⑱ 新城主誕生!
いよいよ、袋畑城主となった永田重兵衛常充!
御家来衆も頼もしい方々が、揃っています!!
先ずは順風満帆な船出か…
それでは本編をお楽しみ下さいませ…
私と奥さんは久々に夫婦水入らずで、お喋りをしながら袋畑へ向かって歩いていた…
「道鎮殿は、道鎮殿を慕う15人の方々と一緒に、嬉しそうに伊古立へ旅立っていったよ!」
「まぁ、道鎮殿は、やっぱり人気者なのね?!」
「うん、あの人柄だもの…侍らしく、一本気で、情に厚く、涙もろい…誰からも好かれる好漢だ!」
「そう言うあなたも…結構人気者みたいよ?!」
「僕は、そんな…人気なんて…」
「ほら!見て!!あんなにいっぱい!!!」
袋畑城の入口付近に、皆さんが歓迎の意を表すように幟をいっぱい立てて待っていてくれた…
「おぉっ!あれは…?!」
「疾風迅雷…電光雷轟…迅雷風烈…雷轟電撃………」
様々な雷をイメージした四文字熟語が認められた幟旗が10本…いや…20本は…城門で旗めいている…
「あなたのことを皆さんが、雷神の遣いと呼んでいたから…歓迎の意を示してくれているんだわ!」
「そ…そうかなぁ…」
私達は城門の前に着いた…
そこには…20本…いや…30本…40本…50本と…本丸まで次々と幟旗が立ち並んでいた…
「重兵衛様、奥方様、ようこそ袋畑城へ!!」
長老らしき方が、私と奥さんに頭を下げて挨拶してくれた…!
「某は、この袋畑城の城代家老、大磯内蔵助と申します。これは妻のりつに御座ります。」
「大磯殿…昨夜、右京様の葬儀を済まされたばかりなのに…わざわざ…この様なお出迎えをして下さり…重兵衛、恐縮至極です…これは妻の有希子です。」
「有希子です!どうぞ宜しく御願い致します!!」
私の奥さんが元気良く挨拶したので、皆さんが笑顔になり場が和んだ…
「さぁ、重兵衛様、奥方様、どうぞ中へお入り下さいませ!今日から…今日から御二人が、この袋畑城の城主に御座ります!!」
「有り難う御座います!!」
私と奥さんが城門を潜ると、歓声があがった…
「ようこそ重兵衛様ぁっ!」
「袋畑へようこそっ!!」
「重兵衛様ぁっ!!!」
「雷神様ぁっ!」「雷神様ぁっ!!」「雷神様ぁっ!!」
「あなたも凄い人気ね?!ちょっとしたスターみたいよ!」
「や…やめてくれよぉ…」
私と奥さんは、大磯夫妻の後について、本丸の中へ入っていった…
外見よりも、城内は広く感じた…
一番奥の広い部屋に入ると、袋畑の侍達が勢揃いしていた!
総勢20名程か…皆、屈強そうな侍衆である…
りつ殿と私の奥さんは1つ手前の部屋に入ったようだ…
大磯殿は私を一段高い皆を見渡せる上座に案内して、私の左手前に着座した…
皆、頭を下げて、両拳を畳に着けて座っている…
「皆さん、面を上げて下さい!」
……………………………………………………………
大磯殿が言った…
「殿、ご挨拶を!」
「あ…そうか?!…皆さん…某…永田重兵衛常充と申します…先日、下妻の熊蔵に対し、一歩も退かずに戦い、我々を鼓舞し、東武士の矜持をお示し下さり、天に旅立たれた、右京様の遺志を受け継ぎ、誠に僭越では御座いますが…某…本日より…この袋畑城を死守せよと、治親様より仰せ仕りました…皆さん、どうか宜しく御願い致します…皆さん…そろそろ面を上げて下さい…」
一同、面を上げた…
そして、大磯殿が言った…
「手前共は、右京様に忠誠を尽くして参りました…しかし、右京様は…先の戦で…あの様な事に…そして…その後…直ぐに…重兵衛様…あなた様が…右京様の仇を討って下さりました…しかも右京様の形見である二刀流の太刀で敵に止めを刺して下さり…手前共も何とか溜飲を下げる事が出来申した…その時以来、この袋畑の新城主は重兵衛様をと…皆で話して参った次第…しかも、あなた様は、右京様が大切に保管なされていた…黄金の甲冑を身に纏い…戦場を駆け抜けて参られました…これも…きっと…何かの御縁…此処、袋畑城の新城主は、重兵衛様、あなたを置いて他には居りませぬ!重兵衛様、本日…只今から…あなた様が我等の殿!以降、某達を御導き下さいます様に…」
