⑰ 栗崎城の別れ
第17話の題は「新城主誕生!」の予定だったのですが、「栗崎城の別れ」に変更となりました…
新天地へ旅立つ飯岡道鎮と永田重兵衛…
栗崎城主・原外記の粋な計らいに涙する飯岡道鎮…
それを見て心がホッコリする永田重兵衛…
門出の日に改めて、豊田安芸守治親への忠誠を誓い合う3人…
おっと…お後は、どうぞ本編で…
一夜明けて豊田城…
石毛次郎政重様、飯見大膳殿、下栗常楽寺殿、唐崎修理殿、そして私が治親様に呼ばれていた…
「昨日は、皆、良う働いてくれた!さぁ、皆、面を上げてくれっ!!」
「ははぁっ…」「ははぁっ…」「ははぁっ…」「ははぁっ…」「ははぁっ…」
「常楽寺殿、良う、下栗を死守してくれました!礼を申しますぞ…」
そう言って、殿が頭を下げた…
「何の!殿、某は城の守りを堅めただけで、手強い相手は皆、重兵衛殿が片付けてくれました!!」
「うむ…重兵衛、此度も良う働いてくれたな!礼を申すぞ…」
「ははぁっ…殿、某の様な者に勿体ない御言葉…重兵衛、恐悦至極に存じまするっ!」
「うむ、それと、次郎に、大膳…そして修理殿も…良う働いてくれました…礼を申します…」
「ははぁっ…」「ははぁっ…」「勿体ない御言葉…身に余る光栄に存じまするっ…」
「うむ…しかし…右京と…掃部は…気の毒な事をした…」
「はぁっ、しかし兄上…右京も掃部も、豊田侍の矜持を示す、立派な最期に御座りました…どうか、残された一族には、手厚い褒美を御願い申し上げまするっ!」
「相分かった!残された一族には、わしから直々に褒美を遣わす事にする…」
「ははぁっ…有り難う存じまする!今夜、袋畑城と伊古立城にて、其々の葬儀が営まれます故…」
「案ずるな次郎、双方とも、わしが直接持参いたそう…しかし、次郎…掃部の処にも…右京の処にも…子が居らぬ様だが…やはり…其々の地には…新しい城主を置かねばならぬだろうな?」
「はぁっ!その事ならば…某に考えが御座います…」
「何じゃ?申してみよ!」
「はぁっ!先ず…伊古立の地には…掃部とは竹馬の友でもあった、吉沼の飯岡道鎮を…そして…袋畑の地には…同じく吉沼の永田重兵衛常充を…其々、推挙致しとう存じまする!!」
「えっ?!」
「うんうん…それは良いな次郎!掃部と道鎮は竹馬の友であったな?!」
「はいっ!」
「袋畑には重兵衛とな?」
「はぁっ!重兵衛が戦場で、身に纏っている黄金の甲冑は…元々は右京が袋畑にて保管していた物に御座ります…なれば…重兵衛共々…袋畑に返すが宜しいかと…」
「おぉっ!そうじゃな?!黄金の甲冑は最早、重兵衛の代名詞!しかし、元々は右京が保管していた物…不思議な縁じゃな…新城主が重兵衛ならば袋畑の者達も納得であろう!!きっと右京も喜んでくれる筈じゃ…なぁ、皆?」
「御意!」「御意!」「御意!」「御意!」…
「あの…某で…務まりましょうか…?」
「袋畑は、下妻の喉元…当家にとっては最重要地域と言っても過言ではあるまい!御主以外の誰が務まると言うのじゃ?」
「あ…いや…その…某…」
「重兵衛、わしからも頼む…袋畑は、昔から下妻と事を構える際の最前基地…其処に、御主が、どっかりと構えていてくれたら、どれ程心強い事か?のう重兵衛、引き受けては貰えんか?この豊田の為に?!」
「ははぁっ…身に余る御言葉…謹んで御引き受け申し上げまするっ!この重兵衛、この命に代えても、袋畑を死守して参りまするっ!!」
「うんうん…」「うむ!」「右京殿も喜んでおいででしょう!」
皆さんが拍手してくれた…
「ははぁっ…有り難き幸せに存じまする…ははぁっ…」
斯くして私は、右京殿亡き後の袋畑城主に任命されたのであった…
そして、道鎮殿は、掃部殿亡き後の伊古立城主に任命されたのでした…
翌朝、豊田安芸守治親様からの書状を携えて、飯見大膳殿が栗崎城に到着していた…
「相分かり申した…と…治親様には宜しく御伝え下され、大膳殿。」
「ははぁ、外記様、招致仕りました。」
「道鎮、重兵衛、これからは同じく、城主と相成るが、今後も与五郎の事を宜しく頼む!」
「外記様…何を仰いまするか?これからも、某と重兵衛と小次郎とで、しっかりと与五郎様を御守り致して参ります故、どうか御安心下さいませ!!」
「すまぬ、頼むぞ…道鎮、重兵衛…」
「ははぁっ…」「ははぁっ…」
「道鎮殿、重兵衛殿、此度は誠におめでとうございまする!御二人が新城主と相成りますれば、きっと、右京殿も掃部殿も草葉の陰で喜んで居られる筈…今後も殿の御為、豊田、石毛、四ヵ村、北部地域の為、御尽力賜ります様、安芸守様に成り代わりまして、御願い申し上げまする…」
「はぁっ!」「はぁっ!」
「それでは、某は、これにて御免仕リまする…」
そう言って、飯見大膳殿は栗崎城を後にした…
外記様と道鎮殿と私は、私と奥さんが、吉沼に辿り着いてからの6年間の出来事を談笑して過ごした…
束の間の…何と楽しい時間であったことか…
私にとっては、何物にも換え難い一時であった…
(歴史上では…多賀谷の急襲に遇い、幼い息子と共に潔く自害した城主と、その親子を護る為、最期迄、たった一人になっても多賀谷勢と対峙して果てた無双の侍が…未だ...御二人とも生きておられるのだ…私の目の前に居る、この御二人と、殿の為に、豊田の為に、未だ未だ共に働けるのだ!!)
