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21 五家・千本木の戦い (其の1)

さあ、いよいよ、豊田家 VS 多賀谷家…史上最大の戦いの火蓋が切って落とされます!


多賀谷家屈指の手練(てだ)れ達が、次々に重兵衛に襲い掛かって参ります…


果たして重兵衛は、難敵を倒し、大切な仲間達を守り切ることが出来るのでしょうか…?


それでは本編を、どうぞ、お楽しみ下さいませ…

年が明けて永禄五年(1562年)。


豊田勢と多賀谷勢は睨み合ったまま動かなかった。


更に年が替わって永禄六年(1563年)。


多賀谷が動いた…


下妻多賀谷が、5000余兵を率いて翌朝、岡田・猿島に侵攻して参る、との情報が小治郎殿から入ったのだ!


私は急ぎ、石毛城へ向かった…


石毛城には、古間木城主・渡辺周防守勝重様が来ていた…


「おぉ、これは重兵衛殿!元気そうじゃの?!」


「はぁっ、周防守様も!」


「如何した重兵衛?!」


「はぁっ!只今、小治郎殿からの知らせが入りまして…、多賀谷5000余兵が岡田・猿島方面へ侵攻して参るとの事に御座ります!!」


「何っ?!多賀谷が五千とな?!」


「はぁっ!」


「来やがったか?!多賀谷の奴らめっ!」


と言って周防守様は立ち上がった…


「周防守殿、御加勢願えんかっ?!」


「勿論に御座る!豊田家と当家は昔から親戚みたいなもの…多賀谷は共通の敵、例え…政重殿が来るなと申しても、古間木勢は参りますぞっ!!」


「忝(かたじけ)ない、周防守殿っ!」


「うむ!それでは某、支度がある故、此れにて御免っ!!」


「重兵衛っ!各城主に全軍出陣致すと伝えてくれっ!!」


「はぁっ!」


「わしは豊田城へ参り、兄上に知らせて参るっ!」


私は、向石下城から四ヵ村の各城へ立ち寄り、全員出陣と伝えて袋畑城へ戻った…


吉沼には道鎮殿が、下栗へは大炊殿が、其々伝えてくれた…


この場合は、先ず、全軍が豊田城に集結し、全員で金村別雷(かなむらわけいかずち)神宮に参集し、先勝祈願をしてから出陣するのが豊田流のスタイルである…


まだ薄暗い明け方前、豊田勢全軍が金村別雷神宮に参集した…


宮司の方が大切そうに大きな箱を運んできた…


箱の中から立派な軍旗が現れた…


豊田家の家宝の一つ「蟠竜旗」である!


豊田家出陣の際には、必ず、掲げる、豊田家のトレードマークであり、家宝であり、神旗なのだ!


しかし…この10年程で、豊田・石毛領内には随分と人が増えたようである…


侍の数も倍以上になっていた…


多賀谷との合戦に於ての連戦連勝効果もあろうか?


おっと、殿のスピーチだ!


「豊田・石毛・四ヵ村・北部地域、そして古間木の勇者達よ!よくぞ、ここ別雷(わけいかずち)神宮に参集してくれた!!礼を申す!我々は、これより、岡田・猿島へ侵略せしめんとする下妻多賀谷を成敗しに参るっ!!下妻多賀谷は五千!対して我々は三千五百!皆の衆の力を持ってすれば、充分に勝てる数じゃっ!!皆の衆と一緒なら、某も安心して出陣出来るっ!さぁ、今こそ、皆の力を見せる時ぞっ!!八幡太郎様より拝領仕ったこの地と、愛する家族の為、いざ、共に参らんっ!!」


「おぉぉっ!」「おぉぉっ!」「おぉぉっ!」「おぉぉっ!」「おぉぉっ!」「おぉぉっ!」「おぉぉっ!」「おぉぉっ!」


(いよいよ、五家・千本木の戦いか…この戦は、激戦の末、勝利する筈だが…相当の犠牲を伴うはず…何が何でも、治親様・政重様・外記様・道鎮殿・与五郎殿・武藏守様の御命を守り抜かねば…)



私は、その一心で、袋畑の精鋭数名に、お願いしておいたのだ…


マンツーマンでのディフェンスを…


先ず、治親様には一番腕の立つ安兵衛を、政重様には源左衛門を、外記様には梶右衛門を、道鎮殿には三五郎を、与五郎殿には仁助を、武藏守様には源蔵を配して、其々にマンツーマンでガードして貰う事になっているのだ!




