81.流柳
人間界にて。
袖は太く、裾は地面につくほど長く、下には裙子を履いて足を隠し、襟があり上下がつながっている前開きの衣に帯を締めた、全体的にゆったりとした作りで優雅な印象のある衣装である淡い水色の漢服を身に着け、細い青色の帯を編み込んだ、やわく緩やかな銀色の三つ編みを前に垂らした長身の男性の妖怪でもあり仙人である、流柳は、敬愛する九尾の妖狐へと音もなく近寄った。
丑三つ時である。
九尾の妖狐は大岩に直に座り込んで、青い満月を肴に桃酒を嗜んでいた。
「九尾の妖狐様。凍夜様をお守りしようとずっとくっついておられたのですか?」
「ふふ。何じゃ?焼いておるのか?」
「ふふ。まさか。凍夜様は九尾の妖狐様がお選びになった、拙者たち妖怪の大切な後継者。焼くなどとんでもない。寧ろ、眼福でしたので、あの時間が永遠に続けばいいと本気で思っておりました」
流柳は両の手をやわく合わせて、ほわりほわりと、淡い桃色の溜息を浮かせた。
九尾の妖狐は目を細めた。
「それは申し訳ない事をしたのう」
「いいえ。脳内に焼き付いているので、何度でも再生して心身の保養にします」
「ふふ。飲むか?」
「はい、いただきます」
九尾の妖狐が座る大岩の隣で立っていた流柳は、九尾の妖狐の前に回って、差し出された猪口を受け取り、桃酒を注いでもらったのであった。
「九尾の妖狐様。本当に、人間を凍夜様の相棒にと、お考えなのですか?」
猪口に注がれた桃酒を一気に飲み干した流柳は、頬を桃色に染めて九尾の妖狐に尋ねた。
「以前にも同じ問いを妾にしたな」
「はい。答えていただけなかったので、もう一度尋ねてみました。ふふ」
「ふふ」
あ、これはまた答えられないな。
流柳は目を細めて、もう一杯くださいと九尾の妖狐に桃酒を強請ったのであった。
(2024.4.8)




