96.素人
「………」
「手伝いに来ました!」
「素人が発見する事もあると聞く。手伝ってもらおう」
人間界の竹林にて。
よほど淡雪筍を食べたいのだろう。
快諾する琅青とは裏腹に、凍夜は渋い表情を栞太に向けた。
橙と緋が混ざり合った夕焼けも色を落とし始めて、紺が深みを増してきている。
太陽は、ほどなくして完全に沈むだろう。
夜の時間の訪れだ。
「もう夜になる。危ないから帰りなさい。燧乎はどこに居るの?まさか、一人でここまで来たわけじゃないよね?」
「一人で来ました!」
「………嘘だね」
「嘘じゃありません!」
「ううん。嘘だね。君はまだ大仙人様から授かった宝貝、仙羽衣を使いこなせていないでしょう。それなのに、どうやって仙界から人間界まで下りて来られるの?」
「宝貝、仙羽衣が凍夜殿を癒したい俺に協力してくれました。奇跡です!ありがとうございます!宝貝、仙羽衣!ありがとうございます、大仙人様!ありがとうございます、凍夜殿!ありがとうございます、琅青殿!」
「………人間界に下りられたとして、どうして、僕たちの居場所がわかったの?弩九も誰も把握できないはずだけど。しかも、琅青の名前も知っているなんて」
「宝貝、仙羽衣が連れて来てくれましたし、教えてくれました!奇跡です!いいえ!宝貝、仙羽衣の厚意です!」
「………誰に口止めされたの?」
「誰にも口止めされていません!」
「………君」
「はい!」
「僕を癒す為に来たんだよね?」
「はい!」
「嘘をつかれると、精神的疲労が溜まるよ。癒す行為とは真逆の事をしているんだよ。わかっている?」
「はい!」
「………」
「俺、嘘ついていません!」
「………」
「凍夜。この人間の少年がどのような方法と理由でここまで来たのかを問いただすのは、後に回すのだ。喫緊に行動すべきは、淡雪筍を探し出す事である」
「はい!俺!手伝います!」
「ああ。素人の勘を期待している」
「はい!」
「よい返事だ」
「ありがとうございます!」
本当は有無を言わさず仙界の燧乎の元まで送り届けたい。
だが、いつポメラニアン化するかわからない身体で送り届けるのは避けたい。
ならば、琅青に頼めばいいが、淡雪筍を見つけ出して食べるまでは無理。
(………今まで、仙界と連絡を取る手段を必要としてこなかったけど。弩九に作ってもらうかな)
「凍夜も。再開してくれ」
「………はいはい」
(もう、誰だよ。この子を僕たち。いや、僕のところまで連れて来たの)
(2024.4.11)




