⑲ 御屋形様…(戦国常陸最強の不死鳥!)
いよいよ…我等が御屋形様…
戦国常陸最強のフェニックス・小田氏治様の登場です!!
重兵衛とは、初対面の筈ですが…
それでは、どうぞ本編をお楽しみ下さいませ…
その年…永禄元年(1558年)は、多賀谷勢による豊田領侵略は無かったのですが…
多賀谷政経は佐竹義明と共に、我等が御屋形様である小田氏治様と激しく争っていました…
明けて、永禄二年(1559年)九月、小田領内の海老ケ島が、佐竹・多賀谷連合軍に攻められ、城将の平塚自省殿が討死落城と…我が御屋形様の小田勢は形勢不利となってしまいました…
にも拘らず…我が御屋形様から…
「豊田・石毛は、我が最後の砦なり、お主等は、その地を、何としても死守しておくべし!」との御達しが来ていたのです…
流石…常陸最強の弓取りと謳われた御方だ…御屋形様は…
斯くして、この年も多賀谷勢による豊田領への侵略は見られませんでした…
更に、明けて、永禄三年(1560年)、センセーショナルな、あの事件が起こりました…
尾張国の織田信長様が、駿河国の今川義元様を、桶狭間にて討ち取った、あれです…
以来、織田様が西国方面では、天下取りへ一歩抜きん出た存在となって行きましたが…
東の小田氏治様は、と言えば…
相変わらず四方を敵に囲まれ、四面楚歌な状態が続いては居るものの…
強力な家臣団の奮闘もあって、まだまだ…
否…益々…血気盛んになって居る御様子…
我が殿・豊田安芸守治親様も、当然の事ながら…その御屋形様の強力な家臣団の一人として、その名を連ねる武将なのである…
今では、殿からの御達しも有り、常楽寺殿と私と小治郎殿の三人で鉄壁とも言える、対下妻防御網を敷いているので、多賀谷も、そう簡単には、この豊田領に手出し出来ない様であった…
しかも、道鎮殿を筆頭に、四カ村の各城も、更に強固な要塞へと進化を遂げていたので、豊田・石毛領内への侵入など、かの謙信公ですら、そう易々とは出来まい!と私は思っていた…
更に、更に、明けて永禄四年(1561年)…
私も34歳位になっているのだろうか…?
遂に、御屋形様からの御達しが下ったのだ…
海老ケ島城奪還に成功した宍戸入道義綱様と、豊田・石毛連合軍で密かに、下妻領内の加養宿・古沢宿に侵入して、多賀谷に奇襲を掛けろ!と言うものであった…
豊田城には、政重様と道鎮殿と私が呼ばれていた…
「兄上、此度の出陣、某が参ります!かなり危険の伴う任務故、兄上を参らせるわけには行きませぬ!!しかも、大将が宍戸殿では兄上と同じ安芸守で御座る…ややこしいし…第一、釣り合いが取れませぬ!兄上が大将なら、未だ話はわかりまするが…」
「次郎、頼めるか?わしは、どうも…宍戸殿とは、反りが合わぬのじゃ…」
「お任せ下され、兄上!」
「道鎮と重兵衛も、次郎を助けてやってくれ!」
「ははぁっ!」「ははぁっ!」
その後、政重様と道鎮殿と私は石毛城に来ていた…
「行っては成りませぬぞ、政重様!」
「確か…わしは…この進撃で大怪我するんじゃったな?重兵衛?!」