「殿っ!」「殿っ!」「殿っ!」「殿っ!」「殿っ!」「殿っ!」「殿っ!」「殿っ!」………………………………
「皆さん、有り難う…有り難う…」
「それでは、殿、本日、此処へ参集仕りました当家の家臣二十名の氏名を読み上げます故、顔と名をお定め下さいます様に…先ずは某から…大磯内蔵助良雄(45)、これなるは倅の大磯主税良金(16)、吉田忠右衛門兼亮(64)、原惣左衛門元辰(56)、小野寺十外秀和(61)、片岡源左衛門高房(37)、磯貝十郎右衛門正久(25)、堀江弥兵衛金丸(77)、堀江安兵衛武庸(34)、富森助左衛門正因(34)、赤崎源蔵重賢(35)、奥平孫太夫重盛(57)、不破梶右衛門正種(34)、岡野銀右衛門包秀(24)、前原仁助宗房(40)、大高賢五忠雄(32)、間新八郎光風(24)、勝田新右衛門武暁(24)、矢頭右衛門八教兼(18)、神崎三五郎則休(38)…以上、袋畑城内家臣団二十名に御座りまする…」
「大磯殿、有り難う御座いました…頼り甲斐のある方々、これからが楽しみな方々…揃うて居りますね!右京様が命を懸けて守って参られた…この袋畑の地を…今、此処に居る皆で力を合わせて守って参りましょうぞ!!」
「ははぁっ!」「ははぁっ!」「ははぁっ!」「ははぁっ!」「ははぁっ!」……………………………………………
「先ず、私からお願いがあります!多賀谷を見張る為の物見櫓を城内に2つ建てたいと思います!!そして堀をもっと深くしましょう…」
等と話していると、栗崎城の馬廻りの方の声がした…
「重兵衛様ぁっ!吉沼の殿が、千代王を重兵衛様へ、お渡しするようにと仰せで御座います!!」
私は立ち上がって襖を開けた…
「おぉっ!千代王っ!!」
千代王は前肢を挙げて嘶いた!
「良く来たな、千代王!有り難う!有り難う!」
私は千代王の鼻面を撫でた…
「こいつは重兵衛様の言うことしか聞かんのです!」
「そんなことは御座らぬ…ほら、大人しい良い仔です!」
私が首を撫でると、千代王はベロンと私の頬を舐めたので、一同皆で笑った…
因みに北斗王は、道鎮殿の伊古立城へと贈られたようです…
「これで百人力だ!これからも宜しくな千代王!」
そう言って、私がまた千代王の鼻面を撫でると…
千代王がブルンッと言って頷いた様に見えたので、また、一同皆で笑った…
その夜、大磯殿が発起人となって、私と奥さんの歓迎会を城内で開いてくれた…
私は右京殿の奥さんを見つけた…
「この度は何と申し上げて良いか…」
「重兵衛様、どうか、御気遣い無き様に…無き夫も重兵衛が新城主に御成りになって、喜んでいるはずです…あの人の…夫の仇を…重兵衛様…あなたが討ってくれたのですから…しかも…あの人の刀で…敵に止めを刺していただき…皆、どれ程、あなたに感謝したか知れませぬ…」
「その様に言っていただけると某も少し胸が楽になりますが…御主人を亡くされた奥様の胸の内を思うと某、お掛けする言葉が御座りませぬ...」
「何を仰います…主人は私の胸の中で永遠に生き続けて参ります!これからは、主人が命を懸けて守って参った…この袋畑の地を…重兵衛様…今度は…あなたが…その御命を懸けて…守って行かれるのですね…私は陰ながら、重兵衛様の御力になれます様に生きて参る所存です…」
「重兵衛、千人力を得た思いで御座る…」
そこへ、政重様が、早奴に乗って颯爽と現れた!!