「さぁ、そろそろ二人とも自分の城へ向かいなさい…城中の方々が、首を長くして待っておろう?」
「はぁ…」
「外記様…伊古立には…もう…侍が居りませぬ故…」
「道鎮、そう思ってな…」
そう言って、外記様は両手を叩いた…
すると、旅支度を整えた侍15名が颯爽と現れた…
「こ…これはっ?!」
「御主を慕う十五名の侍達じゃ!本日付で当家より暇させる故、道鎮、この者達と共に、掃部殿が命を懸けて守って参った伊古立城を、今日から御主が守って参るのじゃ!!」
「外記様…ははぁっ!外記様…某…外記様…某…」
道鎮殿は人目を憚ること無く号泣した…
「もう良い、道鎮…さぁ、涙を拭いて、笑って別れようではないか?!のう、道鎮?」
「ははぁっ!これ迄の御恩…この飯岡道鎮…終生、忘れることは、御座りませぬっ…外記様…誠に…お名残惜しゅう存じまするが…これにて…お暇仕りまする…御免っ!」
道鎮殿は、15名の同志達と肩を抱き合って、皆で外記様に向かって、深々と頭を下げてから、新天地へ旅立っていった…。
「あっ!!」
私は大事なことを道鎮殿に伝え忘れていたのだ…
「外記様っ、少々失礼致します!直ぐに戻ります…」
そう言って、私は道鎮殿の後を追った…
「道鎮殿ぉっ!」
「おぉっ!何じゃ重兵衛?!如何した?まさか、もう、わしが恋しくなったか?!わっはっはっはっは…」
「違いますよぉっ!道鎮殿、伊古立に一人だけ生き残りの侍が居ります!」
「おぉっ!それは真か?!」
「はい!名は寺中吉右衛門殿と申します!たった一人で道鎮殿が参るのを待っておいでです!」
「相分かったぁっ!!重兵衛、これで十七人じゃな、明日、殿の処で会おうぞ重兵衛っ!」
「はいっ、道鎮殿っ!」
私は道鎮殿に手を振って、外記様の処へ戻った…
そこには、すっかり旅支度を整えた私の奥さんが、外記様と与五郎様と奥方様と楽しそうに談笑していた…
「お帰りなさい、あなた!」
「外記様、大変失礼致しました…」
「うむ、良い良い!さぁ、御主も有希子殿と新天地へ向かうが良い!袋畑の衆が、今か今かと待ちわびて居ろう?!」
「はぁっ!外記様、長きに亘るこれ迄の御恩、この永田重兵衛常充、終生忘れることは御座いませぬ!!誠にお名残惜しゅう御座いますが、これにてお暇仕リまする…」
そう言って、私と奥さんは、畳に額を擦り付けた…
「その様なことはするでない重兵衛、これより御主とわしは、五分と五分の間柄…共に一国一城の主として、手を携え合い、豊田・石毛・四ヵ村・北部地域の為に力を尽くして参ろうぞ!!」
「はぁっ!外記様、これより先も、どうか宜しく御願い申し上げまするっ!」
「うんうん…」
「与五郎様、どうか、外記様を宜しく頼みますぞ!」
「相分かった!重兵衛も有希子を宜しく頼むぞ!!」
「はぁ?…ははぁっ!」
「まぁ、与五郎様ったら…」
わっはっはっはっはっはっはっは…
「外記様、与五郎様、奥方様、それではこれにて、お暇仕りまする!」
「うむ、世話になったな重兵衛、有希子殿、達者でな…」
私達は笑顔で栗崎城を後にした…
(次回につづく)
遂に、其々の新天地へと旅立っていった道鎮と重兵衛…
これからは互いに、一国一城の主として豊田家の為、そして、原親子の為に力を併せて行く事になります…
次回、つぐみ龍の伝説は、今度こそ…
⑱ 「新城主誕生!」に御期待下さい!