「左様に御座ります!この任務はとても危のう御座る、政重様!どうか某にこのお役目、御譲り下され!」
「馬鹿抜かせ重兵衛!こういう時の為に、この飯岡道鎮が居るのじゃ!!」
「駄目です!絶対に駄目です!!歴史と言う名の魔物が今か今かと政重様・道鎮殿・外記様・与五郎殿・武藏守様の御命を狙っている気がしてなりませぬ!ここは、何と言われようとも、この重兵衛めに、お任せ下され!!」
「いつも…すまぬな…重兵衛…お主にばかり…危険な役目を申し付けてな…」
「勿体無う御座る…政重様!殿の御命は元より、政重様・道鎮殿・外記様・与五郎殿・武藏守様の事を守りきれなければ…この重兵衛、何の為に…この不思議な力を携えて…この戦国乱世の、この地に流れ着いたのか?!皆様の為に、この重兵衛の力、使わせて下され!!」
「相分かった重兵衛!しかし、絶対に死ぬなよ、重兵衛っ!!何としても無事に帰って参るのじゃぞ!!!」
「ははぁっ!!」
斯くして、明日未明…宍戸様が吉沼の栗崎城に入るとの事なので、豊田・石毛・袋畑連合軍500名の大将として、私が、宍戸様と共に出陣することになったのでした…。
未だ夜明け前である…
袋畑城内では、大磯殿の発案により、袋畑勢全員が火消し装束での出陣の準備をしていた…
(戦国時代に火消し装束なんて無かった筈だが…何故か…この豊田の地には…まるで赤穂浪士の様な火消し装束が揃っていた…)
「御城代!大変で御座る!」
「如何した?安兵衛?!」
「と…殿の黄金の甲冑が…無くなっておりまする!!」
「何と…?!」
「如何いたしましょう?!御城代?!」
「探すのじゃ!城内を隈無く探すのじゃ!!」
「はぁっ!」
城内は大騒ぎとなった…
「殿っ!申し訳御座いませぬ…」
「黄金の甲冑が無くなりましたか?」
「は…はぁ…左様に御座ります!」
「心配は無用で御座る、大磯殿!」
「な…何故に御座りますか?!」
「実はですね…大磯殿には伝えておくべきでしたね?!先に謝っておきます…」
私は頭を下げた…
「と…殿!その様なことはお止め下され…して…何故に御座りますか…?」
「いや、実はですね…昨年…小治郎殿から…多賀谷の白井全洞が、当家の家宝・黄金の甲冑を狙っている様だ…との情報受けましてね…伊古立の道鎮殿に預かってもらっているのです…」
私はペロリと舌をだした…
「何と…そうでしたか…では…昨夜まであった…あの黄金の甲冑は…?」
「あっ、あれは真っ赤な偽物です!そうとも知らずに多賀谷の間者が持っていったのでしょう?!」
「そうでありましたか…」
「敵を欺くには先ず味方から…とも申しますし…大磯殿、どうかお許しを…」
「流石、殿!皆、まんまと騙されました…しかし…此度の甲冑は如何いたしましょう?」
「皆さんと同じものを身に付けましょう!」
「しかし、今や、殿と言えば…黄金の甲冑が代名詞…」
「今日は特別任務なので、私も火消し装束で良いです!」
「承知仕りました!」
私と大磯殿は、目を見合って互いにニヤリと笑った…
ヒヒーン、ブルルルルルッ…
北斗王の嘶きだ!
