86.琅青
琅青。
上下がわかれている銀杏色の作務衣を身に着け、慈竹という竹を使った青々しい竹筒を腰からぶら下げる、肩幅が広く、胸板も厚く、腕も首も太股も太いと揃いも揃った、体格のいい丸坊主の男性仙人である。
仙界の琅青の岩にて。
黒系統、緑系統、黄系統、単色、混色、斑模様、長い、短い、太い、細いなどなど、多種多様な竹が生い茂るこの岩を、宝貝、亀雲に乗って、一心の岩から訪れた凍夜は、この岩の主である琅青を探し回っているのだが、一向に見つからなかった。
もしかしたら、人間界に下りているのかもしれない。
大食漢の琅青の事だ。
あちらこちらと人間界の飲食店を梯子しているのかもしれない。
仙人って何だろう。
時々、凍夜は思う。
仙人って、欲を捨て去って厳しい修行を積み重ねた末に悟りを開いた超越生物なんじゃなかったんだっけ。
こんなに食欲や観賞欲、戦闘欲、だらけ欲に塗れた生物が果たして仙人と名乗っていいものなのだろうか。
思うだけだ。深く考えようとは思わない。
それに、堂々と欲を追及する様もまた、一種の悟りと思わなくもなくもない。
(どうしようかな。人間界に下りたなら探すのは面倒だし。いつ仙界に戻って来るかもわからないし。かと言って悠長に待っていたら、栞太の寿命が終わっちゃうかもしれないし)
呪いを完全に解く別の手段を探す方が早いか。
判断を下した凍夜は宝貝、亀雲に乗って書物庫へと向かったのであった。
(2024.4.9)




