分かり合えんものかと…考えながら、今こうして、永田重兵衛殿、御主と対峙致して居る処…」


私は渡辺殿の顔を見た…そして…その目を見た…


悲しみに震え、目に涙をいっぱいに溜めながら、真っ直ぐに私の目を見つめている…


「渡辺長門殿、御主の今、申したこと…本心ならば、某は御主を討ったりはせぬ…ただ、御主も豊田勢を討ってはならぬ!ただ躱すのみにして下されっ!!そして…我等の共存共栄の道をしっかり模索して下されっ!!某、陰ながら応援致す…では御免仕つる!」


「な…永田殿…相分かった!」


私は小さく笑って頷き、千代王と共に、その場を後にした…




(下妻にも、あの様な考えの御方が居るのかぁ…)


私の胸に小さな希望の灯りの様なものが灯った気がした…


私は何か嬉しい様な気持ちになって、道鎮殿を探した…


(居た居た!道鎮殿だ!!豪快な太刀捌きで相手をなぎ倒している!…良し!三五郎も、しっかり付いているな…)


(おっ、外記様と与五郎殿!…外記様は戦場では別人格だな…凄い迫力で、相手が逃げ回っている…与五郎殿も立派になられたなぁ…良し!梶右衛門と仁助が、しっかりガードしているな…うん、これなら大丈夫だ…)


私は少し安心して武藏守様を探した…


(あっ、居た!あの鮮やかな紫紺の甲冑は武藏守様だ!!良し!源蔵がしっかり付いている…んっ?…何だ?あの徳利は?!…また、酒を呑みながら…まぁ…良い…あれが源蔵のスタイルなんだから…)


(しかし、敵・味方入り乱れて凄い事になっているなぁ…)


と、その時、私は、源蔵の横を目にも留まらぬ早さで擦り抜けて行く一人の侍を見逃さなかった…


「しまったぁっ!あれは…『下妻の隼(はやぶさ)』と恐れられている大串松之丞殿…」


(あそこを突破されると直ぐに豊田丸の本陣…………………殿が危ないっ!!)


私は千代王と共に、急いで殿の元へ向かった………


                 (次回に、つづく…)

敵将の一人である渡辺長門殿と心を通わせることが出来た重兵衛…


御味方達の奮戦ぶりを頼もしく眺めていると、隼の如き素早さで豊田丸本陣に突入して行く一人の侍が…


次回「つぐみ龍の伝説」…


『第26話 五家・千本木の戦い (其の6)』にどうぞ御期待下さい!

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