伊古立から道鎮殿以下100名が袋畑城の守りに入ってくれた…
「重兵衛…如何した?!…皆で火消し装束など身に纏って…?!」
「道鎮殿、今日は特別任務なので大磯殿の発案で、この出で立ちで出陣致します!!」
「重兵衛様と言えば、向石下城を見事な火消しで救った事…今でも語り草で御座る…ならば、此度の奇襲作戦は、この出で立ちが相応しいかと存じまして…」
「うんうん、良い良い、流石、大磯殿じゃ!」
「それでは道鎮殿、城を頼みます!」
「うむ、此度は城代の大磯殿も出陣じゃ!袋畑城は、わし等に任せろ!!」
「はい、それでは行って参ります!」
「うむ、無事に戻れよ、重兵衛!」
私は道鎮殿の目を見て頷き、千代王に跨がった…
「それでは皆さん、先ずは栗崎城へ参り、宍戸入道義綱様の軍勢と合流します!」
私達が栗崎城に着くと、もう、御本家豊田城から250名、石毛城から200名が到着していた…
治親様と政重様も来ていた…
「何じゃ何じゃ、その格好は…重兵衛?!」
「はぁっ、此度は特別な任務なので…」
すると大磯殿が言った…
「重兵衛様と言えば、向石下城での火消しが有名で御座る!此度の奇襲攻撃、是非この出で立ちでと、某が御願いしたところ、重兵衛様が快くお許し下さいましたもので…」
「良いではないか次郎、奇襲攻撃に火消し装束とは、洒落が利いていて良い良い!」
そこへ宍戸様の軍勢300名が、夜霧と共に栗崎城へ到着した…
何と、先頭に立って居るのは御屋形様の小田氏治様であった…
「おー、治親っ!、政重っ!外記っ!元気であったか?!おぉっ!そこの若武者は…与五郎か?!立派になったのう!!」
「だ…誰かと思えば…御屋形様っ!何故…この様な処へ?!危のう御座るっ!!」
「全くじゃ!叔父上っ!!こんな多賀谷の目と鼻の先迄参られるとは…危な過ぎますぞ!」
「馬鹿こけぇっ!お主等が居るではないか?!
わしゃ、お主等が居る処が、この世で一番安全な場所だと思って居るのじゃぞ!!がっはっはっはっはっ…
おっ、そうじゃ!あ奴は何処じゃ?!あ奴はっ?!
黄金の甲冑を身に纏った雷神の如し奴と申すは?!
確か…永田…重兵衛…常…」
(来たぁぁぁぁぁぁぁっ!戦国常陸最強の不死鳥っ!)
「御屋形様っ!某めが永田重兵衛常充に御座ります…」
私は千代王から降りて片膝を着いて頭を下げた…
「おぉっ!その方か?!面を上げよ…」
「はぁっ!」
私は顔を上げた…
「んっ?!…はて…?!…何処かで見掛けた顔じゃな…?」
「某、御屋形様に御目通り叶うは初めてで御座いますが…某めも…御屋形様とは…何処かで御会いしたような気がしておりまするっ!」
「うんうん、まぁ良い…何れ思い出すであろう?!処で、御主、黄金の甲冑は如何いたした?何故、火消し装束等を身に付けておるのじゃ…?」
「はぁっ、此度は奇襲攻撃ですので…」
「判ったぁっ!判ったぞ…御主と言えば…確か…向石下城を多賀谷の火炎攻撃から救ったと聞いておるが…それでかっ?!」
「ははぁっ!恐れ入りまするっ!」
「がっはっはっはっはっは…やはりそうか?!
御主、洒落とるのぅ?!気に入った!!
がっはっはっはっは…雷神の遣いが火消し装束…
こりゃ洒落とるわい!!がっはっはっはっは…」
「永田殿、某、宍戸安芸守義綱と申す!此度の奇襲攻撃の指揮を執らせて頂く…宜しく頼む!!」
「はぁっ!永田重兵衛常充と申します!!こちらこそ宜しく御願い申し上げます…」
「うむ…それでは御屋形様、そろそろ行って参ります!」
「おぉっ!義綱、武運を祈る!!」
「はぁっ!有り難う御座います…
それでは宍戸・豊田連合軍、出陣いたす!
進めぇっ!!」
ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ…
私は御屋形様、殿、政重様、外記様に一礼して、千代王に飛び乗り、宍戸勢300名の後に続いて豊田勢500名を率いて出陣した…
「外記、ちくと城の中へ参ろう!