「おぉっ!皆の衆、やっとるかぁっ?!」
「おぉっ!政重様じゃ!」「おぉっ!政重様ぁっ!」
「さぁ、政重様もどうぞ御上がり下さい!」
(政重様も、やっぱり慕われているんだなぁ…)
「おぉっ!右京殿の奥方…この度は…この様な事になってしまい…誠に申し訳御座らぬ…何と言って良いものか…」
「政重様、お辞め下さい!昨日は安芸守様からも過分な御褒美を頂戴致しました…主人も喜んでいる筈です…」
「健気な御方だ…困ったことがあれば、いつでも某に言ってくれよ!」
「政重様、御心遣い、有り難う存じます…」
「うむ…ところで重兵衛、宴も酣だろうが、ちと良いか?」
「はぁっ!」
政重様と私は客間に移動した…
「のう、重兵衛、此度の戦で右京と掃部が討死したのは誰の替わりであったのかのう?」
「はい、恐らく…外記様と道鎮殿の替わりではないかと…」
「やはりな…では武藏守の替わりは…?」
「はい…恐らく、これから先にかと…」
「与五郎の替わりもあると思うか?」
「与五郎様は、幼子であった為、考えなくて良いかと思っていたのですが…武藏守様の替わりになるには…格好の御立場に御成長成されそうなので…原親子には、これからも注意が必要かと…」
「うむ、そうじゃな…一度は救ったが…油断していると、歴史と言う名の魔物の餌食になりかねないな…」
「はい、なので、小治郎殿と道鎮殿と某とで、しっかりと栗崎城を守護して参ります!」
「頼むぞ重兵衛!吉沼は当家の最重要地の一つ、原親子を何としても守ってやってくれよ!」
「ははぁっ!」
「うむ!では、重兵衛、皆と飲むとするか?!」
「はい、ですが…政重様…あなた様も…未だ…脳卒中の心配が…あります故…程々に…」
「わかっておる、重兵衛…程々にする故…ほら、参るぞ!皆が待っておろうが?!」
同じ頃、下妻城内では、多賀谷政経、渡辺道全、白井全洞の3人が話し合っていた…
「此度も、永田重兵衛常充にやられたのう、全洞?」
「ははぁっ…あの者の魔力と申しますか…何やら…その…力が増してきているように…某には見受けられました…」
「熊蔵・虎蔵を持ってしても…まるで歯が立たなかったのう?」
「はい、このまま正面から戦っておりますと、当家の戦力が減少する一方かと…」
「何か良い手は無いものかのう?」
「殿、ここは一旦、和議を結んでおいて、暫く様子を見るのが得策かと…」
「うむ、流石に五百年もの間、かの地を治めて参った者達じゃわい…一筋縄では行かぬようじゃのう?」
「五百年…二十代もの間、一つの場所を統治し続けて参るとは…並大抵では出来ますまい…某には…何か…不思議な力が働いているような気がしてなりませぬ…」
「不思議な力とな…?」
「左様…いつぞやか…殿が某に申されておった様なことが…」
「わしが、その方に申したこと…?」
「はい、五百年前の…豊田家宗祖・将幹公の伝説を…殿が先代から聞かされたとか…」
「おぉっ!そうじゃった!あの時…ふと…父に聞いた話を思い出したんじゃ…五百年前…阿武隈川の合戦の折、豊田家の軍旗から、龍が飛び出し、荒れ狂う川の上に、橋のように横たわり、将幹公が先陣を切って、その龍の橋を渡り切り、手柄を立てた…と言う話じゃったな?」
「左様に御座ります…その後、八幡太郎様より、褒美として今の豊田の地と…今、永田重兵衛が身に纏っている…あの…黄金の甲冑が与えられたとか…」
「うむ…そうじゃった…」
「永田殿と言えば…ここ五~六年程で、ぱっと出現してきたように思われまする…そして…黄金の甲冑を見に纏う様になったのも…ここ数年…」
「何か匂いますなぁ…」
「「何とか…あの黄金の甲冑を奪い取れんものかのう?」
「某も同じことを考えておりました…」
「よし…全洞…お主…あの者の黄金の甲冑…何とか奪ってみよ!」
「ははぁっ!」
と、言いながら…白井全洞は考えていた…
(永田重兵衛常充…まさか…豊田将幹公の生まれ変わりではあるまいな?…いやいや…その様なことがある筈はない…きっと…あの甲冑に…あの金色に輝く甲冑に…何か仕掛けが施されてあるに違いない…そうだ…きっと…そうだ……そうに決まっている…)
(次回につづく)
何やら多賀谷の魔の手が伸びてきそうな感じですね…
次回は遂に、我等が御屋形様・常陸の不死鳥・小田宇治様が御登場です!
何か、重兵衛達に、難しいミッションを与えそうな…
それでは今宵は此処までにしとう存じます…
次回、つぐみ龍の伝説 「⑲ 御屋形様」にどうぞ御期待下さい!