豊田勢3500名は、古間木城から、向石下城を経由して、五家・千本木を目指した…


道中は、皆、自信に満ち溢れ、元気一杯であったが…


五家・千本木が近づいてくると、少しづつ無口になり、緊張した面持ちの兵が増えていった…


無理もない…


3500 VS 5000なのだ…




夜明けと共に、豊田勢3500が、五家・千本木に到着した…


私と袋畑勢200は、最前列に陣取った…


その後方西側に下栗勢300、その東側には肘谷勢200、その間に唐崎勢100、長萱勢100、そのまた後方西側に伊古立勢200、その東側に吉沼勢400、その間後方に石毛勢500、そのまた後方西側に向石下勢300、その東側に古間木勢500、そして、その間やや後方に本陣豊田勢700、総勢3500!!


(小国ながらも豊田・石毛勢は、精鋭が居並ぶ中々の軍団になったものだ…)


(3500でも充分に勝てる!)


因みに此度も袋畑勢は火消し装束で揃えて居るが、私は、その中に黄金の甲冑を身に付けて居た…




そして、朝靄(あさもや)の向こうに、いよいよ、下妻多賀谷5000の大軍が見えてきた…


私は、先に選抜した6人を呼んだ…


「此度の戦は、これ迄以上に激しい戦いになるでしょう…なので、安兵衛、源蔵、源左衛門、仁助、三五郎、梶右衛門…其々に御願いした役目を全うして下さい!大変な任務だと思いますが、どうか宜しく御願いします!!」


「はぁっ、殿っ!」「はぁっ、殿っ!」「はぁっ、殿っ!」「はぁっ、殿っ!」「はぁっ、殿っ!」「はぁっ、殿っ!」


「内蔵助っ!此度は、これ迄で最も激しい戦いとなるでしょう…手強い敵には二人掛かりで挑むこと!今一度、皆に伝えて下さいっ!!」


「はぁっ、殿っ!」




袋畑の軍旗…黄金の稲妻マーク「⚡」が揺れ始めた…


天空に雲が立ち込め、その雲を引き裂く様に稲妻が駆け抜けた…


敵の動きがピタリと止まり、最前列の兵が一斉に横に広がった…


物凄い数だ…


身体の大きい侍が、ど真ん中に現れ、此方に向かって叫んだ…


「そちらに御座(おは)すは、永田重兵衛常充殿と御見受け致す!某は、多賀谷家家臣・桐ヶ瀬 弾正(だんじょう)と申す!これ迄の、当家に対する御主の暴挙、断じて許し難し!依って、これより成敗致す!!」


私は間髪を入れずに言い返した…


「何を申されるのかと思えば、桐ヶ瀬殿っ!いつもいつも当家の領地に不当に侵入して参るのはそちらの方で御座ろう?!依って此度も成敗されるは、そちらの方では御座らんか!!」


「な…何を小癪(こしゃく)な…掛かれぇぇぇぇぇぇっ!」


おおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!!


多賀谷5000が雪崩を打って此方に向かって突進してきた…


「皆さん、参りますよっ!手強い敵には二人で掛かるのですっ!!宜しいかっ?!」


「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」………


「掛かれぇぇぇぇっ!!」


おおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!


遂に、五家・千本木の合戦の火蓋が切って落とされた!


私は千代王と共に先陣を切って突っ込んで行った…


(これだけの大軍だ…必ず多賀谷政経と白井全洞が、敵本陣に居るに違いない…)


しかし…何せ、此の大軍である…


ちょっとや、そっとでは、敵本陣に辿り着く事など出来る筈もなく…


(先ずは地道に敵を倒して行く他無い様だな…)


私は桐ヶ瀬弾正殿を探したが、なかなか見付けられなかった…


私は、ひたすらに敵の刀や槍を祓いながら、前へ前へと進んで行った…


(まるで底無し沼に居る様だ…)


進んでも進んでも、敵将らしき侍を見付けられず…


次から次へと敵兵が、私の首を獲ろうと襲い掛かって来る…


刀と刀がぶつかり合い、身体と身体がぶつかり合う…


気を抜けば、槍で突かれ、刀で斬り付けられる…


(戦乱の世…乱世…)


(何故…こう迄して…殺し合わねばならぬのか…?)


(いやいや…甘い考えで居ると…必ず寝首を掻かれてしまう…)


(何とか先に敵将の首を獲らなければ…)


(殺るか…殺られるか…そういう時代なのだ…)


(殺らなければ…殺られてしまう…)


(戦国時代…)


私は更に、前へ前へと進んで行った…


                    (つづく)

5000の大軍を相手に3500の軍勢で立ち向かう豊田勢…


その中で戦国乱世の恐ろしさを痛感する重兵衛…


次回は、桐ヶ瀬弾正 VS 永田重兵衛!


強敵相手に重兵衛は勝機を見出だせるのか…?


次回、「つぐみ龍の伝説」は…


第22話「五家・千本木の戦い (其の2)」にどうぞ御期待下さい!


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