92.桃色の刀
「九尾の妖狐が持っておると聞き及んでおる」
「え゛っ」
ポメラニアンになっていたか確認してのち、ポメラニアンになっていたとの返答をもらって、癒してくれてありがとうと礼を言った凍夜が万葉桃の所在を知っているかどうか、琅青に尋ねた返答だった。
「え゛っ」
「聞き返したとて、返答は変わらぬ」
「………あ~。そうだよね。うん。うん。よし」
諦めよう。
凍夜は即断した。
九尾の妖狐が持っていると仮定したとして、だ。
あの、九尾の妖狐に渡してと頼んだとして、素直に万葉桃を渡してくれるかと言えば、否。だ。
呪いをかけた当人が、呪いが解ける道具を差し出すわけがない。
(まあ、気紛れに渡してくれるかもしれないけど。そもそも、九尾の妖狐の居場所もわからないし。妖怪界、人間界、仙界の三界のあちらこちらを遊び歩いているし………っていうか。呪いを解く為に必要なのは全部、九尾の妖狐が持ってるんじゃ。だって、呪いをかけても、呪いを解かれたら、呪いをかけた意味がないし)
「………ごめん。また、すぐにポメラニアンになるかも。ならないかもしれないけど」
「謝罪は不要である。吾輩たちは同じ釜の飯を食う仲だ。遠慮は不要だ」
「うん。ありがとう」
「せっかくここまで来たのだ。共に淡雪筍を探そうぞ」
「………うん。そうだね。探そうかな」
「追加情報だが、万葉桃は、食物の桃ではない。桃色の刀である」
「へえ。そうなんだ」
食べ物の桃でも、桃色の刀でもどうでもいいや。
そう思った凍夜であったが。
(………桃色の刀?)
あれどこかで見た事があるような。
(2024.4.10)




