⑫ 風雲向石下城
栗崎城の戦いから2年…重兵衛達は下妻近隣地域の国衆達との結束を更に深めるために、日夜奔走していた…
その甲斐あって、豊田・石毛・四ヵ村・北域連合軍は相当強固な軍団へと変貌を遂げつつあったのだが…
吉沼の戦いから一夜明けて、政重様と道鎮殿と私は、豊田城に来ていた…
治親様に先勝報告をする為である…
「皆、昨日は大儀であった!!」
「ははぁっ!」「ははぁっ!」「ははぁっ!」
「道鎮、御主…見事な指揮を執って敵を蹴散らしたそうじゃな?!」
「はぁっ!外記様の策で、長峰様と伊古立勢の力を御借りし、多賀谷の白井全洞達を蹴散らしまして御座ります…」
「うむ!」
「殿っ、申し訳御座いませんっ!某、又しても、白井全洞めを捕り逃しまして御座ります…」
「まぁ、良い重兵衛…それより聞いたぞ!御主、当家の家宝…金色に輝く甲冑を身に纏い、馬上にて全洞と斬り合うた時の…その姿は…真に…龍に跨がりし雷神の如き勇ましさであったと!!」
「ははぁっ…」
「兄上、重兵衛の奴、今度は、白井全洞の右肩を外しよりましたぞ!!」
「何と…重兵衛、それは真か?!」
「はぁ…」
「殿、直ぐ近くで見て居った小治郞が申すには…全洞が重兵衛に斬り着けた太刀を、重兵衛が勢い良く振り払ったその時…ばきっ…と、妙な音がして、全洞は己の太刀を地面に落とし、右腕を不自然に、ぶらぶらとさせながら、一目散に高道祖の方へ逃げ帰って行ったとか!」
「おぉっ!でかしたぞ、重兵衛!!」
「ははぁっ!」
「然れば兄上、今が攻め時かと存じまするっ!!」
「政重、焦るでないぞ!罠やも知れんし…敵が痛手を負っているのに付け込んで攻め上がるは卑怯というもの…我等、豊田侍は、坂東武士の誇りを持って、正々堂々と攻め込もうぞ!!」
「しかし兄上、またとない好機に御座る!!」
「まぁ、待て、政重よ!多賀谷の奴等など、我等全軍で攻め上がれば、いつでも倒せるであろう…しかし、今は、御館様の援軍に兵を割かねばならぬ時…待つのじゃ…政重よ…また奴らが仕掛けて来るのを…待つのじゃ…それがその時…万全の態勢で迎え撃つ備えを堅めておくのじゃ!!」
「ははぁっ!」「ははぁっ!」「ははぁっ!」
政重様と道鎮殿と私は石毛城に戻った…
「重兵衛、御主の申していた事…わしも道鎮も全て信じておった…信じておったが…いざ、こうして、真に事が起こってしまうと…やはり…何か不思議な気もして来てな…」
「解ります!某ですら…予告をしておりましたが…実際に多賀谷が攻めて参るかどうか…某自身も半信半疑な処が御座いましたので…出来ることなら…何も起こらず…時が経てば良いとも思っておりました…」
「が…やはり、重兵衛の予告通りに、多賀谷が攻めて来よりました…吉沼に…天分二十三年に…」
「うむ…して…その予告通りだと申すならば…次は…また…二年後…今度は…向石下城が多賀谷に攻められるのじゃな?!」
「はい…あ…いや…御待ち下さい…確かに歴史上では…その様になっておりますが…」
「何じゃ重兵衛?…」
「はい、此度、某のせいで、歴史を狂わせて仕舞いましたので…歴史の流れが変わるやも知れません…」
「ふむ、では…どうなると申すのじゃ?」
「はい…勿論、向石下城が第一候補であることは間違いありません…ただ…裏を描くように…長峰城が狙われる可能性もあるのかと…」
「うむむ…なるほど…そうじゃな?…」
「はい、ですから…先ずは向石下城に万一の事が有れば…古間木城主・渡辺周防守勝重様に御助勢願えますれば、心強う存じます!」
「うむ、任せろ!周防守殿には、わしから頼んでおく!」
「有り難う存じます!それと…万が一に、長峰城が狙われた時は…小治郞殿から直ぐに知らせがあるとは存じまするが、治親様に援軍を御願い致しとう存じまする…」
「良し!兄上にも、わしから頼んでおこう!!」
「御願い致します!!」