治親と政重も、中でちくと話そうじゃねぇか?!」
「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」
「永田重兵衛常充…あ奴の出自は…以前、政重から聞いた話だと…」
「はぁっ!四百七十年後の世から…この戦国乱世の…吉沼に迷い込んで参ったと…」
「そうじゃったそうじゃった…で…、
御主らは…それを…信じて居るのじゃな?」
「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」………
「三人とも…か?」
「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」………
「真か…?」
「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」………
「何故じゃ…?」
「はぁっ…我等…三人共…同じ様な夢を…見ておりました…」
「何?!…夢…とな…?」
「はっ!特に…月夜の晩には…必ずと行って良い程…三人が三人共…同じ様な夢を見ておりました…」
「して…その夢とは…どの様なものなのじゃ?」
「はっ!実は…豊田の城にて…月見をしておる夢に御座ります…」
「何?!月見とな?!良い夢じゃの…それで?」
「はっ!その夢の中では…豊田の城は…天守を備えた…五階建ての雄壮なもので…」
「ちょっ?!…待て!…政重っ!!待て待て待て…
その夢…わしも見ておるぞ!豊田城の天守閣で月見をしておると…必ず現れるのが…永田重兵衛…奴じゃったわ…あ奴…いつも…旨い煎餅や…茶色い甘い南蛮菓子を振る舞ってくれたわ!!」
「左様に御座ります!」「左様に御座ります!」「左様に御座ります!」
「なぁっ?!永田重兵衛じゃ!そうじゃそうじゃ…
永田重兵衛常充…あ奴じゃったわ!!わしの夢の中にも…あ奴…ちゃんと出てきて居ったわ!!」
「ま…まさか…此処に居る四人が…四人共…同じ夢を見ておったとは…」
「あ奴が吉沼に参った時の様子を話してみよ、外記!」
「はっ!某が直接見たわけでは御座りませぬが…見ていた者達が申すには…龍に跨がった雷神の遣いが、二人で手を繋いで、この吉沼の地に舞い降りて参ったと…」
「龍に跨がった雷神の遣い…とな?」
「はっ!物凄い音がしたので、直ぐに道鎮に見に行かせた処…我が城門の近くで重兵衛の奥方が…そして、小貝川の畔に重兵衛が倒れて居たとのこと…直ぐに城の中に入れて手当てを致すと…二人共、目覚めて…四百七十年後の世から参ったと…」
「ふむ…不思議な事があるものよのぅ…
治親、何故…家臣にしようと思ったのじゃ?」
「重兵衛は、某の目を真っ直ぐに見て、話をしておりました…どうも、嘘偽りを申しておるようには思えず…先ずは…吉沼で客分として様子を見て居りました処…肘谷城に多賀谷の奴らが奇襲を掛けて参りました…その時、敵将の白井全洞を目掛けて突進していく重兵衛の姿は…龍に跨がった雷神の如しであったと…」
「叔父上、その光景は今でも、某の目に焼き付いておりまするっ!」
「そうか…そして…以降…あの働きじゃ…治親、頼もしい奴が舞い降りて参ったのぅ?!」
「真に!」
「大事に致せよ…無事に戻ればな…」
「はぁっ!」
「んじゃぁ、わしゃ戻るでよ!
御主らは…何としても…この地を守ってくれ!!」
「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」
「わしゃ、また、佐竹の奴らと、結城攻めに行って来っからよ!皆、頼んだぜっ!!」
「はぁっ!」「はぁっ!」「はぁっ!」
「いい返事だな!あばよっ!!」
(つづく…)
如何でしたでしょうか?
小田氏治様…
豪快、且、ユーモラスな感じ…
今回の夢の妄想キャスティングは…
小田氏治…柳沢慎吾さん!
私は、この人しか居ないと思って、楽しく執筆させて頂きました…
皆さんは、どんな方をイメージされたのでしょうか…?
次回は、重兵衛と宍戸様が、御屋形様の命を受けて、非常に危険なミッションに挑みます…
それでは、次回「つぐみ龍の伝説」…
「⑳ 加養宿・古沢宿への進撃」に、どうぞ御期待下さい!




