87.書物庫
「………」
「俺も手伝います!」
「………」
「俺も手伝います!」
「………」
「俺も手伝います!」
「おい、凍夜。何か言ってやってくれないと、ずっと同じ言葉を言い続けるぞ」
「えー」
仙界の書物庫にて。
栞太の付き添いなのだろう。
栞太の肩に乗っている小人の燧乎の言葉を受けて、凍夜は深々と頭を下げた。
宝貝、導香の影響が続いているのだろう。
それはもうしつっこく。
キラキラきらきら。
やる気に満ち満ちた輝く目を、全身を栞太から向けられた凍夜は、目を眇めながら、お断りの言葉を丁寧に発した。
「君は仙界の文字が読めないので手伝えません。燧乎の岩で燧乎と一緒に待っていてください」
「………………………」
「はいはい。そんなに面白い顔を次から次へと繰り出さないでいいから………あー。とってもげんきがでたなー。いまのきみのかおでとってもげんきがでたー。うん。とっても力になったからもういいよ。帰りなさい」
「凍夜よ。棒読みにもほどがあるぞ」
「えー。だって。しょうがないじゃん。手伝える事は本当にないんだもん」
「………そう、ですね。俺。文字。読めないし。手伝える事はありませんね」
「栞太」
「そーゆーこと。いい子だから燧乎と一緒に帰りなさい」
「………はい」
「燧乎。お願いね」
「ああ」
(ふむ)
しつこく手伝える事はないかと迫られる。
応援していますとか肩もみしますとか本の片づけを手伝いますとか言って居座る。
強引な行動に移って面倒な事になると思いきや、そうではなく、聞きわけがよい。
引き際を心得ているのか。
(ふむ)
とぼとぼとぼとぼ。
落ち込んで力ない足取りで帰る事もしていない。
しっかりとした足取りで書物庫を出て行った。
(ふむ、これは)
多分、時間を置いて戻って来るな。
(2024.4.9)