「うむ、いづれの城が攻められたとしても、わしが後詰めに入る!」
「有り難う存じます!」
「それと、引き続き、吉沼と北部地域・四ヵ村の国衆達との連携を更に深めて、より強固なものにしていってくれ!!」
「ははぁっ!」「心得ましたっ!」
それからというもの私と道鎮殿は、下栗、袋畑、肘谷、見田、唐崎、長萱、伊古立を毎日のように巡回し…
対多賀谷対策として各城に改修や補強を施したり…
万一の時の、あらゆるパターンを想定して、各城同士がどの様に連携して参るのかを演習したり………等々……
敵に悟られぬように日々、着々と、そして粛々と下妻近隣地域の国衆達の結束を堅めていったのだった…
やがて一年が経ち、私が予告していた通りに、後奈良天皇から正親町天皇へと代が替わり、年号も天分から弘治へと移り替わったのである…(1555年)
「やはり、重兵衛の申しておった通りに、天皇が替わったのう…」と政重様。
「はい、年号も重兵衛の申しておった通りに替わりましたっ!」と道鎮殿。
その年、我々にとっての御屋形様である小田氏治様は、佐竹義昭と共に結城政勝を攻めていた…
豊田・石毛・四ヵ村・吉沼・北域連合軍は、その年も地道に…そして着実に防御を固めていった…
最早、どんな外敵が来ても持ち堪え、更に反撃出来る強い連合国へと進化を遂げつつあったのだ…
そしてまた一年が過ぎた弘治2年(1556年)、我等の御屋形様・小田氏治様は、北条氏康から援軍を授かった結城政勝と海老ヶ島城で熾烈な戦いを繰り広げていた…
我々、豊田・石毛・四ヵ村・吉沼・北域連合軍には御屋形様から「下妻多賀谷を睨んでいろ!!」と伝令が来ていた…
(やっぱり、小田氏治様は戦国常陸の最強の武将だな!)
と私は心の中で思っていた…
その時、小治郞殿が、スッと現れた…
「常楽寺様より伝令じゃ!重兵衛殿の予告通り、多賀谷の奴ら向石下城に向かっているぞっ!その数およそ一千!!」
「はぁっ!心得ましたっ!やはり来ましたか?!急ぎ掃部殿と合流致し出陣致します!!」
「頼むぞ重兵衛殿っ!掃部殿には既に知らせてある!」
「はぁっ!有り難うございます!小治郞殿は此方を頼みます!!」
「相分かった!」
向石下城が攻められた時は…栗崎城から外記様の名代として私が兵100を連れて伊古立勢と合流し向石下城に向かう手筈だったのだ…
相手1000に対し、此方は向石下城の300、石毛城から200、伊古立・吉沼連合で200、古間木城から200の総勢900…。
(2年間…皆で力を合わせて対策してきたのだ…100少ないくらいなら大丈夫!今の我々に負ける要素は無い!)と私は考えていた…
私は黄金の甲冑を身に纏い、千代王に跨がって、御味方100名と共に伊古立城に向かった!
伊古立城に着くと、掃部殿をはじめ100名の兵達が整然と並び、待っていてくれた…
「掃部殿!大変お待たせ致しました!!」
「何の、重兵衛殿!我等も今、全員揃うた処よ!!政重様以下二百名と周防守様以下二百名が、もう向石下城に到着したそうじゃ!」
「現在七百で、我々が合流すれば九百…敵は一千とのこと…我々の力を結集すれば負ける相手では御座らぬ!!」
「うむ、伊古立の衆よ!今こそ我等の力を示す時ぞっ!!いぞ参らんっ!!!」
「おおおおっ!!」「おおおおっ!!」「おおおおっ!!」
「流石、伊古立の衆だ!吉沼の衆よ!我等も負けぬぞ!!目指すは向石下城!敵は多賀谷勢であるっ!!」
「おおおおっ!!」「おおおおっ!!」「おおおおっ!!」
斯くして、伊古立・吉沼連合軍二百名は勇躍、向石下城へと向かったのだった…。
いよいよ向石下城に多賀谷勢が攻め混んで参ります…
次回は、ちょっとした波乱と…とんでもない強敵が出現してきそうな予感です…
果たして、重兵衛は仲間達を守りきれるのでしょうか?!
次回「つぐみ龍の伝説」にどうぞ御期待下さい!!




